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0040★その頃のアゼリア王国2
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私は、さっさと、甥を捕まえる。
「よう…アロイス、久しぶりだな……さぁ…さっさと、卒業パーティーを切り上げて、領地に帰るぞ」
私にそう、声をかけられ、甥のアロイスが目を白黒させているが、小声で命令する。
「巻き込まれる前に、領地に俺と帰るんだ……巻き込まれたいのか?」
私の言葉にも、エイダン王太子の腕にぶら下がり、セシリア嬢から取り上げた宝飾品………悍ましい、魔道具………を、自分の額や胸元に着けて、嬉しそうにしている姿の少女に視線を向けて、首を振る。
「俺は、叔父上とは帰りません……領地になんて………」
と、娼婦のような少女への未練を見せる甥のアロイスに、私は、小声ではっきりと言う。
「アロイス、お前が、王都に残るというコトは、領地にいる領民達、親兄弟親戚、私を含めた、すべてを犠牲にするコトになる?それでも、残りたいのか?」
私の言葉に、首を傾げてアロイスは言う。
「叔父上、それって大袈裟じゃありませんか?俺は、騎士団に入団するつもりです。父上の跡継ぎは、弟のシモンが継げば良い。妹のキャロルに婿養子でも良いだろ。俺じゃなくても、良いはずだ」
どうやら、困ったコトに、エイダン王太子の腕にぶら下がる娼婦に、甥のアロイスは夢中らしい。
恋の病ってヤツは、ちょっとやそっとじゃ…治らないモンだけど、今は困るんだよ。
あんな疫病神と関わったら、我が領地の者達すべてが犠牲になってしまう。
どうやら、アロイスは、まだ還って来た負を感じていないらしい。
私が過敏症なのか?だが、確実に還って来ている。
10年以上のモノで、3人が分担して浄化するはずだったモノだぞ。
それが、もう降りかかって来ているコトを感じているのは、私だけなのか?
と、周囲を見回せば、公爵家や侯爵家と縁戚関係の者達の中に、顔色が悪くなっている者達がチラホラと見える。
あれは、王家の血筋が入っている者達だな。
そりゃそうだよなぁ…薄っすいはずの私だとて、ちょっと体調が悪くなって来ている感覚がするのだから………。
説得するのは、無理かな?
だが、何としても連れ帰る。
血を引いた者(=アロイス)が、王都に残れば、それを伝って、私達に降りかかり、なんの関係もない、名ばかりの辺境の地にまで、降りかかってしまう。
この地(=アゼリア王国)から離れれば、たとえ血を引いていても、軽減されるはずだ。
アロイスが馬鹿なコトする前に、連れ帰らなければ………。
仕方がないな。
私は、アロイスに睡眠系の魔法をかける。
アロイスには、魔法を無効にするような魔道具は持たせてなかったからな。
倒れかかるアロイスを受け止め、担ぎ上げて、足を踏み出そうとしたら………。
あちらこちらで、耐性や体力の無い令嬢や令息がパタパタと倒れ始めていた。
ああ…始まったな。
まして、あそこには、セシリア嬢が身に付けさせられていた魔道具がある。
ウゲッ……視えてしまった………物凄い澱みだ。
あの娼婦のような少女の回りに、澱む濃厚な穢れがどす黒い霞のように渦巻いている。
ただ、正式な儀式のもと、穢れや災いを浄化する器(=生贄)として、なにも施されていないから、あの娼婦には、なんの影響もないようだ。
が、ああ…やはり…エイダン王太子は顔色がだいぶ悪くなって来ているな。
勿論、取り巻き達も、多少なりともどころか、ガッチリと王家の血筋を引いている者が混じっているからな。
遠くない未来に、倒れて寝込む者達が出るだろうな。
逃げなければ、私程度の者では、アレを抑えるなとカケラでもムリだ。
何をどうしても、私の持つ魔力では、浄化なんてできるモノではない。
「ライオル、アークス、アレク、カリム、グレイス、引き上げだっ……物凄くヤバいっ」
小声で、友人4人と、領地から随従した女性騎士のグレイスに声をかけて、アロイスを肩に背負ったまま出せる、最速で転移ができる場所へと向かう。
途中で学院の警護をする者達と行き交わしたが、なれない酒をのんで気分を悪くしたと言って、さっさとアゼリア王国貴族学院の敷地を出た。
