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0066★姿見は魔道具のようです
しおりを挟む好奇心を出してセシリアが聞けば、グレンは肩を竦めて言う。
「ああ…たぶん、元は鏡だっただろうモンが、無傷で残っていたからさ……年代不明で、スタンピードで滅んだって聞いて、よく破壊されずに、まんま残っていたなぁ~って思ったんだ」
「えっ…ええっ? 鏡?」
「ああ…たぶんそうじゃないかなぁ~っていうのが有っただけなんだけどな。すぐそこだから覗いていくか? まだ、夕飯の時間を準備するにはちょっと早いだろうし」
グレンの言葉に、セシリアは手を繋いだままのユナへと視線を向ける。
と、ユナも好奇心が刺激されたのか、尻尾を盛大に振っていた。
「ユナ、観に行ってみようか? グレンも居るし、危ないコトはないだろうから」
「うん、どんな鏡なのかなぁ?」
セシリアとユナの反応に、クスッと笑ったグレンが先導する。
「こっちだ」
グレンに先導されて、石造りの家に入る。
「規模としては、そこそこだと思うぞ。大きさから考えて、たぶん村長の家あたりじゃないかな? 石造りだから倒壊していなかったんだと思うが……窓とかは、何もないから元は木戸だったんじゃないかなぁ~…とは思うが………」
と、言いながら、扉の無い石造りの建物の中に進んで行くと、たしかに等身大の鏡らしきモノが鎮座していた。
「うわぁ~…リアお姉ちゃん…本当に鏡みたいのあるねぇ~……」
楽し気なユナに、セシリアも頷ていて白濁して本来の用途には使いようもなくなっている等身大の鏡をマジマジと見詰める。
あら…これ…もしかして磨けば、ちゃんと鏡になるかも………
作りはかなりしっかりしているけど……材料は何らかしら?
とっ、こういう時こそ、鑑定の魔道具によね
セシリアは無意識に耳飾りの鑑定魔道具を起動させる。
ピロ~ンッ………ピッピッピッ………
古い姿見の鏡 (サイズ特大・年代不明)
隠蔽されているが、複雑な空間魔法が付与されている
材料は不明 魔力を込めると起動する
曇っても魔力を入れるとすっきり綺麗になる優れモノ
普通の姿見としても使える
鑑定によって出た内容に、セシリアは首を傾げる。
えっ? 空間魔法が付与されている? ってどういうこと?
ラノベにそう言うのなにか無かったかしら? う~ん………
過去の映像でも視えるってコトかしら?
あと………ありそうな設定……って言ったら……収納かしらねぇ?
この腕輪やユナに渡しているマジックポーチみたいに、物を入れられるとか?
取り敢えず、魔力を流してみれば判るかしら?
なにより、魔力を入れるだけで綺麗になって、いちいち磨かなくていいって良いよね
複雑な空間魔法が付与されているなら、物置代わりに使えるかもだしね
なんといっても、このピアス型の鑑定魔道具って、その時々で微妙だし
空間魔法が付与されているだけで、何もないってコトもありだしね
だいたい、持ち主が知らないってコトだってあるだろうし………
この曇り具合をみると、そうとう年代経ってそうな気がするし
まずは、魔力を入れてみて、本当に姿見として役に立つかよねぇ~……
セシリアは、曇り切って白濁を通り越し、まだらな灰褐色にまでくすみきった鏡面に手の平をペタッとあてて、魔力を注ぎ入れている。
と、最初はなんの反応も示さなかったが、しばらくすると鏡面が細かく振動して、スゥーっとその色を変えて行く。
はぁ~……やっと反応した……って、本当にまだ機能が生きていたみたいね
いったい、どんな複雑な付与がされているのかしらねぇ?
あらあら…本当に鏡面がちゃんと鏡として役に立つくらい綺麗になったわね
などど、鏡面に手の平をあてたまま呑気に考えていたセシリアは、鏡面が起動終了をあらわすように、光り輝いた瞬間に、ガクンッと崩れ落ちる。
正確には、鏡面に手の平をあててちょっと寄りかかった状態だった為に、鏡面の硬度が消えたコトで前に転倒したのだ。
えっとぉ~………もしかして、空間魔法まで起動しちゃったってこと?
姿見に付与されていた空間魔法って、生き物も入れたりするの?
いったい、何時の時代に付与されたモノなのかしら?
今、現存している空間魔法が付与されたアイテムって、生物は入らないんだけど
マジックバックとかマジックポーチ、アイテムボックスも生き物は入らなかったはず
うわぁ~……もの凄くレアなモンを見付けちゃったってコトぉ~………
じゃなくて、この空間って……ちょっとした高位貴族の本宅並じゃない?
パッと観て、かなり空間が広いコトを見て取り、セシリアは双眸を閉じて耳を澄ませてみる。
が、誰かがいる気配とかは微塵も感じられなかった。
う~ん……探検してみたいけどぉ~……グレンとユナが心配しそう……
取り敢えず、後でゆっくりと探検すれば良いってコトで、戻らないと
さて、この空間に簡単に入れちゃったけど、出られるかしら?
そう思いながら、セシリアは無謀な探検などせずに、今転げ落ちるようにして入った背後を振り返る。
と、ソコには、姿見がちゃんと存在していた。
「はぁ~……よかったぁ~…姿見がちゃんとあるぅ…ふぇ~ん……」
取り敢えず、もう一回鏡面に手の平をあててみましょうか………
変な設定とかされていないんなら、たぶん普通に出られるはず
そう思いながら、セシリアは鏡面に手の平をあてるが、硬質な感触を感じる。
「え~とぉ~……あてただけじゃダメなら……さっきみたいに魔力を込めればいいのかしら?」
ひとりの寂しさから、思わず呟きながらセシリアは鏡面にあてた手の平から魔力を流してみる。
と、鏡面に何やら魔法陣が浮かぶが、それは見たことの無い類いのモノだった。
うぅぅ~……どういう魔法陣なのか…………って……あらあら……えぇ~…うそ
魔法陣の意味……というか……内容が…理解できちゃったんですけどぉぇ~……
って、うわぁ~…面倒くさぁ~……リセットされちゃっているのかぁ~……
はぁ~……持ち主登録をしないと出入りができない仕様なんだ
さっき入れちゃったのって、いわゆるバグみたいなモノのようね
でも、私用って登録すれば、出入り自由になるのね
フムフム……従魔契約や奴隷契約しているモノなら入れるんだ……ふ~ん
この姿見って、ブレスレット型のアイテムボックスに入れられるのかしら?
この空間に生き物が入って無ければ、出来そうな気がする
「じゃなくって…今は、グレンとユナのところに戻らないとね」
セシリアは、鏡面に浮かんだ魔法陣の内容をちゃんと読み取り、一度鏡面から手の平をはずす。
そして、左の手の平に、右の人差し指で読み取った魔法陣の鍵となる魔法陣を刻む。
その際に、右の人差し指の爪に魔力を高質化させ、左手の平の皮膚を傷付けて出血するように魔法陣を描くのだった。
よし…ちゃんと描けた……これを鏡面の魔法陣の中心に……ペタッ…とな
ソコだけ空間が空いて場所に左手の平をあてて、魔力を注ぎ込んだ。
その直後に、全総力の半分近くの魔力を吸い取られて、セシリアはへたり込む。
同時に、セシリアは姿見の外へとコロリンと入った時と同様に、転がり出たのだった。
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