109 / 173
0108★熊型魔獣はみんなで分配
しおりを挟むリアが全頭の頭を撫でて、怪我を癒したシャドウハウンドとユナのところに戻ったところに、暴れてすっきりしたルリが戻って来た。
勿論、獲物として、討伐した熊型魔獣を軽々と背負って来たコトは言うまでもない。
馬車に張った結界ギリギリまで熊型魔獣を運んだルリは、一瞬で半獣人と化して、ルンルンでリアの元に戻る。
当然、リアに懐いていたシャドウハウンド達は、スススゥーっとさがって、耳を寝かせて尻尾は股間に隠し、ほぼ全頭が伏せをして動かなくなる。
「ただいまリア、あの熊こうは討伐したよ……消えなかったから、この『ダンジョン』で生成された魔獣じゃないのかもねぇ………アタシャ…てっきりここの『ダンジョン』の防衛のひとつとして、アタシ達のところに送られたと思ったんだけどねぇ………」
ルリの言葉に、ユナと一緒に治癒魔法を掛けたシャドウハウンドを撫でていたリアは首を傾げる。
えぇ~とぉ……それって、やっぱりおかしいってコトだよね
もしかして、なんか空間に歪みがあるってコトと違う?
まぁ~…元龍帝陛下の第三の瞳なんてモノが封印されて在ったぐらいだしねぇ
「それって、単なる空間の歪みで、どこか別のところから来たってこと?」
あのトレント亜種? だって、ちょっとどころか、かなりおかしかったみたいだし
この古代遺跡の外周道路周辺に、ポコポコと落ちて来るのは困るわねぇ
ただ、吸収されないからって、外からっていうのはちょっと微妙よねぇ
可能性としては、大量流出のスタンピードではないけと、個体流出かなぁ?
この外周道路がその境目なのかもしれないわねぇ………
だから、外周道路の外側だと、倒しても消えないで全部残るのかもしれないわね
リアの言葉に、ちょっと考えるフリをしてから、ルリは考えるコトを放棄して型を竦める。
「ああ、たぶんそうじゃないかなってだけだけどね…可能性のひとつだね……ドロップもしないで、まんまだったんでね……ところで、あの熊型の魔獣、どうする?」
ルリの言葉に、リアは首をウリウリと何度も傾げる。
ふむ…確かに、ドロップじゃなくてまんまなんだよねぇ
じゃなくて、どうしようかなぁ?
毛皮とかを引っぺがすとして………他に使い道はあるかしら?
「あの熊型魔獣……毛皮以外に使えそうなところあるのかしら? 熊っていうと、毛皮と熊肉と熊の胆ぐらいしか思い付かないんだけど」
リアの言葉に、グレンが提案する。
「だったら、それだけ回収して、残りはシャドウハウンド達にでも食べさせちまうか? 俺、熊肉はあまり好きじゃないんだよなぁ……クセがあるからさぁ………」
グレンの言葉に、ルリも賛成する。
「アタシもあんまり食べたいって思えないねぇ~………首ちょんぱした頭と、毛皮に熊の胆と魔石だけで良いんじゃないかな?」
グレンに賛成というルリに、ユナが手をあげて言う。
「はいはい……ナナちゃん達と軍馬ちゃん達にも、お肉のおすそ分けした方が良いと思う………ほら、ちょっと恨めしそうな瞳しているから……シャドウハウンド達ばかりズルいって訴えているから………」
ユナの言葉で、リアは軍馬達を振り返ると、期待を込めた瞳にぶち当たる。
あららら………そう言えば、この世界の馬って、雑食で肉も食べるんだったっけ
前世の馬達みたいに、デリケートじゃなかったわ
それじゃ、それはルリとグレンにお任せしちゃおう
「そう…なら、グレン、ルリ、悪いけど、適量で満遍なく分けてあげてくれる………私も、熊肉を食べる気ないから………」
リアの言葉に、グレンとルリが頷く。
「ああ……了解」
「わかったよ、リア」
グレンとルリは、すぐさま結界外へと向かいながら、冒険者ギルドで買い取りしてくれる、牙や角、心臓や熊の胆などの希少部位をまず取るコトで合意する。
そして、リアの隣りで自分達を見ているユナに、グレンは振り返って声をかける。
「ユナ、マジックポーチにしまうモノもあるから来てくれ」
同じように振り返ったルリは、リアに注意をする。
「リアは、御者台に戻ってな」
ルリの言葉に、リアは肩を竦めて、いそいそと御者台へと戻る。
ユナは、タタッとグレンとルリのもとへと向かう。
言うだけ言った2人は、さっさと結界外に置き去りにした熊型魔獣へと向かう。
そこまでの距離がある訳ではないので、さっさとデデーンと転がっている熊型魔獣を転がした場所に到着する。
そして、ユナがほんの少し遅れて到着すると、さっさと首をザシュッと一撃で切り落とす。
ちなみに首を切り落としたのは、グレンである。
「う~ん…ちょっとこの剣だとこういうの切るには合わないなぁ………後で、解体用の一本……いや、予備込みで三本ぐらい用意しないとなぁ………」
などと言いながら、熊型魔獣の解体を始める。
勿論、血液も色々な用途に使えるので、ユナが上手に壷へと詰め込んで居たりする。
切り落とされた首を、次の瞬間ちゃんと回収しているユナである。
そんな様子をぼぉ~っと見物しながら、リアは首を傾げていた。
えっとぉ~…冒険…というか…洞窟…その先の古代遺跡の探索ってこんなもんなの?
前世知識だと、もっとこう『ダンジョン』とか『迷宮』とか呼ばれ場所って大変だった気がするんだけど?
戦力を考えるとオーバーキルなんじゃないかしら?
まぁ…安全に、楽しめるならなんでも良いんだけどね
自分から危ないところに近付くつもりは無いんだけどねぇ
なんでか、気が付くと巻き込まれているのよねぇ……はぁ~…
こういうの、強制力って言うのかしらねぇ?
まぁ…称号に、厄介な『ヒロイン枠に、大きく踏み入りし者』なんてのあったし
予定調和的に、そういうイベントに持っていかれるのは御免なんだけどなぁ
だからって、見て見ぬふりできるほど、冷徹なつもりないから………
ここは、私に出来ることはするけど、無理はしないでいくしかないわよねぇ
そんなコトを考えてい居る間に、さっさと解体に腑分けまでして、冒険者ギルドに買い取りに出すモノと、エサになるモノを分けて、さっさと分配を始めるのを見て、リアは慌てて姿見を出して、ナナ達全員を出す。
ご機嫌で出て来たナナ用の器に、熊肉その他を入れて、ササッとグレンが配って行く。
勿論、子供達用にそれぞれ、子ウクダ達用、レオ用、グリ用と分配する。
軍馬達には、ルリがひょいひょいと器を運んでいた。
シャドウハウンド達は、最初の時と同様に、三頭でひとつの器で与えられていた。
きちんと分配が終わるまで、軍馬からグリまで、ちゃんとお座りしてリアの許可の号令を、ヨダレを垂らしながら我慢して待っていた。
「リア、こっちは分配終わった」
「おう、俺の方も終わった」
「ユナも配り終わったよ」
三人からの言葉に、リアはクスッと小さく笑う。
「はぁ~い、みんなおまたせぇ~…食べて良いよぉ~……OKだよぉ」
リアの許可の言葉に、みんな一斉に食べ始めるのだった。
38
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる