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第1章 幼少期
18話 悪友と家族②
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家に帰ると父のヴァーデンが料理をしていて、母のレアンナは物置で何かを探しているようだった。
「おお、帰ったか。母さんなら物置だぞ」
「ただいま父上、いい香りだね。物置って母さんは何してるの?」
「お前の髪をどうにかする道具を探してるんだよ」
「俺の髪なんて誰も気にしないのに」
「気にしていないのはお前だけだ」
「え、そうなの?みんなもしかして俺のこと変って思ってたりする?」
「明言は避けておこう」
「うそ、ほんとに?俺が傷つくくらいに悪く思われてる?」
「お前はどう思う?」
「怖……この話はもうおわり!」
父と頭の悪い会話をし終わったところで、物置から「あったわ!」とうれしそうな声がした。父に物置に行くように言われ、ジハナは母を探す。
「母さん、何見つけたの?というか、父上が俺の髪の事すごく悪く言うんだけど、母さんもそう思う?思わないよな?」
「あんたのその髪をまともにするものを探してたのよ!あぁよかった!ほらこれ、昔結婚式のお祝い返しでもらった香油よ」
「まともって言った?今はまともじゃないってこと?ねぇ!」
レアンナは香油の入った瓶を持って振り返り、ジハナの髪をじろりと見下し、少し目を丸くした。
「あら、浴場ですこし絡まったのが収まったんじゃない?」
「うん。自分じゃできないけど、川に流すと少しマシになる」
「自分で"マシ"って言ってるんだから、多少自覚はあるようね」
「でも、そんなにひどいと思ってなかった……動物はそういうの何も言ってくれないし」
「王子達に何も言われないの?」
「たまに鳥の巣とかタンポポの綿毛って言われる」
ぶふっとレアンナが噴き出す。酷いぞ!ジハナは膨れて母を睨んだ。
「ごめんなさいね、ほら。これでかっこよくしてあげるから」
「それ何?」
「香油よ、髪に塗ると多少絡まったのもほどけるかもしれないわ。ほら、ここ座って」
ジハナが食卓の椅子に座ると、レアンナは後ろに立ってジハナの髪を触る。これは大仕事になりそうね、とつぶやくと香油の瓶の蓋をあけた。きゅぽんと言う音と共に花の香りが辺りに漂う。
「うわ、すごいにおいだ」
「あらほんとね、凝縮されて香りが強くなっちゃったのかしら。ジハナ、我慢できる?」
「うん、へーき」
ジハナが鼻に皺を寄せながら文句を言うと、母親も香りの強さに驚いたようだった。母は香油を少し手に取ると、普段自分が使っている手の保湿クリームと混ぜた。ジハナの髪に少し塗り付け毛先から少しずつ櫛を通す。
動くと怒られるのでジハナはやる事もなく足をプラプラさせる。しばらくすると、料理が完成したのかヴァーデンがやってきて、ジハナの髪を一緒にほどき始めた。
「父上もやってくれるんだ?俺、王様になったみたい!」
ご機嫌なジハナの後ろ姿をレアンナもヴァーデンも微笑ましく見つめた。
ここ数年で随分と背が伸びて、顔も大人びてきた。声はまだ高いままだが、きっともう何年かすれば体だけは大人のエルフになるだろう。ジハナが城に行ってしまったらその成長を一番近くで見ることはできなくなる。その事実にレアンナは涙ぐみながら、丁寧に、髪を引っ張って痛がらせないように毛玉をほどいていく。ヴァーデンがそっとレアンナの肩を抱き、結局何も言わずに作業に戻る。
どのくらい時間が経ったか、ジハナにとってはうんざりするほど長く、レアンナやヴァーデンにすればあっという間の時間が経って、ジハナの髪の毛玉は全てほどかれ、まっすぐ肩まで落ちていた。
「わぁ、俺って髪こんなに伸びてたんだ」
ヴァーデンが桶に温かい湯を入れてくれ、ジハナはそこで髪にたっぷりついたクリームを落とした。今まで頭の上に毛玉として乗っていた髪は、サラリと肩の上で揺れる。母の化粧用の鏡をのぞいてジハナが笑顔で言う。
「すごい!町の人たちみたいだ!確かに俺、今まで変だったかも!」
元気にはしゃぐジハナを落ち着かせ、家族は温かい野菜と魚の煮込み料理とパン、たくさんの果物で早めの夕食を済ませる。
ヴァーデンは明日ジハナに身に着けさせる金細工の候補をぶつぶつと考えながら食事をして、食べ終わると工房に出かけて行った。残った2人で夕飯の片づけをしている時にレアンナが小さい声で寂しくなるわね、とつぶやいた。
「どうして?」
「だって、城に行ってしまったら会えなくなるでしょう」
「会えるよ」
「そりゃあ休暇はもらえるでしょうけど、忙しくてきっとそれどころじゃなくなるわ」