そして、転移ができる場所までの移動の為に借りた馬に、睡眠魔法で眠らせたアロイスを乗せて、馬にまたがる。
その側を、ボロい荷馬車が物凄い速度で駆け抜けて行く。
馬車のボロさを考えると、いささか、繋がれた馬の質と数がおかしいが………。
うっ…気持ち悪さが酷くなって来た。
不味いぞ、これは………。
「大丈夫ですか?ライル様」
心配そうに、グレイスが私を見上げる。
「ああ、まだなんとか大丈夫だ……急いで、転移の場所に向かうぞ」
私の言葉に、アークスとアレクが頷く。
「そうだな、早く転移の場所に移動した方が良い……これは不味い……本当に薄っすい血筋しか引いていない、俺達ですら気分が悪くなってきたぞ」
「下手をすれば、異変を感じた……国王夫妻と大神官長が、転移場の転移を使って、帰還してくるかも知れない」
そう言い合うアークスとアレクは、双子なのだ。
それも、失伝した公爵家ゆかりの者……いわゆる、当主にお手付きされて捨てられた侍女の子だったりする。
ちなみに、転移の場所で転移するには、転移能力のある者が居ないと出来ない。
ちなみに、グレイスはその類い稀な転移能力を持つ者だったりする。
うわぁ~…国王夫妻が、大神官長の転移能力で帰還するのに行き会ったらどうしよう。
いくら、グレイスの転移能力が優れていても、絶対に、場が乱れて、跳んで帰れなくなる。
急がなければ、転移場に足止めされて、領地に帰れないのは困る。
どこぞに連れて行かれた、セシリア嬢のことは心配だが、私もグズグスしているわけにはいかないからな。
本当に、迷惑な血筋だよ…ああ、気持ち悪さが酷くなる一方だ。
アロイスの顔色を見れば、睡眠魔法で昏倒していても、苦しそうにしている。
「行くぞ……とにかく、転移の場所まで全速力だ……そこまでの距離は無い、借り馬達にも、そこまで負担はかからないだろう……走れっ」
強い魔力を流して、乗った馬に指示を出せば、馬は嬉しそうに全力疾走に移る。
同時に、半拍遅れて、グレイスと友人達の馬も続く。
転移の場所に向かう道すがら、周囲を見回せば、不安そうな表情をする者達がチラホラと見かけられた。
あれは、血筋を引いているというよりは、過敏なタイプなのだろうな。
幸い、転移の場所に向かっている者達は、私達以外居ないようだな。
街中ではあるが、そんなコトに構う余裕は無い。
しばらく走り抜ければ、すぐに目的の転移の場所へと到着する。
「おや…なにかありましたか?」
転移の場所を守る、守護兵に顔色の悪い甥のアロイスを見せて言う。
「どうやら、悪酔いしたらしい……それも、とんでもない病に引っかかってしまってな………早急に、連れ帰るコトにしたのだ」
そう言いながら、馬から降りて、アロイスを大事そうに抱えてみせる。
馬達は、側にある貸し馬屋の男が引き取りに来る。
「どれも、良い馬達だった」
そう言いながら、ライオルが料金を多めに払っていた。
それを横目に、グレイスが問い掛ける。
「転移の場は、誰か出た者は?帰って来た者はいますか?」
その何時もと変わらない問いかけに、首をする。
「今日は、まだ誰も居ないねぇ……貴方達が1番のりだよ」
そう言ってから、ああという表情になる。
「今日は多いかもなぁ……卒業式だったな……だが、まだ迎えの者達は来てないな。領地に帰る者達もまだだから、直ぐに使えるぞ」
その言葉にホッとして、転移の場に入れてもらう。
「どうした?グレイス?」
転移の場に入ったとたんに、かなり不安そうな表情になったグレイスに、私は問い掛ける。
「ギリギリで跳べそうです……お早く、転移の場の中に入ってくださいっ……あちらの帰還の場が震えてます……あれは、遠方からの転移です」
グレイスの言葉に、俺達はダッと転移の場に入る。
同時に、グレイスの声が響く。
「跳びますっ」
その瞬間に、ユラリッという感覚が全身に纏いつき、無事に跳んだコトを知る。
どうやら、私達は、なんとか、難を逃れたのだろう。
遠方からの帰還は、たぶんに、国王夫妻と転移能力を持つ大神官長だろう。
予想よりもかなり早い帰還だったな。
私には、どうしようも無いコトだと理解っていても、助けてあげたかったなぁ……と思うコトしか出来なかった。
できるならば、こころある神よ、彼女を救いたまえ。
そう思うコトしか、私には出来なかった。
はぁ~……これからしばらく、神殿で身を清めないとだなぁ………。
