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第1章 幼少期
17話 側近と悪友
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その翌日の昼間、ジハナの家に城からの使いがやってきた。
護衛や見張りの使いっ走りでもなく、いつもの金細工に関連した依頼でもない。訪ねてきたのは、エルフの国で王に継ぐ権力を持った側近、ネオニールだった。
扉を開けたレアンナは引き攣った顔でネオニールをみる。食卓の奥に吊られたハンモックで呑気に昼寝をしているジハナが原因なのは確実だった。
今度は何をやらかしたのやら、レアンナは泣きたくなる。数年前まで動物たちと森を駆け回っているだけの純粋な子供だったのに、突然王子や姫にちょっかいをかけるようになってしまった。レアンナはとうとう国外追放だろうか、と今まで築き上げてきた平和な生活が崩れ落ちる想像をする。
「よ、ようこそネオニール様、その、うちの馬鹿息子がまたなにか……」
「あぁ、ジハナ君の事ですが、悪い話ではありませんよ。ただ大事な話なのでヴァーデン殿にもぜひご同席いただきたいのですが……」
「す、すぐに呼んでまいります!」
レアンナはネオニールを部屋に通して食卓の椅子に座らせ、水出しのお茶をだした。ついでにジハナの尻を引っぱたいて起こすとヴァーデンを呼んでくるように言いつけた。
「なんだよもう、煩いっていうから静かに昼寝しててあげたのにさぁ」
「やぁジハナ、昼寝とはずいぶん平和だな」
「ぇあ!?ネオニール様?なんでここに、あ、そっか。父上呼んできます!」
ジハナはネオニールが家を訪ねた理由を察すると寝癖をつけたまま家を飛び出していった。
「ジハナ君はいつも元気ですね」
「ええ、子供の体力はどれだけ遊んでも寝ればすぐ回復してしまうようで……」
「王子達も似たようなものですけどね」
「ふふふ、ネオニール様もご冗談をおっしゃるんですね」
「いえ、本当のことです。あぁ、お茶をいただきますね」
レアンナが茶菓子のクッキーを出すとネオニールがお茶に口をつける。そのまましばらく雑談をしているとジハナが戻ってきた。一緒に家に戻ったヴァーデンは罪名が言い渡される前の罪人のような顔をしている。
「ネ、ネオニール様……ジハナがまた、なにか……」
「いえ、悪い話をしに来たわけではないのです」
ヴァーデンとレアンナが席に着き、ジハナが臨時の椅子として脚立を持ってきて座ったのを確認するとネオニールは単刀直入にいう。
「ジハナ君を、王子の側近にしたいと考えています」
「え、まさか、ご冗談でしょう!」
「ジハナにそのような大役が務まるとは……」
「いえ、エルロサール王が言い出したことで、私も賛成しています」
暗に王の命だと伝えるとヴァーデンもレアンナは否定もできず、不安そうにジハナを見た。ネオニールはジハナをみてにっこりとすると、言葉を続ける。
「もちろん、こちらからのお願いですから我々は強制いたしません。ただ、王が息子さんにならは王子を任せられるとおっしゃっておいでなのです。ぜひ、ヴァーデン殿、レアンナさんにも彼に自身の実力を証明する機会を与えていただきたい」
「陛下とネオニール様にそこまでおっしゃっていただいたからには……ジハナ、失礼の無いようにな」
ヴァーデンもレアンナも、ここまで言われてしまえば断る理由は見つけられそうになかった。ネオニール様は笑顔のまま頷くと、持っていた紙の包みから青い布地を取り出す。それはネオニールが常に首にかけている長い布と同じもの、心から王家に仕える者だけに与えられる特別な布だった。
「ジハナ、これを」
ジハナに包みごと渡し、つけてみなさいと声をかける。ジハナはテーブルに包みを置き青の布を取り出した。サラリとした生地の薄い布だ。横幅はジハナの手のひらくらいだが、持ち上げても持ち上げても途切れず、随分と長さがある。よく見ると青い布はもっと濃い青で蔓と葉が刺繍されていた。ネオニールの真似をして首にかけるが、布の両端が地面すれすれに垂れ下がる。
「すまない。すこし、長かったな」
そこまで言ってふき出すネオニールをジハナはジトっと睨み、すぐ背は伸びます!とかみつく。ネオニールは気の済むまで笑うと、明日の昼に家族全員で城に来るように命じた。レンドウィルや兄弟たちに正式に紹介するためだ。
その後は側近としての生活について説明があった。
