悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

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0098★やっぱりシャドウハウンド達は、飼われていた子達のようです

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 ルリからのお許しがもらえたので、私は御者台から下りて、腕輪型のアイテムボックスから内臓その他が入った壷をドンドンと出す。
 と、その隣りでは、同じように内臓などが入っている壷と共に、タライを四つほど出していた。

 お腹を出して転がっていたシャドウハウンド達は、セシリアとユナが動いた瞬間に、ガバッと起き上がり、ササササッと整列して、スタッとお座りをして待つ体制になる。

 ふふふふ………やっぱり、このシャドウハウンド達って、防衛の為に飼われていた子達なのねぇ
 ご飯の準備したら、ちゃ~んと…お座りして待つんだもの……
 数は十二頭なのねぇ………ちょうど一ダースってところかしら?

 グレンは、壷の中身を四つのタライに均等に分けて行く。
 セシリアとユナが出した壷の中身を分け終える。

 グレンが内臓その他を分けたのを確認し、セシリアは壷を魔法で水洗いする。
 そんなセシリアを見て、ユナは大きなタライを用意する。

 セシリアはユナが用意してくれたので、壷を洗った洗い水を、そこに入れる。
 勿論、全部の壷を洗い、温風で乾かしてしまうまで完了する。

 その間、シャドウハウンド達は、ヨダレを垂らしつつも、整然と我慢して待っていた。
 空腹の極致でも、いじらしくも我慢しているシャドウハウンド達に、グレンが軽く頭を叩いて命令する。

 「お前とお前とお前は、あの一番端のタライだ」

 グレンの指示を受け、三頭のシャドウハウンド達は、示されたソコに行き、スタッと座る。
 その間に、次の三頭の頭を軽く叩いて、二番目のタライを指さして、命令する。

 十二頭が餌の配置に付いたところで、グレンがセシリアへと視線を振る。
 セシリアもその意味がわかったので、頷いて言う。

 「はぁ~い…みんな食べて良いわよぉ~…ヨシッ」

 強い口調でセシリアが許可を出せば、とても飢餓状態とは思えない程、仲良くおとなしく食べ始める。
 シャドウハウンド達は、ご飯で争うコトなどしなかった。

 ちなみに、ルリやユナが口も声も手も出さなかったのは、犬笛で正気に戻ったシャドウハウンド達を脅かさない為だった。
 見た目がどうであれ、ユナは神獣で、ルリは災害級の魔獣だからだった。

 そういう意味で、シャドウハウンド達に危機感を覚えさせない、普通の人族であるグレンが、餌の用意をしたのだった。
 一心不乱に用意された内臓その他を食べたシャドウハウンド達は、喉が渇いているらしく、セシリア達を窺いつつ、壷を洗った水を飲み始めた。

 そんな様子を眺めつつ、ルリがセシリアに問い掛ける。

 「どうするんだい? このシャドウハウンド達」

 ルリの問いかけに、セシリアは小首を傾げながら答える。

 「どうするんだい? って? この子達しだいかなぁ? 私達の後に付いて来れるなら、ご飯ぐらいあげるけどぉ……でも、その子達って、この古代遺跡の防衛用に飼われている子達でしょ……ここから連れ出せるのかなぁ? 飼い主はどうしているんだろう」

 セシリアの言葉に、グレンも首を傾げ、あごを撫でながら言う。

 「たしかになぁ……この古代遺跡から出られるかどうかは、わからないよなぁ……下手に外に出たら、討伐対象になる可能性もあるしな……だいいちに、錬金術師に改悪されている可能性もあるからな」

 たっぷりのご飯と水を飲み終わり、その辺でコロコロとし始めたシャドウハウンド達を見て、セシリアも悩む。
 さて、この後どうしようと悩んでいる間に、グレンは残った水をひとつにして、軍馬達へと持って行く。

 軍馬達は、シャドウハウンド達が飲んだ水だと、嫌がるかと思えば、そんなコト気にしませんと、先を争って、綺麗さっぱりと飲み干していた。
 飲み終わったところで、テテテテッとユナがグレンの元に行き、その大きなタライを受け取って、セシリアがしたように温風で乾かして、マジックポーチへとしまう。

 ほんの三十分ほど休憩した後、何故かシャドウハウンド達は軍馬達の馬車を囲むように前後左右に別れてる。
 そして、軍馬達の前に陣取った、たぶんリーダーがワウッと一声吼える。

 「あはは……警護してくれるみたいね……それじゃ、出発しようか」

 能天気なセシリアの言葉に、グレンもルリも肩を竦める。

 「そうだね、それじゃ出発しようか」

 「了解、害意がないならそれで良いんじゃないかな」

 ユナは、ユナでセシリアの腰に抱きついて笑う。

 「それじゃ、リアお姉ちゃん…出発の合図してぇ~……」

 愛らしいユナの言葉に、セシリアもクスっと笑って言う。

 「そうね……それじゃぁ~……出発ぅ~……」

 その声にあわせて、リーダーがひと吼えすると、左右と後ろから吠え声が返り、ゆっくりと走り始める。
 軍馬達は、怯えるコトもせずに、その後に続いた。

 勿論、たっぷり食べて飲んだので、シャドウハウンド達もとてもゆっくりとした移動なので、セシリア達は外壁を観察するコトが出来たのは言うまでもない。

 しばらくは、なぁ~んにもなかったのだが、シャドウハウンド達のお腹がこなれた頃、見たこともないような植物系の魔物が現われた。
 そう、外周道路のど真ん中にデデェーンと大樹のようなモノが居たのだ。

 ただし、一目で魔物と判別できる姿で。
 何故なら、根っこが石畳などにめり込むコトなく、ウゴウゴと蠢いてゆっくりとだが、確実に移動をしていたからだ。

 勿論、本来は枝だろうそれは、触手のような蔓状のモノで、やはりザワザワと蠢いていた。
 そして、太いが背丈の短い幹の頂点の中央には、どうも蕾みらしいモノがあった。

 あの状態だけ見ていると、ぶっとい幹の上に牡丹の蕾みが乗っているみたいね
 ただし、ものすごく大きな花を咲かせそうね
 幹の太さよりかなりはみ出しているモノ

 気を付けないと、花粉とかで攻撃されるかも知れないわね
 ゲームとかに出て来る植物系の魔物の攻撃って………
 触手や匂いに、電撃での麻痺攻撃とかだった気がする

 「グレンっ…シャドウハウンド達に距離とるように指示してっ……あの触手に捕まったら食べられちゃうっ………」

 セシリアの指示に、グレンは奴隷に堕ちる前に所属していた、軍部で使っていた魔キタ犬に使っていた特殊な声音で命令する。

 「サガレッ……警戒待機ッ……触手…避ケロ………」

 その命令に従って、シャドウハウンドは、ザザッと植物系魔物との距離を取り、警戒しながら取り囲んで待機する。

 「どうやら、俺が奴隷になる前に居た場所で使っていた声が効くみたいです」

 「うん…そうみたいだねぇ………グレンの出身国って…もしかしたら、この古代遺跡から出ていった人が作った国だったのかもしれないね」

 「ああ……その可能性は少なくないな……少なくても、周辺国だったのだろう」

 「だから、原型を残しているのかもしれないね……あとで、どんな国が教えてね……いつか、行ってみたいし………」










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