そう思ったのは、卒業パーティーに赴いた全員の気持ちだった。
「よう…アロイス、久しぶりだな……さぁ…さっさと、卒業パーティーを切り上げて、領地に帰るぞ」
私にそう、声をかけられ、甥のアロイスが目を白黒させているが、小声で命令する。
「巻き込まれる前に、領地に俺と帰るんだ……巻き込まれたいのか?」
私の言葉にも、エイダン王太子の腕にぶら下がり、セシリア嬢から取り上げた宝飾品………悍ましい、魔道具………を、自分の額や胸元に着けて、嬉しそうにしている姿の少女に視線を向けて、首を振る。
「俺は、叔父上とは帰りません……領地になんて………」
と、娼婦のような少女への未練を見せる甥のアロイスに、私は、小声ではっきりと言う。
「アロイス、お前が、王都に残るというコトは、領地にいる領民達、親兄弟親戚、私を含めた、すべてを犠牲にするコトになる?それでも、残りたいのか?」
私の言葉に、首を傾げてアロイスは言う。
「叔父上、それって大袈裟じゃありませんか?俺は、騎士団に入団するつもりです。父上の跡継ぎは、弟のシモンが継げば良い。妹のキャロルに婿養子でも良いだろ。俺じゃなくても、良いはずだ」
どうやら、困ったコトに、エイダン王太子の腕にぶら下がる娼婦に、甥のアロイスは夢中らしい。
恋の病ってヤツは、ちょっとやそっとじゃ…治らないモンだけど、今は困るんだよ。
あんな疫病神と関わったら、我が領地の者達すべてが犠牲になってしまう。
どうやら、アロイスは、まだ還って来た負を感じていないらしい。
私が過敏症なのか?だが、確実に還って来ている。
10年以上のモノで、3人が分担して浄化するはずだったモノだぞ。
それが、もう降りかかって来ているコトを感じているのは、私だけなのか?
と、周囲を見回せば、公爵家や侯爵家と縁戚関係の者達の中に、顔色が悪くなっている者達がチラホラと見える。
あれは、王家の血筋が入っている者達だな。
そりゃそうだよなぁ…薄っすいはずの私だとて、ちょっと体調が悪くなって来ている感覚がするのだから………。
説得するのは、無理かな?
だが、何としても連れ帰る。
血を引いた者(=アロイス)が、王都に残れば、それを伝って、私達に降りかかり、なんの関係もない、名ばかりの辺境の地にまで、降りかかってしまう。
この地(=アゼリア王国)から離れれば、たとえ血を引いていても、軽減されるはずだ。
アロイスが馬鹿なコトする前に、連れ帰らなければ………。
仕方がないな。
私は、アロイスに睡眠系の魔法をかける。
アロイスには、魔法を無効にするような魔道具は持たせてなかったからな。
倒れかかるアロイスを受け止め、担ぎ上げて、足を踏み出そうとしたら………。
あちらこちらで、耐性や体力の無い令嬢や令息がパタパタと倒れ始めていた。
ああ…始まったな。
まして、あそこには、セシリア嬢が身に付けさせられていた魔道具がある。
ウゲッ……視えてしまった………物凄い澱みだ。
あの娼婦のような少女の回りに、澱む濃厚な穢れがどす黒い霞のように渦巻いている。
ただ、正式な儀式のもと、穢れや災いを浄化する器(=生贄)として、なにも施されていないから、あの娼婦には、なんの影響もないようだ。
が、ああ…やはり…エイダン王太子は顔色がだいぶ悪くなって来ているな。
勿論、取り巻き達も、多少なりともどころか、ガッチリと王家の血筋を引いている者が混じっているからな。
遠くない未来に、倒れて寝込む者達が出るだろうな。
逃げなければ、私程度の者では、アレを抑えるなとカケラでもムリだ。
何をどうしても、私の持つ魔力では、浄化なんてできるモノではない。
「ライオル、アークス、アレク、カリム、グレイス、引き上げだっ……物凄くヤバいっ」
小声で、友人4人と、領地から随従した女性騎士のグレイスに声をかけて、アロイスを肩に背負ったまま出せる、最速で転移ができる場所へと向かう。
途中で学院の警護をする者達と行き交わしたが、なれない酒をのんで気分を悪くしたと言って、さっさとアゼリア王国貴族学院の敷地を出た。
そして、転移ができる場所までの移動の為に借りた馬に、睡眠魔法で眠らせたアロイスを乗せて、馬にまたがる。
その側を、ボロい荷馬車が物凄い速度で駆け抜けて行く。
馬車のボロさを考えると、いささか、繋がれた馬の質と数がおかしいが………。
