悪役令嬢?当て馬?モブ?

ブラックベリィ

文字の大きさ
116 / 173

0115★お掃除スライムをゲット

しおりを挟む


 全ての培養ポッドに魔力を入れられるだけ注ぎ込んだリアは、後ろ髪を引かれつつも、この洞窟の奥にある古代遺跡のゲート監視を担う管理室らしい部屋を出るコトにした。
 勿論、ちゃっかりとお掃除スライムは取り出して連れて来たコトは言うまでもない。

 足りなかったお掃除スライムの核となる魔石を投入し、魔力を流し入れて、培養ポッドの中の個体から分離させた、小さなお掃除スライムだったりする。
 勿論、本体は核の無い状態で、いまだに培養ポッドの中にぷっかりと浮かんでいる。

 その本体から分離させたお掃除スライムは、リアの掌に乗る程度の大きさでしかなかった。
 リアがアポーツ(小規模物体移動)で、核ナシで培養されているお掃除スライムに核となるモノ(魔石)を与えて、分離して作った子だけにかなり小さいのだ。

 更に言えば、培養液の中に浮かんでいただけに、ほとんど透明に近い水色で、リアが与えた核となる魔石が透けて見えている状態だった。
 その小さなお掃除スライムを肩に乗せて、ご機嫌なリアだった。

 まだ意思疎通は出来ないものの、魔石を与え、魔力を流し入れて分離させたのがリアだと本能で理解っているらしく、培養液の中からアポーツで取り出されても、おとなしいままだった。

 そして、なによりもルリ達が許容した理由は、リアの意思にちゃんと反応して居るコトだった。
 リアは、正しく育てていけば、いずれは会話も出来るのではないかと、期待していたりする。

 勿論、スライムを分離して連れて行くというコトに反対したルリやグレンだったが、リアがちょっと赤面しつつ、おトイレ事情とかを説明して、納得してもらったのだ。
 いちいち、外で穴を掘って、用足しして埋めるという作業が………というコトを説明したのだ。

 だって、お腹とか壊したら…臭うし…いちいち穴を掘って埋めてが必要ないし
 ふふふふ……姿見の中に、そういう空間を作って、前世の快適なおトイレよ
 その為のお掃除スライムもゲットしたもの……

 ああ…これでやっと、落ち着いておトイレに入れるわぁ~…
 めっちゃ、嬉しいよ、本当にね
 これで、気分は鳥になれ(一瞬でぴっと出して立ち去る)しなくて済むわ

 そういう意味では、学院や神殿や王宮は、それなりだったけどね
 やっぱり、前世を思い出しちゃうとツライのよ
 なまじ、生活環境が一般市民でも現在の王侯貴族以上に良かったから………

 前世の快適空間での生活を懐かしむリアは、自重というモノをポイッと捨てるコトにしたのである。

 ふふふふ………この管理室から持ち出すの、ちょっとは躊躇ったけど、良いよね
 乙女ゲームに、ここの古代遺跡のイベントが組み込まれているとおもうし
 そしたら、どうやったって巻き込まれるだろうしね

 あの断罪、婚約破棄、身分剥奪、国外追放された時から始まっていたのかもなぁ
 砂漠で襲って来た魔獣の囮にされるのも、地下の古代遺跡の探索や神殿に到達するのも
 世界樹の呪根(じゅこん)に囚われし龍帝陛下もイベントかもしれない

 なにより、この踏破不能の超が付くような古代遺跡をルリが見付けたコトもおかしいし
 私が自重しようがしなかろうが、巻き込まれはほぼ確定事項だもの
 だったら、私は自分の為の快適生活を躊躇(ためら)わないわよ
 
 それにヒロイン枠に踏み入っちゃっているなら、いずれは敵キャラと遭遇するだろうし
 私にはグレンが居るから、他の攻略キャラはいらないから会いたくないなぁ
 あとは、前世持ちの『私は愛されヒロインよ』なんて敵キャラ居ないといいなぁ

 そんなコトを考えながら、リアはナナの先導で、入って来た入口や奥へと続く洞窟に出る。
 と、その背後でシュッという微かな音が響くと同時に、普通の洞窟の壁に戻っていた。

 「はぁ~……本当に、奥の古代遺跡にしろ、この壁の奥にある管理施設にしろ……謎が多過ぎるわよねぇ………いずれ、もう何度か来るコトになるかも知れないわねぇ」

 少なくとも、もう一度ここに来て、今度は古代遺跡の中まで入りたいわ
 それに、この壁の奥の管理室の培養ポッドの中の子達も育てたいし
 なにより、神代語を何とか習得したいわねぇ

 何処に行ったら、神代語を身に付けられるかしら?
 それにしても、ナナって不思議な子よねぇ………
 こんなところに、何かあるって見付けるんだから……ん?

