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0069★どうやら、上手にソーセージが出来たようです
しおりを挟む祈ると同時に、祭壇に置かれた数々の料理が消え、時空神様が受け取ったのを確認し、セシリアはニコニコしながら言う。
「さぁ…私達もお夕飯を食べようねぇ…ソーセージも作ったから、食べてみて感想を聞かせてねぇ~……」
セシリアの言葉に、全員で食卓へと移動し、着席して『いただきます』をして、早速食べ始める。
全員が、まずソーセージに手を伸ばしたので、セシリアはそれぞれの特徴を説明する。
ドードー鳥の肉を混ぜて、やや淡泊めに作り上げたモノ。
サイガと名前不明の魔獣の肉をミックスさせたジューシーさを重視したモノ。
ピリ辛を狙って入れた砂漠鹿尾菜〔さばくひじき〕を混ぜ込んだモノ。
など、種類があるコトを皆に教える。
説明を受け、ソーセージをひと口食べたグレンは、お酒が欲しいと思わず口にしたほど、口にあったらしい。
「内臓を使った料理がこんなに美味いモンに化けるなんて思ってもみなかったよ。マジで美味いわ………エールが欲しくなるなぁ~………」
グレンの言葉、たまに人化して人の城下町に紛れ込んでいたルリも大きく頷く。
「たしかに、こんなに美味しいモンになるとは思わなかったよ。エール…呑みたいねぇ~……」
「エールは無いけど、ぶどう酒はあるから、飲んだら……どうせ、隠蔽結界が張られているんだから………今日は、もう移動するつもりないんだから………」
セシリアの言葉に、ルリは瞳をキラーンとさせて、いそいそとユナの側に移動してねだりにかかる。
そういう類いは、全部ユナのマジックポーチに収納されているので、勝手にくすねて呑むというコトはできないのだ。
ユナはセシリアに視線を向ける。
その視線を感じて、セシリアは許可の意味で頷く。
「もう…しょうがないねぇ…ルリお姉ちゃんは、はいどうぞ……グレンお兄ちゃんもね……ただし、2杯までだからね……飲みすぎはダメだよ」
そう言って、ユナはテーブルの上にぶどう酒の入った未開封の小壷をテンと置くのだった。
嬉しそうに封を外し、ルリはユナが差し出した柄杓でカップにぶどう酒を入れる。
ついでに、グレンの分もカップに注いでから、セシリアを振り返る。
「リアはどうする? ユナも飲むかい?」
セシリアは、ぶどう酒を呑みたいような気分じゃなかったので首を振る。
「私は良いわ……酸味〔さんみ〕の果汁に蜂蜜入れたのお湯割りして飲むから」
「リアお姉ちゃん、ユナもぶどう酒よりソレを飲んでみたい」
狐の獣人とはいえ、まだまだお子様なユナは、お酒よりも好奇心の方を優先させる。
「そう…なら、今作っちゃうね」
そう言って、セシリアは魔法でお湯をちょいちょいと作り、酸味〔さんみ〕の果汁に蜂蜜入れた、ホットレモネードもどきを作って、カップに入れる。
勿論、多めに作ったので、陶器の入れ物へと注いで、テーブルの上にテンと置く。
「ルリもグレンも興味あるなら飲んでみてね」
そう言いながら、セシリアはソーセージにかぶりつく。
うん……まぁ~こんなモンかなぁ……
この世界で最初に作ったモノとしては上出来かな?
そのうち、何処かに落ち着いて拠点とか持つようになれたら良いなぁ
そしたら、料理のスキルが高い奴隷を買って、料理を作ってもらおう
前世での私の料理の知識を教えて、試行錯誤してもらいたいなぁ~…
こうやって、自分で作るのも良いけど、結構面倒なのよねぇ
前世の私って、女子力ってヤツ…だいぶ低かったから………
いや、炊事洗濯とかはそこそこだったけどね
買って済ませる余裕のある時は買い食いもしてたし
はぁ~…私って、前世…どうして死んだのかなぁ?
まぁ…たとえどうやって死んだかを知っても、変わりはないけどね
私みたいに、前世の知識を持った人って他にいるのかなぁ?
そんなコトを考えつつ、セシリアは二種類のコロッケを食べ比べてみる。
う~ん……肉じゃがコロッケは、やっぱり甘めだね
ポテトサラダの方は……うん…まぁこういう味になるよね
はぁ~…中農ソースが欲しいわぁ~……
マヨネーズもどきはわりと簡単に作れたけどねぇ
ソース系は手間暇かかるからねぇ……
一応、作る為の知識はあるけどねぇ~……はぁ~……
なまじ、前世で食べていたモノを思い出しただけにつらいわ
サラダのドレッシングだって豊富だったしねぇ
ああ、コンビニのサラダパックが懐かしいわ
ちょっと野菜不足を補うために、ツナ入りとかコーン入り良く買ったなぁ~…
海藻サラダなんかも……ただ、時間が悪いと無いコトも結構あったけど
残業で遅くなると…お弁当もお惣菜も綺麗に無くて、泣いたっけ
トリカラや甘辛の照り焼きチキンなども口に運びながら、セシリアは前世に思いをはせては、こころの中だけで溜め息を吐く。
あぁ~…メーカーモノのウインナーとか食べたいなぁ~
いや、まぁ…これはこれで、たしかに美味しいんだけどねぇ
う~ん……今度は、チーズ入りも作ってみようかなぁ
プリッとしたソーセージを味わいつつ、セシリアは改良の余地ありと思う。
そんなセシリアの気持ちを知らないルリとグレンは、エール片手にソーセージを食べ比べて嬉々としていた。
あぁ~…なんか眠くなって来たかも……食べたら眠くなったわ
流石に、あの姿見の中に転がり入ったのは精神的に疲れたみたいねぇ
って、あとで検証しないとねぇ………って、ああ、ダメだわ
まだ、楽しそうに食べているルリとグレンとユナに、セシリアは声をかける。
「ごちそうさまぁ~……っ……ごめん…なんかもの凄く眠いから……先に馬車に入っているねぇ~………」
といって、フラリッと椅子から立ち上がり、セシリアは馬車の中へとはいる為に歩き出す。
「「リア?」」
「リアお姉ちゃん……」
ルリとグレンの声が重なり、ユナも心配そうに声をかけるが、セシリアは手を振って言う。
「あぁ~…平気…たんに眠いだけだから……お腹いっぱいまで食べてぇ~……お休みぃ~……」
と言って、危なげない足取りで馬車の中に入るのだった。
あははは………ちびっこ達も寝ているのねぇ~…可愛いわぁ~……
もふもふがコロコロと転がって……お腹丸出しで……ふぁ~…ダメぇ~……
もう…意識が途切れそう……なんでこんなに急に眠気が来るのぉ………
眠気と戦いながら、編み上げブーツを何とか脱ぎ捨てて、楽な服へと着替えてレオ達を起こさないように、ラグの上へと滑り込むセシリアだった。
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