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第1章 幼少期
22話 王子のその後②
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2人して飛び上がって扉の方を見ると父とネオニールがゼーハーと息を荒げながら私たちを見ていた。大人2人は私たちを見てカチンと固まり、それも一瞬のことで今度は「はぁぁぁ」と大きくため息をついて脱力する。
「な、なに。どうしたの、父上たち。そんなに慌てて」
「ああ、2人でいたのか、良かった」
「初日から脱走して家に帰ってしまったのかと思ったのだが、まぁ王子と一緒だったのなら、まだよいか」
「こんな夜にお前たちは何をしていたのだ?」
ベッドの上で並んで座り直した私たちに父が尋ねる。父もネオニールも明るい声で話しているけど何となく顔が緊張しているような気がした。何かあったのだろうか?
「い、一緒に寝ようと思って……」
「話をしていたら眠くなってしまったんです」
父たちが何とも言えない顔をする。なんなんだ、一緒にいただけなのに。
「ダメでしたか?」
「いや、駄目ではない。しかしお前たち、少し仲が良すぎないか?」
「良すぎる?」
「王子と俺?そうですか?」
仲が良いといけないのだろうか?ジハナを見て首をかしげると彼もちょうど同じ方向に首を傾けたところだった。おかしくなって2人でくすくす笑う。
「ふふ、俺たち仲良し過ぎるって!」
「そうだねぇ!父上、私たちの仲がいいから側近にしたのではないんですか?」
「まぁ、それはそうだが……」
父が私たちを順番に見て黙る。観察され居心地が悪くなったのかジハナが私の隣にぴったりとくっつく。父は怒っているわけではない、ジハナを安心させようと手を握ると父がそれを見て片眉をあげた。
「そういえば説教以外でお前たち2人が一緒にいるのを見るのは初めてだな。仲が良いのはいいことだ。ただな、」
一度言葉を切って父が私の目をまっすぐ見る。
「レンドウィル、ジハナには側近として学ばねばならぬことが沢山ある。しばらくは遊ばずに自分がやるべきことに集中せねばならぬのだ。ジハナが早く側近になれば共に過ごす時間が増える。暫しの辛抱だ、問題ないな?」
困った、問題大ありだ。父の言い方だと普段も会わないようさせられそうだ。せめて寝るときくらい一緒にいられるようにしなければ。私はジハナを横から抱きしめると父に向って聞く。
「でも、一緒に寝るくらいは問題ないでしょう?」
「駄目だ。お前たちいつまでもおしゃべりして寝ないだろう」
「そんなことありません、きちんと寝ますよ」
「聞き分けが悪いなレンドウィル。駄目なものはダメだ!」
「すぐ寝ますから!今もほら、すごく眠い!あー瞼が重いです!」
「元気いっぱいの癖に何を言う!」
「父上たちがいるから眠れないだけです、ほらジハナ、寝よ!」
私と父の言い合いをおろおろと見ていたジハナを押してベッドに寝かせ、逃げないよう覆いかぶさって上からブランケットを頭まで被る。父の大きなため息が聞こえてジハナをぎゅっと抱きしめた。
「父上の言う事なんて知りません、ジハナのこと勝手に側近にして。私、怒ってるんですからね」
「レンドウィル……」
「……」
「お前の意思を最初に確認すべきだった。すまなかった」
「……」
父の謝罪にじわりと涙がこみあげてくる。父のことを困らせたいわけじゃない、でもジハナのことで妥協もしたくなかった。
ブランケットの中でジハナがこちらを見つめている。さっきまで突然始まった親子喧嘩に困惑していたのに、今のジハナの目には強い意志がみえた。あぁいやだ。私が子供みたいに喚いてる横で先に覚悟を決めてしまったんだ。
「王子、俺一生懸命勉強するからさ」
「……ジハナ、やだ」
「すぐ勉強も終わらせるから」
「やだよ。私、ただ一緒に遊びたかっただけなんだ。ずっと友達がいい」
「友達だよ。ちょっとやることが増えるだけ。なにも減らない」
「ほかの城の人たちみたいに遠くに行っちゃうんだ」
「ううん、レンドウィルの隣に行くためだよ。一番近いところだ」
「……」
「1年も待たせない、約束するよ」
「……絶対だよ」
拘束していた腕の力を緩めるとジハナは上に乗ったままの私を抱きしめ返して、そのままコロンと横に転がった。ブランケットをめくると困ったように私たちを見つめる父とネオニールと目が合った。
私が不貞腐れつつも顔を出したことで安心したのか父が微笑む。きっと会話も聞こえていただろう、父は「今日だけだからな」と言ってネオニールと帰っていった。
おやすみの挨拶の後パタンと扉が閉まりジハナと2人で脱力する。
「びっくりしたよ。レンドウィル、陛下といつもあんななの?」
「ううん、あんな言い合い、初めてだったかも」
「そうなんだ。意外な一面を見てしまった気分だ」
「意外って?」
「いつもはかわいい弟分の意外と強いところ?」
「あはは、なにそれ」
「親子でも王様と喧嘩するって大変そうだからさ。ちょっと格好よかったぞ」
「ほんと?えへへ、うれしいなぁ」
私たちはそのままベッドで少し話して、やっぱり疲れていたジハナが先に眠ってしまった。私もジハナの寝顔を眺めながらほわほわと温かい気持ちで眠りについたのだった。
「な、なに。どうしたの、父上たち。そんなに慌てて」
「ああ、2人でいたのか、良かった」
「初日から脱走して家に帰ってしまったのかと思ったのだが、まぁ王子と一緒だったのなら、まだよいか」
「こんな夜にお前たちは何をしていたのだ?」
ベッドの上で並んで座り直した私たちに父が尋ねる。父もネオニールも明るい声で話しているけど何となく顔が緊張しているような気がした。何かあったのだろうか?
