エルフの王子と側近が恋仲になるまでの長い話

ちっこい虫ちゃん

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第1章 幼少期

4話 王子と出会い①

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 ぴぃちゃんを森に返してから数日が過ぎた。

 エルウィンもアイニェンも毎日鬱々としている。私自身も寂しいという思いが強いままだったが、正しいことをしたという自信と、自分の手で森に返したこともあって2人より引きずっていない。

 いや、嘘だ。寂しいものは寂しい。

 だって本当にかわいかったのだ。話しかければ返事をして寄ってくるあの小鳥が。
 あの時手放さなければよかった。いやでも迎えに来たあの2羽の小鳥もきっとぴぃちゃんの帰りを待っていた。ぴぃちゃんはやっぱり森での生活が恋しかったんだろうか。

 考えは堂々巡りで授業にも身が入らず、似たような状態の兄弟を見るや、薄情なトレバー先生は長期休暇をとってすこし離れた鉱山へ研究に出かけてしまった。


 そんなこんなで私たち兄弟は思う存分各自の部屋に引き篭もっている訳だ。今日も1日ふてくされて過ごすぞ、と目標を決めたところで、突然声をかけられる。


「なぁ、あんたがレンドウィル?」


 知らない声に驚いて立ち上がり、あたりを見渡すが声の主は見つからない。


「だ、誰だっ、どこにいる!?」
「こっちこっち」


 声のした方を見ると窓の外からエルフの子供がこちらを覗いてひらひらと手を振っていた。


「……? ここ、5階なんだが……?」
「登ってきた。なぁ、入ってもいい?」


 見張りだらけの城を登って来たなんて普通じゃないと思ったが一応入室のお伺いを立ててくる子供を中に入れることにした。
 開けっ放しの部屋の扉の方をちらりと見て、なにかあっても声を出せばすぐ護衛が飛んできてくれることを確認してから「いいよ」と小声で言う。

 ヨッという掛け声とともに入ってきたのはエルフの男の子だ。日に焼けた肌に寝起きのようなボサボサの銀髪、体は細くて押したら倒れそうなくらいだが、この壁を登ってきたことを考えるとそれなりの力があるはずだ。背は私より少し高くて、年上に見える。

 兄弟以外の子供のエルフを初めて見たが、私たち兄弟とも、城の護衛達ともずいぶん違う。なんというか、失礼な言い方をすると、散らかった見た目だった。


「なんの用だ」
「友達になろうと思ってきたんだ」
「……友達?」
「そう、友達」


 私が警戒しながら聞くと、あっけらかんと、なんの裏も含みもなさそうな顔で子供は答えた。


「なぜ私と、友達になろうと?」
「えーと、知り合いに、城に住んでた奴がいて、そいつがあんたはいい子だよって言うから、気になって……」
「誰がそんな話を?」
「……内緒!」


 目の前のエルフは子供とはいえ、部外者で侵入者だ。護衛を呼ぶかと一瞬考えて、馬鹿らしくなる。この平和なエルフの国で神経質になる必要があるだろうか?

 ぴぃちゃんがいなくなって寂しかったからとか、他の子供に興味が湧いたとか、決してそう言うことでは、もちろん断じて、ない。


「君、名前は?」
「ジハナ」
「ジハナか。……私はレンドウィル。よろしく」
「え、本当に友達になってくれるのか?」
「まだ友達じゃない。知り合いくらいだ」
「知り合いかぁ。じゃあ、友達になるために、これから遊びに来てもいい?城下だと子供いなくて、ひとり遊びばっかりなんだ」

「……私が王子ってわかってる?」
「ん?うん。あ、敬語?使った方がよければ使うけど」
「いや、いい。友達候補だから、堅苦しいのはよそう」
「やった!」


 ジハナは嬉しそうに言うと、床に腰を下ろす。まだ完全に警戒を解いたわけではないが、少しくらい素に戻ってもいいだろう。


「床じゃなくて、ベッドか椅子に座れば?」
「え?だめだめ、土と埃塗れだし」
「私は椅子を使うけど」
「うん、俺のことは気にせずどーぞ」


 ジハナはあぐらをかいて床に、私は椅子に腰掛けて向かい合う。目が合うとニッと笑ってジハナが口を開く。


「レンドウィルって普段何して遊んでんの?王子だから勉強で忙しい?」

「勉強もするけど…兄弟で遊ぶ時間の方が長いかな。」
「へぇ、馬乗ったり歌ったり、踊ったり?」
「王子ってそんな風に過ごしていると思われてるの?普通にかくれんぼしたり裏庭探検したりだよ。それより、ジハナの事を教えて。どうやってここまで?」
「どうやってって、見張りの人達を避けながら、こっそり来たんだよ。俺、かくれんぼ得意だから。」


 かくれんぼで見張り兵達の目をごまかせるだろうか?


「そんな簡単な話じゃないだろう」
「そう、簡単じゃないんだよ。見張りの人の動きを覚えるのにほんと時間がかかって……あ、ちょ、ちょっと待って」
「どうしたの?ジハナ?」


 ジハナは突然焦ったように窓へ飛びつき、部屋の外に飛び出す。窓から覗き込むとジハナが窓枠に手をひっかけた状態でぶら下がっていた。
 何してるの、ともう一度声をかけようとしたところで、後ろから名前を呼ばれて飛び上がる。


「レンドウィル、少し話がしたいのだけど、いいかしら?」


 振り返ると母が部屋の入口に立っていた。
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