「へへ、母さん忘れちゃった?俺、城から抜け出すの、すごい得意なんだぜ?いつでも会いに来れるよ!」
レアンナは目を丸くしてジハナを見て、その後ぎゅっと抱きしめた。
「おお、帰ったか。母さんなら物置だぞ」
「ただいま父上、いい香りだね。物置って母さんは何してるの?」
「お前の髪をどうにかする道具を探してるんだよ」
「俺の髪なんて誰も気にしないのに」
「気にしていないのはお前だけだ」
「え、そうなの?みんなもしかして俺のこと変って思ってたりする?」
「明言は避けておこう」
「うそ、ほんとに?俺が傷つくくらいに悪く思われてる?」
「お前はどう思う?」
「怖……この話はもうおわり!」
父と頭の悪い会話をし終わったところで、物置から「あったわ!」とうれしそうな声がした。父に物置に行くように言われ、ジハナは母を探す。
「母さん、何見つけたの?というか、父上が俺の髪の事すごく悪く言うんだけど、母さんもそう思う?思わないよな?」
「あんたのその髪をまともにするものを探してたのよ!あぁよかった!ほらこれ、昔結婚式のお祝い返しでもらった香油よ」
「まともって言った?今はまともじゃないってこと?ねぇ!」
レアンナは香油の入った瓶を持って振り返り、ジハナの髪をじろりと見下し、少し目を丸くした。
「あら、浴場ですこし絡まったのが収まったんじゃない?」
「うん。自分じゃできないけど、川に流すと少しマシになる」
「自分で"マシ"って言ってるんだから、多少自覚はあるようね」
「でも、そんなにひどいと思ってなかった……動物はそういうの何も言ってくれないし」
「王子達に何も言われないの?」
「たまに鳥の巣とかタンポポの綿毛って言われる」
ぶふっとレアンナが噴き出す。酷いぞ!ジハナは膨れて母を睨んだ。
「ごめんなさいね、ほら。これでかっこよくしてあげるから」
「それ何?」
「香油よ、髪に塗ると多少絡まったのもほどけるかもしれないわ。ほら、ここ座って」
ジハナが食卓の椅子に座ると、レアンナは後ろに立ってジハナの髪を触る。これは大仕事になりそうね、とつぶやくと香油の瓶の蓋をあけた。きゅぽんと言う音と共に花の香りが辺りに漂う。
「うわ、すごいにおいだ」
「あらほんとね、凝縮されて香りが強くなっちゃったのかしら。ジハナ、我慢できる?」
「うん、へーき」
ジハナが鼻に皺を寄せながら文句を言うと、母親も香りの強さに驚いたようだった。母は香油を少し手に取ると、普段自分が使っている手の保湿クリームと混ぜた。ジハナの髪に少し塗り付け毛先から少しずつ櫛を通す。
動くと怒られるのでジハナはやる事もなく足をプラプラさせる。しばらくすると、料理が完成したのかヴァーデンがやってきて、ジハナの髪を一緒にほどき始めた。
「父上もやってくれるんだ?俺、王様になったみたい!」
ご機嫌なジハナの後ろ姿をレアンナもヴァーデンも微笑ましく見つめた。
ここ数年で随分と背が伸びて、顔も大人びてきた。声はまだ高いままだが、きっともう何年かすれば体だけは大人のエルフになるだろう。ジハナが城に行ってしまったらその成長を一番近くで見ることはできなくなる。その事実にレアンナは涙ぐみながら、丁寧に、髪を引っ張って痛がらせないように毛玉をほどいていく。ヴァーデンがそっとレアンナの肩を抱き、結局何も言わずに作業に戻る。
どのくらい時間が経ったか、ジハナにとってはうんざりするほど長く、レアンナやヴァーデンにすればあっという間の時間が経って、ジハナの髪の毛玉は全てほどかれ、まっすぐ肩まで落ちていた。
「わぁ、俺って髪こんなに伸びてたんだ」
ヴァーデンが桶に温かい湯を入れてくれ、ジハナはそこで髪にたっぷりついたクリームを落とした。今まで頭の上に毛玉として乗っていた髪は、サラリと肩の上で揺れる。母の化粧用の鏡をのぞいてジハナが笑顔で言う。
「すごい!町の人たちみたいだ!確かに俺、今まで変だったかも!」
元気にはしゃぐジハナを落ち着かせ、家族は温かい野菜と魚の煮込み料理とパン、たくさんの果物で早めの夕食を済ませる。
ヴァーデンは明日ジハナに身に着けさせる金細工の候補をぶつぶつと考えながら食事をして、食べ終わると工房に出かけて行った。残った2人で夕飯の片づけをしている時にレアンナが小さい声で寂しくなるわね、とつぶやいた。
「どうして?」
「だって、城に行ってしまったら会えなくなるでしょう」
「会えるよ」
「そりゃあ休暇はもらえるでしょうけど、忙しくてきっとそれどころじゃなくなるわ」
「へへ、母さん忘れちゃった?俺、城から抜け出すの、すごい得意なんだぜ?いつでも会いに来れるよ!」
レアンナは目を丸くしてジハナを見て、その後ぎゅっと抱きしめた。
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