「い、一緒に寝ようと思って……」
「話をしていたら眠くなってしまったんです」
父たちが何とも言えない顔をする。なんなんだ、一緒にいただけなのに。
「ダメでしたか?」
「いや、駄目ではない。しかしお前たち、少し仲が良すぎないか?」
「良すぎる?」
「王子と俺?そうですか?」
仲が良いといけないのだろうか?ジハナを見て首をかしげると彼もちょうど同じ方向に首を傾けたところだった。おかしくなって2人でくすくす笑う。
「ふふ、俺たち仲良し過ぎるって!」
「そうだねぇ!父上、私たちの仲がいいから側近にしたのではないんですか?」
「まぁ、それはそうだが……」
父が私たちを順番に見て黙る。観察され居心地が悪くなったのかジハナが私の隣にぴったりとくっつく。父は怒っているわけではない、ジハナを安心させようと手を握ると父がそれを見て片眉をあげた。
「そういえば説教以外でお前たち2人が一緒にいるのを見るのは初めてだな。仲が良いのはいいことだ。ただな、」
一度言葉を切って父が私の目をまっすぐ見る。
「レンドウィル、ジハナには側近として学ばねばならぬことが沢山ある。しばらくは遊ばずに自分がやるべきことに集中せねばならぬのだ。ジハナが早く側近になれば共に過ごす時間が増える。暫しの辛抱だ、問題ないな?」
困った、問題大ありだ。父の言い方だと普段も会わないようさせられそうだ。せめて寝るときくらい一緒にいられるようにしなければ。私はジハナを横から抱きしめると父に向って聞く。
「でも、一緒に寝るくらいは問題ないでしょう?」
「駄目だ。お前たちいつまでもおしゃべりして寝ないだろう」
「そんなことありません、きちんと寝ますよ」
「聞き分けが悪いなレンドウィル。駄目なものはダメだ!」
「すぐ寝ますから!今もほら、すごく眠い!あー瞼が重いです!」
「元気いっぱいの癖に何を言う!」
「父上たちがいるから眠れないだけです、ほらジハナ、寝よ!」
私と父の言い合いをおろおろと見ていたジハナを押してベッドに寝かせ、逃げないよう覆いかぶさって上からブランケットを頭まで被る。父の大きなため息が聞こえてジハナをぎゅっと抱きしめた。
「父上の言う事なんて知りません、ジハナのこと勝手に側近にして。私、怒ってるんですからね」
「レンドウィル……」
「……」
「お前の意思を最初に確認すべきだった。すまなかった」
「……」
父の謝罪にじわりと涙がこみあげてくる。父のことを困らせたいわけじゃない、でもジハナのことで妥協もしたくなかった。
ブランケットの中でジハナがこちらを見つめている。さっきまで突然始まった親子喧嘩に困惑していたのに、今のジハナの目には強い意志がみえた。あぁいやだ。私が子供みたいに喚いてる横で先に覚悟を決めてしまったんだ。
「王子、俺一生懸命勉強するからさ」
「……ジハナ、やだ」
「すぐ勉強も終わらせるから」
「やだよ。私、ただ一緒に遊びたかっただけなんだ。ずっと友達がいい」
「友達だよ。ちょっとやることが増えるだけ。なにも減らない」
「ほかの城の人たちみたいに遠くに行っちゃうんだ」
「ううん、レンドウィルの隣に行くためだよ。一番近いところだ」
「……」
「1年も待たせない、約束するよ」
「……絶対だよ」
拘束していた腕の力を緩めるとジハナは上に乗ったままの私を抱きしめ返して、そのままコロンと横に転がった。ブランケットをめくると困ったように私たちを見つめる父とネオニールと目が合った。
私が不貞腐れつつも顔を出したことで安心したのか父が微笑む。きっと会話も聞こえていただろう、父は「今日だけだからな」と言ってネオニールと帰っていった。
おやすみの挨拶の後パタンと扉が閉まりジハナと2人で脱力する。
「びっくりしたよ。レンドウィル、陛下といつもあんななの?」
「ううん、あんな言い合い、初めてだったかも」
「そうなんだ。意外な一面を見てしまった気分だ」
「意外って?」
「いつもはかわいい弟分の意外と強いところ?」
「あはは、なにそれ」
「親子でも王様と喧嘩するって大変そうだからさ。ちょっと格好よかったぞ」
「ほんと?えへへ、うれしいなぁ」
私たちはそのままベッドで少し話して、やっぱり疲れていたジハナが先に眠ってしまった。私もジハナの寝顔を眺めながらほわほわと温かい気持ちで眠りについたのだった。
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