一之瀬くんは人気者になりたい【R18版】

オヲノリ

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7.悩みの種2

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「お二人さん。揉めちゃってるけど、どうかした……?」
「一之瀬、優に何かされたのか?」

大佑たいすけ……。僕がやらかした前提で話すのやめてくれる? でもあながち間違いじゃないけど」

 春風の言動に焦っていると、さっきの会話を喧嘩と勘違いした霧谷と花岡が間に入ってくれたようだ。その場で喧嘩じゃないと武田の話は端折って経緯を簡潔に説明した。
 霧谷は吃驚びっくりさせんなよ、と安堵した表情をさせた。今日はやたらと一之瀬の心配する花岡になんて事はない様子を見せて落ち着かせた。経緯はどうであれ気を遣わせて悪かったなと心の中で詫びた。

 この間は花岡に首を舐められたり、今日なんかは春風に過剰に心配されたりと言動が行き過ぎてるような気もするが、他意はないはずだと言い聞かせる。
 取り敢えずあんな空気だったからあいつらが来たのはグッドタイミングで助かったと言えよう。

「あー、良かったぁ。お前らが喧嘩してたら、ただ事じゃねぇっての。マジでびびったわー」
「ま、まぁ、喧嘩じゃねぇけど……」

「けどってなんだよ。……ああ、わかったぞ。ただの痴話喧嘩だったのかぁ」
「あのなー」

 霧谷のいつもの冗談に呆れる。一之瀬が春風と関わるとすぐに茶化すのがお決まりのようだ。

「一之瀬、本当に何もされてないんだな?」
「花岡、一体何の確認だよ。春風がそんな事しねぇだろ」

 花岡がまた心配そうにたずねる。微妙な空気だったものの怪我させられたり暴言を吐かれたりとか別に何もされていない。

──温厚な春風に限ってそんな事するはずがない、と。

「一之瀬がそうなら、今はいいか」

 急に花岡が顔を近づけると、一之瀬は咄嗟とっさに苦笑いして顔を背ける。一瞬、キスされそうだと男相手なのに思ってしまった。花岡の今までの過剰なスキンシップがそう匂わせる。

「な、何だよ」

「優をあんまり信用し過ぎるなよ」

 と見慣れている明るい表情ではなく真面目な顔をした花岡が一之瀬だけに聞こえるような小声で言った。

──それってどういう意味なんだ……?

 疑問に思って聞き返そうにも予想外の言葉に声にはならなかった。
 花岡は気にも留めずに「よく見ると、目の下にまつ毛付いてんな」といつもの雰囲気で一之瀬の目の下を指でぬぐう。一応は礼は言っといたが、さっき言われた言葉がリピートしてる。何のために言ったんだと。

「はぁ……疑いすぎだよ、大佑。僕が一之瀬に酷い事なんてしないよ」
「そうだけど……」

「実際、何もねぇからいいじゃねーか。さっさと教室に戻ろうぜ」

 らちがあかないと思いさっさと話を切り上げた。さっきの花岡の言葉が少し心に引っかかる。しかし友達を疑うなどしてはならないし、詳細を聞きたい程ではない。今は気にしなくてもいいかと頭の片隅に置いといた。

「次は……現国かぁ。小テストだりぃなぁ」
「マジそれなー」
「全然勉強してねぇや」

 至極しごく面倒くさそうにしている霧谷に一之瀬と花岡は同意見で頷いている。小テスト所謂いわゆる漢字テストは地味に面倒だ。小難こむずかしい漢字を暗記しないといけないし、点数が低いと課題を出される。

「三人共、勉強しないと駄目だよ。僕が覚えやすい方法を教えてあげようか?」
「いや……そこまでは。なぁ?」
「まぁそうだなー、漢字位は自力で何とか出来ないとヤバいよなぁ」
「……俺は教えて貰わねぇとまずいかも」

 「おいおい、花岡ぁー」と霧谷が突っ込むかのように花岡の肩を軽く叩いた。花岡は現国が少し苦手だったらしく春風は相変わらずだなと苦笑いしてたが、快く花岡に漢字を教えるそうだ。優等生は他の奴に教える心の余裕があるんだと尊敬の眼差しで見る。

 霧谷と花岡は話しながら教室に戻った。続けて教室に入ろうとした時に春風が引き留める。

「一之瀬」
「何だ?」

 返事をして声がした方へ振り向いた。

「明日は約束忘れないでね」

 春風が一之瀬の頭を撫でて目を細める。そう言えば、一緒に勉強をする約束をしていた覚えがあった。決して忘れた訳ではなく予想外の約束だからかあまり深く考えないようにしていた。

「春風せんせぇ、よろしく頼むな」

 茶化すかのようにわざとらしくにやついたら、春風は顎に手を当てて何かを考えている様子だ。

「ああ、手のかかる一之瀬のために一生懸命に頑張らないとね」 
「いやいや、お前は頑張んなくていいって。もっと気楽に行こうぜ、春風」

 異様にやる気を見せる春風に一之瀬の頭が追いついていけるレベルに合わしてくれと願うばかりである。お前なんかに合わせたら、ついていけないのは明白だ。
 春風が悠長にしてたらいくら時間があっても足りないと愚痴るもその表情は優しい。

「一之瀬は何も不安がる必要なんてないよ。僕に全て任せればいいからな」

 たまに見せる頼もしい姿に惚れ惚れとしそうになる。俺が女だったら惚れてるなぁ、と一之瀬は呑気に考えていた。

 この時はまだモテない自分には色恋沙汰は一切関係ない話だと思っていた。
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