うっ…気持ち悪さが酷くなって来た。
不味いぞ、これは………。
「大丈夫ですか?ライル様」
心配そうに、グレイスが私を見上げる。
「ああ、まだなんとか大丈夫だ……急いで、転移の場所に向かうぞ」
私の言葉に、アークスとアレクが頷く。
「そうだな、早く転移の場所に移動した方が良い……これは不味い……本当に薄っすい血筋しか引いていない、俺達ですら気分が悪くなってきたぞ」
「下手をすれば、異変を感じた……国王夫妻と大神官長が、転移場の転移を使って、帰還してくるかも知れない」
そう言い合うアークスとアレクは、双子なのだ。
それも、失伝した公爵家ゆかりの者……いわゆる、当主にお手付きされて捨てられた侍女の子だったりする。
ちなみに、転移の場所で転移するには、転移能力のある者が居ないと出来ない。
ちなみに、グレイスはその類い稀な転移能力を持つ者だったりする。
うわぁ~…国王夫妻が、大神官長の転移能力で帰還するのに行き会ったらどうしよう。
いくら、グレイスの転移能力が優れていても、絶対に、場が乱れて、跳んで帰れなくなる。
急がなければ、転移場に足止めされて、領地に帰れないのは困る。
どこぞに連れて行かれた、セシリア嬢のことは心配だが、私もグズグスしているわけにはいかないからな。
本当に、迷惑な血筋だよ…ああ、気持ち悪さが酷くなる一方だ。
アロイスの顔色を見れば、睡眠魔法で昏倒していても、苦しそうにしている。
「行くぞ……とにかく、転移の場所まで全速力だ……そこまでの距離は無い、借り馬達にも、そこまで負担はかからないだろう……走れっ」
強い魔力を流して、乗った馬に指示を出せば、馬は嬉しそうに全力疾走に移る。
同時に、半拍遅れて、グレイスと友人達の馬も続く。
転移の場所に向かう道すがら、周囲を見回せば、不安そうな表情をする者達がチラホラと見かけられた。
あれは、血筋を引いているというよりは、過敏なタイプなのだろうな。
幸い、転移の場所に向かっている者達は、私達以外居ないようだな。
街中ではあるが、そんなコトに構う余裕は無い。
しばらく走り抜ければ、すぐに目的の転移の場所へと到着する。
「おや…なにかありましたか?」
転移の場所を守る、守護兵に顔色の悪い甥のアロイスを見せて言う。
「どうやら、悪酔いしたらしい……それも、とんでもない病に引っかかってしまってな………早急に、連れ帰るコトにしたのだ」
そう言いながら、馬から降りて、アロイスを大事そうに抱えてみせる。
馬達は、側にある貸し馬屋の男が引き取りに来る。
「どれも、良い馬達だった」
そう言いながら、ライオルが料金を多めに払っていた。
それを横目に、グレイスが問い掛ける。
「転移の場は、誰か出た者は?帰って来た者はいますか?」
その何時もと変わらない問いかけに、首をする。
「今日は、まだ誰も居ないねぇ……貴方達が1番のりだよ」
そう言ってから、ああという表情になる。
「今日は多いかもなぁ……卒業式だったな……だが、まだ迎えの者達は来てないな。領地に帰る者達もまだだから、直ぐに使えるぞ」
その言葉にホッとして、転移の場に入れてもらう。
「どうした?グレイス?」
転移の場に入ったとたんに、かなり不安そうな表情になったグレイスに、私は問い掛ける。
「ギリギリで跳べそうです……お早く、転移の場の中に入ってくださいっ……あちらの帰還の場が震えてます……あれは、遠方からの転移です」
グレイスの言葉に、俺達はダッと転移の場に入る。
同時に、グレイスの声が響く。
「跳びますっ」
その瞬間に、ユラリッという感覚が全身に纏いつき、無事に跳んだコトを知る。
どうやら、私達は、なんとか、難を逃れたのだろう。
遠方からの帰還は、たぶんに、国王夫妻と転移能力を持つ大神官長だろう。
予想よりもかなり早い帰還だったな。
私には、どうしようも無いコトだと理解っていても、助けてあげたかったなぁ……と思うコトしか出来なかった。
できるならば、こころある神よ、彼女を救いたまえ。
そう思うコトしか、私には出来なかった。
はぁ~……これからしばらく、神殿で身を清めないとだなぁ………。
そう思ったのは、卒業パーティーに赴いた全員の気持ちだった。
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