基本的に城に住み込みで働くこと。城にいる間は白い服を着て、上に青い布を垂らすこと。給金のこと。休暇のこと。最後に、辛くなったら我慢せずに必ず相談すること。あらかた説明し終わるとネオニールはヴァーデンとレアンナに一礼して城に帰っていった。
護衛や見張りの使いっ走りでもなく、いつもの金細工に関連した依頼でもない。訪ねてきたのは、エルフの国で王に継ぐ権力を持った側近、ネオニールだった。
扉を開けたレアンナは引き攣った顔でネオニールをみる。食卓の奥に吊られたハンモックで呑気に昼寝をしているジハナが原因なのは確実だった。
今度は何をやらかしたのやら、レアンナは泣きたくなる。数年前まで動物たちと森を駆け回っているだけの純粋な子供だったのに、突然王子や姫にちょっかいをかけるようになってしまった。レアンナはとうとう国外追放だろうか、と今まで築き上げてきた平和な生活が崩れ落ちる想像をする。
「よ、ようこそネオニール様、その、うちの馬鹿息子がまたなにか……」
「あぁ、ジハナ君の事ですが、悪い話ではありませんよ。ただ大事な話なのでヴァーデン殿にもぜひご同席いただきたいのですが……」
「す、すぐに呼んでまいります!」
レアンナはネオニールを部屋に通して食卓の椅子に座らせ、水出しのお茶をだした。ついでにジハナの尻を引っぱたいて起こすとヴァーデンを呼んでくるように言いつけた。
「なんだよもう、煩いっていうから静かに昼寝しててあげたのにさぁ」
「やぁジハナ、昼寝とはずいぶん平和だな」
「ぇあ!?ネオニール様?なんでここに、あ、そっか。父上呼んできます!」
ジハナはネオニールが家を訪ねた理由を察すると寝癖をつけたまま家を飛び出していった。
「ジハナ君はいつも元気ですね」
「ええ、子供の体力はどれだけ遊んでも寝ればすぐ回復してしまうようで……」
「王子達も似たようなものですけどね」
「ふふふ、ネオニール様もご冗談をおっしゃるんですね」
「いえ、本当のことです。あぁ、お茶をいただきますね」
レアンナが茶菓子のクッキーを出すとネオニールがお茶に口をつける。そのまましばらく雑談をしているとジハナが戻ってきた。一緒に家に戻ったヴァーデンは罪名が言い渡される前の罪人のような顔をしている。
「ネ、ネオニール様……ジハナがまた、なにか……」
「いえ、悪い話をしに来たわけではないのです」
ヴァーデンとレアンナが席に着き、ジハナが臨時の椅子として脚立を持ってきて座ったのを確認するとネオニールは単刀直入にいう。
「ジハナ君を、王子の側近にしたいと考えています」
「え、まさか、ご冗談でしょう!」
「ジハナにそのような大役が務まるとは……」
「いえ、エルロサール王が言い出したことで、私も賛成しています」
暗に王の命だと伝えるとヴァーデンもレアンナは否定もできず、不安そうにジハナを見た。ネオニールはジハナをみてにっこりとすると、言葉を続ける。
「もちろん、こちらからのお願いですから我々は強制いたしません。ただ、王が息子さんにならは王子を任せられるとおっしゃっておいでなのです。ぜひ、ヴァーデン殿、レアンナさんにも彼に自身の実力を証明する機会を与えていただきたい」
「陛下とネオニール様にそこまでおっしゃっていただいたからには……ジハナ、失礼の無いようにな」
ヴァーデンもレアンナも、ここまで言われてしまえば断る理由は見つけられそうになかった。ネオニール様は笑顔のまま頷くと、持っていた紙の包みから青い布地を取り出す。それはネオニールが常に首にかけている長い布と同じもの、心から王家に仕える者だけに与えられる特別な布だった。
「ジハナ、これを」
ジハナに包みごと渡し、つけてみなさいと声をかける。ジハナはテーブルに包みを置き青の布を取り出した。サラリとした生地の薄い布だ。横幅はジハナの手のひらくらいだが、持ち上げても持ち上げても途切れず、随分と長さがある。よく見ると青い布はもっと濃い青で蔓と葉が刺繍されていた。ネオニールの真似をして首にかけるが、布の両端が地面すれすれに垂れ下がる。
「すまない。すこし、長かったな」
そこまで言ってふき出すネオニールをジハナはジトっと睨み、すぐ背は伸びます!とかみつく。ネオニールは気の済むまで笑うと、明日の昼に家族全員で城に来るように命じた。レンドウィルや兄弟たちに正式に紹介するためだ。
その後は側近としての生活について説明があった。
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