錬金術師な転生エルフの自由気ままな冒険譚!

旅わんこ

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第三章

新商品ファルラート 5

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 すると、今度はアキラがクリシュナに尋ねた。
「ところでさ。魔力結晶ってそもそも何なの? 今更だけど」
「ああ、それね。ほんと今更だね」
 魔力結晶は、アークルが反物質化・結晶化したと言われている鉱石、あるいはアークルを帯びやすい石をコアとしてアークルを人為的に超圧縮したものを指す。天然の魔力結晶は海を隔てた大陸にあるアメルジア共和国の農地で発掘され、現在も鉱脈は展開し続けている。
 しかしアメルジア政府が魔力結晶と輸出に関する関税を値上げしたために入手困難となり、シュトラルラント王国及びその周辺国々は超大型アタノールリアクターを開発し、その果てに人工魔力結晶を生み出すことに成功した。
 それでも問題が残っている。ひとつの魔力結晶を生成するのに大量の生贄を必要とし、魔術師ないし錬金術師が一日リアクターを運用してやっとできるようなもの(その生贄の多くが木材の破片や商品価値のない農作物や海産物の生ごみ、それらを材料として培養した微生物、薬品の動物実験で使いつぶされた被験動物、魔術師自身のアークルである)。魔力結晶缶として店に届くころには三十万ガルを軽く超える。以前アキラが購入した安価な小型缶でも二万ガルはする。それに動物実験に使われた動物の再利用は倫理に反するとして多くの魔術師が反対の声を上げている。
「つまり、かなりお高めの使い捨てエネルギー源ってことか。人工魔力結晶については結構えげつない」
「そう。だから今、世界各国がアークル運用をもっと簡単にできないか研究中。エルフ、エヴィル、獣人族ビースト小人族ドワーフ竜人族ドラグノフを足しても比較にならない賢人族サーパスが多い今、世界の半分以上が魔法を使えない人で占められている。このアンバランスさはどうにか解消したいんだよね」
「そっかぁ。でもさ、全ての人間が魔法を持っちゃったら、サーパス並みの技術力を持たないほかの種族たちはどうする? 魔法と知力でさらに立ち位置が危なくならない?」
「そっか、確かにそう言う考え方がある。って言うかそうなる。今よりももっと酷い人狩り、人売り、人買いが横行するに決まってる」
「それはエルフであるわたしにとっても大問題。だから技術の発展と亜人種たちの人権問題は並行して考えて行かなきゃいけないと思うんだ」
「確かに……」
「だからいきなり全ての人に魔法を提供するんじゃなく、限定的な魔法の使い道だけを示していこうと思う。そしてその第一弾として、『魔導ソレノイド及びミジンコ飼育ケース搭載式ファルラート』を『モートルラート』って名前で開発して売り出す。なおアークル抽出方法は極秘として、この技術はファルラートの製造方法とともに錬金術商工会に預けることにします。その方が技術の流出を食い止めつつ、この技術を独占しているわたしにお金が入ってくるからです」
「なるほど、抜け目がない。私もアキラに負けてられないね」
「ついては、このミジンコ飼育ケースの無料貸し出しと、ポーション含浸ガーゼ、名付けて『絆創膏』を売ってもらえたら助かるかな?」
 当然、絆創膏も前世からの記憶によるものだ。
 昼になり、アキラはクリシュナ特性春巻きをごちそうになる。
 そんな中アキラはクリシュナに尋ねた。
「ねえ。わたしが来る前にこの町で錬金術師をやっていたジャン・アンドエーレさんについてなんだけど、ジャンさんはどんな錬金術が得意でどんなものを売ってたのかな。一応身内じゃない人の評価も聞きたいんだ」
「そうだね。アンドエーレ氏の錬金術で有名なのがやっぱり品質の高いポーションだよ。それはもう王国龍騎兵軍が御用達にするほど。あとは鍛冶職だけどそれは今のヴァルさんが完全に引き継いでるし、ほかには……。あっ、そうだ」
 突然クリシュナが、何かを思い出すように遠い目をした。
「どうしたの、クリシュナ?」
「うん。錬金術のラインナップじゃなくて工房に関することなんだけど。この店もジャン・アンドエーレ氏とその息子さんのヴァルさんが作る金物、例えばナイフにフォークにスプーンにその他金属食器だけど、そう言うものを卸してもらってたんだ。私も思ってたけど、この店の前の主人もほかの取引相手も言ってたよ。どうしてあんなわざわざ辺鄙なところに工房なんて構えるんだろう、どうせなら首都に引っ越してくればいいのにって。アキラの場合はアンドエーレ氏の工房を借りている身だし、ファルラートに乗ってよく遊びに来てくれるからいいけど」
「そっか。当たり前すぎてわたしもそれに気付かなかった。わたしはただ流れ着いただけだけど、あの場所も何かと便利だよ。野菜が育ってくれれば市場で買うこともないし、森でシカやイノシシを狩れば肉と錬金術の素材は手に入る。夜遅くまでドッテンガッタンやってたって誰にも叱られない。それに……」
「それに?」
 その先の言葉を口にすることをアキラは一度ためらい、クリシュナの緑茶と春巻きをついばんで迷った様子で続けた。
「そうだね。ひとりでいる、穏やかに流れる時間が好きなんだ」
 そしてアキラはこうも思う。きっとそれはジャンさんも同じではないだろうか、と。
「そっか。アキラが好きなら、それはいいと思う」
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