悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

文字の大きさ
22 / 173

0021★盗賊らしき集団に追い駆けられてます

しおりを挟む


 セシリアは、馬車の御者台に座り、今一心に手綱を振ってスピードを上げて走らせていた。
 ちなみに、グレン・猫型の魔獣とその幼体は、馬車の中である。

 そして、もう1人、獣人の子を乗せていた。
 大きな耳とフッサフサの尻尾を持つ、狐の獣人の子供を買ったのだ。

 ちなみに、今現在、セシリアが買った狐獣人の子供を奪おうと、盗賊と化した者達が追い駆けてきていたりする。

 馬車でロマリス王国の防護壁を出てしばらくしたら、忽然と集団で現れたので、セシリアが狐獣人の子供を買うところを見ていた者達と思われる。

 ただ、セシリアがデュバインに渡した魔石と宝石が、ダンジョン産の宝箱から出たモノだった為、かなりもめたのだ。

 セシリアとしては、付き合ってもらったので、お礼にと思ったのだが………。
 かなり高価なモノだった為、デュバインに首を振られたのだ。

 困ったセシリアは、なら馬車と馬を買ってくれと頼んだ。
 結果、質実剛健な馬車と、立派な軍馬を4頭買っくれたのだ。
 勿論、旅に必要な食料や水もたっぷりと乗せられていた。

 それでも、まだまだもらい過ぎると言うデュバイン達に、セシリアは目に付いた狐獣人の子供を指さして欲しがった。
 入っている檻や服装がそれなりに整えてられていたので、高価な奴隷と判断しての要求だった。

 勿論、そういうステータスになる獣人の奴隷なので、飼いたい者は結構いるようだった。
 その中でも、地位を後ろ盾にして、買い叩こうとしている貴族らしい者がいたので、なんとなく、無意識の嫌がらせを込めた行動だった。

 当然のことながら、セシリアにはそういう意識はなかった。
 ただ、自分の意思の有無に関係なく、理不尽に生贄とされていた鬱憤から、王侯貴族らしいモノが欲しがる奴隷を、横取りしたいという無意識の要求が発現したのだ。

 そう、地位をかさにして、値切って買おうとしている目の前の貴族がカンに触ったがゆえの横取り行為だった。
 買った後に、面倒ごとが来るという頭は、その時のセシリアには無かった。

 デュバインはデュバインで、セシリアから渡された宝石と魔石の対価に見合う何かを、もっと買わなければと思っていた時に示された要求だったので、素直に即買いにはしったのだ。

 だから、デュバインは一切値切ることなく、狐獣人の子供を即座に買い取りしたのだ。
 勿論、主人はセシリアで、直ぐに所有の移譲などをしてもらったことは言うまでもない。

 横から搔っ攫われるようにして、自分が狙っていた狐獣人の子供を買い取られたコトが面白くない貴族が、なにやら難癖を付けて来たが、デュバインは無視した。

 そんなに欲しかったなら、無茶な値切りをせずに、適正価格で買えば良いのにと言い放ち、セシリアもデュバイン同様、貴族の男を無視したのだった。
 
 デュバインは、高額な狐獣人の子供を買って、やっと残りの宝石と魔石を受け取るコトを納得してくれたのだ。
 それでも、チラリッと見たかぎり半分くらい残っていたのは確かな事実だった。

 あれって、どのぐらいの価値あったのかなぁ?
 気にしなくても良いのに、デュバインさん達って気が良いなぁ………

 宝石や魔石の価値をちょっと考えたセシリアだが、所詮はできたての名前もまだ無い『ダンジョン』から手に入れたモノなので、別に、気にしなくても良い程度しか思っていなかったりする。

 苦労らしい苦労をしないで手に入れた宝箱からのモノだったので、頓着していなかったりする。

 ロマリス王国の防護壁の門を出るまで、かなり心配されたセシリアだったが、平和なスローライフを望んでいるので、あっさりと『夢の翼』の4人と別れたのだった。

 そして、セシリアは買ってもらった馬車に全員を乗せて、夢の平和なスローライフを夢見て、たったとロマリス王国を逃げるようにして出たのだ。

 それが、ほんの2時間ほど前のことだった。

 んっもぉー…まだ追い駆けて来てる……鬱陶しいわねぇ
 おかげで、ゆっくりと彼等と話せないじゃないのぉ………

 とはいえ、この辺の地理にうといのよねぇ……はぁ~………
 面倒だから………っと…うわぁ~…こんな時に、サンドウルフぅ~…

 ふふふふ……今、物凄く良いコト思い付いちゃったぁ~……
 あの追い駆けて来ている盗賊達に、なすり付けしちゃいましょう

 思い付いと同時に、セシリアは最大限の魔力を込めて、隠蔽を軍馬達と馬車にかける。
 そう、向かって来るサンドウルフの群れを後ろへと流す為に。

 幸いなコトに、隠蔽が上手く行ったのか、サンドウルフの群れはセシリアの馬車の横を走り抜けて行く。
 そのままサンドウルフの群れは、獲物が多い方へとまっしぐらに向かってくれる。

 気性の荒い軍馬4頭。
 馬車を曳く2頭と左右を伴奏する、ほぼフリーの軍馬2頭。

 そんな危険な軍馬達の相手をしたくなかったサンドウルフの群れは、その存在がセシリアの魔法で隠蔽されたと同時に、盗賊を獲物と見定めて、盗賊を装った集団へと牙を向いたのだった。

 隠蔽が効いてくれて、ラッキーだったわぁ~…はぁ~…しんどいわ
 ここは、さっさとどこか休める場所を探さないとねぇ………

 落ち着いたら、グレン達の状態を確認しないとだしねぇ………
 それと、あの狐獣人の子供ともお話しをしたいのよねぇ………

 衝動買いしちゃうなんてねぇ……はぁ~…考えなしになっているわねぇ
 取り敢えず、グレンでも狐獣人の子供でも良いから、色々と聞かないと

 なによりも、金銭感覚がまずわからないし………
 一般常識も知りたいしねぇ……はぁ~…

 夢の平和なスローライフをする為にも、どの辺が安全な国か聞かないとだし
 未来の王太子妃としての知識はあっても、現実はねぇ………

 いざとなったら、辺境の小さめの村っていう手もありだけど………
 どの国が良いかしらねぇ……っと、オーケーオーケー………

 盗賊さん達は、サンドウルフの群れに襲われて、付いて来ていないわね
 もう少し走らせたら、馬達も休ませて上げて、曳くのも交代しないとね

 そんなことを考えながら、セシリアは馬車を走らせ続けるのだった。

 ちなみに、現在セシリアが向かっているのは、出身国としたシルーク王国である。
 心配するデュバイン達に、亡くなった母親が連れていた乳母を頼るコトにすると言って、ロマリス王国の防護壁から出て来ていたりする。

 実際、分岐点まではシルーク王国に向かう街道を素直に走っているセシリアの馬車だったりする。

 ええ………ちゃぁ~んと、シルーク王国に向かっている街道を行くわよ
 ただし、途中までだけどねぇ………そろそろ最初の三叉路なのよねぇ………

 うぅ~ん……大国のゼフィランス帝国の方にでも行こうかしら
 それとも、思い切って海があるコーラルージュ王国も良いわねぇ………

 はぁ~…どちらにしても、悩むわぁ……遠いのよねぇ………
 あとは、人口がカスッカスのところに行くか……

 ひとを隠すならってコトで、多いところに行くか?
 ……どちらかよねぇ………後は、ご飯が美味しいところが良いわねぇ

 

 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

処理中です...