 そう思ってリアは側に居るナナを振り返り、その口の中に何かを銜えているコトに気付く。

 「ナナ? 何を口に入れているの?」

 ちょっとモゴモゴしていたナナは、リアの手に鼻先をちょんちょんして見せる。

 「えっと……なに?」

 ナナの要求が判らなくて小首を傾げるリアに、ユナが言う。

 「リアお姉ちゃんに良いモノあげるって……両掌を出してって言っているよ」

 ユナの言葉に、リアは首を傾げつつも言われた通り両手をナナの前に、掌を上にして差し出す。
 と、ナナはリアの掌の上に、ペッと口の中に入れていたモノを吐き出す。

 ただ不思議なコトに、口に入れていたハズなのに唾液とかは一切付いていなかった。
 そして、ナナが口から出したモノは、綺麗で精緻な細工が施された腕輪だった。

 「あら……腕輪? こんなモノ、どこにあったのかしら?」

 と不思議そうにリアが呟いたのとほぼ同時に、ナナが口から出した腕輪はポォ~っと光り輝いて、腕輪型アイテムボックスとは反対側の手首に、勝手に嵌まっていた。

 「えっ?」

 うっそぉ~……って、第三の瞳に続いて、勝手に私の手首に嵌まるのって………
 いや……そうよね……ここって、錬金術師が拠点にしていたらしい遺跡だものね
 人工的に創造されたホムンクルスみたいに、物にも意思があるのかもしれないわね

 前世にだって、そういう意味合いに近い物の怪がいるって話しあるしね
 針供養やクジラ供養…は、ちょっとちがうかな……じゃなくて
 長く使用したモノには、付喪神(つくもがみ)が憑くなんていう話しもあるくらいだし

 それって、ある種の精霊信仰みたいなものだものね
 前世の私が生きていた日本という国は、陛下を巫覡とした宗教国家のようなものだもの
 新年に、陛下が国土や国民の安寧を祈る儀式を、毎年欠かさず行っている国だもの

 それを考えると、前世の世界での母国は、超最先端技術の最前線を突き進んでいた
 それでいて、自然崇拝を尊ぶ古代国家のままなのよねぇ~……
 八百万神(やおよろずのかみ)を尊ぶ国民性だったものねぇ

 モノには命が宿る、自然の現象にも、世界の理(ことわり)が存在する
 そういう考えを基にした多神教国家だったものねぇ
 じゃなくて、コレ(腕輪)は錬金術師が作ったモノなんでしょうねぇ

 前世で言うところの、AIみたいなモノが組み込まれていてもおかしくないしね
 適合者が居たら、そのモノの有無にかかわらず、自動的に管理者任命されるかも
 私の場合は、魔力を流し入れたコトで、適性有りってコトになったのかもしれないわね

 リアは、腕に勝手に自分の手首に嵌まった腕輪を見て溜め息を吐く。
 が、ルリやグレンはそれどころではなく、慌てて警戒の言葉を口にする。

 「リア、大丈夫かい? ソレ、今勝手にリアの手首に嵌まったよね」

 「リア、体調はどうだっ? 痛いとか? 気持ち悪いとか? 目眩がするとか? そういうのは感じないか?」

 わたわたする二人に、リアは肩を竦める。

 『…………管理……登録……完了………』

 と、いう声とも違うモノが脳裏を走ったコトで、リアはソレが何か理解し、思わず溜め息を吐いてしまった。













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~ 

志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。 けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。 そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。 ‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。 「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

余命半年のはずが?異世界生活始めます

ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明… 不運が重なり、途方に暮れていると… 確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...