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第六章
エルフの姫と収穫祭 4
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翌日。
リヒトホーフェン中央駅。
かつての列車横転事故からも完全に復旧し、すべてのダイヤが事故以前に戻った。
アキラのモートルラートは貨車に積み込まれ、アキラ、エリック、レイニー、クラリス、そして彼らの護衛は王都行きの客車に乗り込んだ。さすがに貴族やその連れが一般客室に乗ることはできないため、エリックはこの日のために一等賓客車両を用意していた。また、一等賓客は貴族や王府要人が多いため、専用の搭乗口が存在する。
「それではクラリス閣下、本場のトライアームをご覧ください」
アキラが護衛に銃弾を抜いたトライアームを預け、その護衛が完全新品のトライアームを抜いてみせる。これにはトライアームを見慣れないほかの護衛たち、クラリスとレイニーは興奮してざわめいた。
「すごーい! 黒くて光ってる!」
「この出来栄え、まさにアンドエーレ鉄工所の剣身だわ」
「俺もアンドエーレさんのところの剣使わせてもらってるけど、トライアームもいいなぁ」
護衛がアキラにトライアームを返すと、今度はクラリスがピンクゴールドのトライアームを抜いた。しかもグリップ底部固定ネジが『アイボルト』に変更され、リヒトホーフェン家の紋章がヤマトの組紐でつながれている(鎖を使ってピンクゴールドの塗装をはがしてしまうことを懸念したようだ)。
「クラリスも大事に持っているのです!」
「ありがとうございます、クラリス閣下。ああもう、天使みたいに可愛い! 次は何をお贈りしようかなぁ? イチゴ味のリップクリームなんてどうかなぁ!?」
するとレイニーが錬金術でリップクリームが作れることに驚愕し、私と娘のために、そして世の女性たちのためにぜひともリップクリームの量産をとアキラに食らいついた。護衛の中には女性もおり、その護衛も「出たら買いたい」と漏らしていた。
列車は走り続ける。その間にも退屈しないように大道芸人が通路で芸を披露し、車内販売カートが飲食物を販売している。アキラは『フリカデレ(一口ハンバーグ)の詰め合わせ』とブラックコーヒーを買うが、暗殺を警戒するエリックたちは持参のベーコンと水筒で空腹を紛らわせる。
そこにアキラが尋ねる。
「そう言えば、会議から帰って来たばかりでまた家族で王都にって、旅費は足りるんですか?」
「ばかりというわけではないから安心してくれ。だがこれが一昔前だったら、低位貴族は金欠待ったなしであったろう。各種旅費、馬代、馬の餌代、護衛代、それが数日分。貴族の遠征には金も時間もかかる。だが父の代に鉄道が普及したおかげで長旅も随分と楽になったし、賓客車両を手配すれば安全に、かつ安く旅ができるのだよ」
「そうなんですね。ところで、王都にはこの列車でどのくらいの時間でつくんですか?」
「夕方になるな。降りたら王城まで馬車を飛ばさねばならない。到着する頃になったら起こすから、クラリスと一緒に寝ているといい」
「せわしないですね」
「国王に到着の挨拶もせず宿を調達しようものなら、無礼者の烙印を押されることは間違いないからな」
リヒトホーフェン中央駅。
かつての列車横転事故からも完全に復旧し、すべてのダイヤが事故以前に戻った。
アキラのモートルラートは貨車に積み込まれ、アキラ、エリック、レイニー、クラリス、そして彼らの護衛は王都行きの客車に乗り込んだ。さすがに貴族やその連れが一般客室に乗ることはできないため、エリックはこの日のために一等賓客車両を用意していた。また、一等賓客は貴族や王府要人が多いため、専用の搭乗口が存在する。
「それではクラリス閣下、本場のトライアームをご覧ください」
アキラが護衛に銃弾を抜いたトライアームを預け、その護衛が完全新品のトライアームを抜いてみせる。これにはトライアームを見慣れないほかの護衛たち、クラリスとレイニーは興奮してざわめいた。
「すごーい! 黒くて光ってる!」
「この出来栄え、まさにアンドエーレ鉄工所の剣身だわ」
「俺もアンドエーレさんのところの剣使わせてもらってるけど、トライアームもいいなぁ」
護衛がアキラにトライアームを返すと、今度はクラリスがピンクゴールドのトライアームを抜いた。しかもグリップ底部固定ネジが『アイボルト』に変更され、リヒトホーフェン家の紋章がヤマトの組紐でつながれている(鎖を使ってピンクゴールドの塗装をはがしてしまうことを懸念したようだ)。
「クラリスも大事に持っているのです!」
「ありがとうございます、クラリス閣下。ああもう、天使みたいに可愛い! 次は何をお贈りしようかなぁ? イチゴ味のリップクリームなんてどうかなぁ!?」
するとレイニーが錬金術でリップクリームが作れることに驚愕し、私と娘のために、そして世の女性たちのためにぜひともリップクリームの量産をとアキラに食らいついた。護衛の中には女性もおり、その護衛も「出たら買いたい」と漏らしていた。
列車は走り続ける。その間にも退屈しないように大道芸人が通路で芸を披露し、車内販売カートが飲食物を販売している。アキラは『フリカデレ(一口ハンバーグ)の詰め合わせ』とブラックコーヒーを買うが、暗殺を警戒するエリックたちは持参のベーコンと水筒で空腹を紛らわせる。
そこにアキラが尋ねる。
「そう言えば、会議から帰って来たばかりでまた家族で王都にって、旅費は足りるんですか?」
「ばかりというわけではないから安心してくれ。だがこれが一昔前だったら、低位貴族は金欠待ったなしであったろう。各種旅費、馬代、馬の餌代、護衛代、それが数日分。貴族の遠征には金も時間もかかる。だが父の代に鉄道が普及したおかげで長旅も随分と楽になったし、賓客車両を手配すれば安全に、かつ安く旅ができるのだよ」
「そうなんですね。ところで、王都にはこの列車でどのくらいの時間でつくんですか?」
「夕方になるな。降りたら王城まで馬車を飛ばさねばならない。到着する頃になったら起こすから、クラリスと一緒に寝ているといい」
「せわしないですね」
「国王に到着の挨拶もせず宿を調達しようものなら、無礼者の烙印を押されることは間違いないからな」
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