137 / 173
0136★ジャンボモアの卵をゲット
しおりを挟むリアは、空中に浮かせたままにしてある、水晶球に封印した蟲毒虫(見掛けは、触手が無数に生えたマダニ)をマジマジと見て、眉をひそめる。
この姿…大きさは全然こっちの方が数百倍も大きいけど、見れば見るほどだわぁ~……
前世の実家のお隣で飼っていた、大型犬のタロちゃんの耳元に張り付いていたのにそっくりだわ
でも、ここには専用の殺虫薬とか無いんだろうなぁ……はぁ~……
それに、コレ(蟲毒虫)って人工的につくられたモノかもしれないのよねぇ
特に、前世の知識からすると、蟲毒ってアレよねぇ~……
色々な毒虫とかを集めて、ひとつの壷の中に入れて生き残った一匹とか言うヤツ
前世知識を持った前世持ちか……もしかしたら、異世界転移者とか………
そういう者が、持ち込んだ邪悪な知識から作られたモノかもしれないわね
だいたい、錬金術師が巣食って居たらしい、謎の超古代遺跡なんてモノが存在していたしねぇ………
下手をしたら、あの惨状(結局は、外観だけで中身は見れなかったけど)は、神の鉄槌を受けたセイかもだし
そうじゃなくても、錬金術師の他にも、呪術師なんてモノもいるようだしねぇ
私に、靈石を埋め込んだのも、よくは覚えてないけど、呪術師だったみたいだし
グレンやルリの魂と身体の交換なんて悍ましいコトしたのも、呪術師だったようだし
なんか、ここのところ呪術師ってワードが多いわねぇ………はぁ~………
かかわり合いになんてなりたくはないけど、私達に害意を持つなら撃退するわよ
そんなコトを考えつつ、リアは悍ましい蟲毒虫が入った水晶球をクルクルと回して、何か見て取れないかと悩む。
が、もともとそういう類いが嫌いなリアは、右掌の上に浮かぶ水晶球の中身に、流石に気分が悪くなって、手首のアイテムボックスに収納する。
「ダメ……なんか…気持ち悪くなったわ……はぁ~……流石に、気持ち悪いわぁ~……マダニってだけで……うっ……ミント系の飲み物でも欲しいくらいだわ」
リアが水晶球に封印した蟲毒虫とにらめっこしている間に、レイニーは身づくろいを済ませて戻って来ていた。
グレンはグレンで、リアが欲しいと言ったモノを物々交換していた。
ルリはルリで、グレンやユナが物々交換などの交渉をしている間、リアを狙うモノが現われたりしないか警戒していた。
リア自身は全然気付いていなかったが、たった今やったコトは、ある種の聖女と呼ばれてもおかしくない行為だったのだ。
それも、自身の能力を補助する小道具も薬草類や触媒となる魔道具も無しに、自身の持つ能力だけで、最終段階にまで変異した蟲毒虫を難なく取り除き、被害者を癒し救ったのだから、その能力は驚異的といえよう。
それも、素肌に取り付いた蟲毒虫ではなく、体内に巣食って、触手という根を被害者の全身へと張り巡らせている蟲毒虫を取り除いたのだから、奇跡扱いになるコトは必定だったりする。
これもリアの知らないコトだが、呪術師が作り上げた蟲毒虫は、通常は外皮に張り付いて、宿主に浸食していくモノなのだ。
主に首筋や背中、又は手足などに吸い着き、リアが無理矢理に魔力障壁で縮めた触手をでもって、ジワジワと浸食していくものなのだ。
触手という根が浸食した場所は、だから切り捨てるしか無くなるのだ。
ある種の毒と一緒なのだが、解毒できない類いなので、切除するしかないのだ。
今は廃れているが、呪術師が作る蟲毒虫というモノは、一時期は情報を取る為の拷問用の道具として徴用されていた時期があった。
そして今もなお、裏社会では、それが脈々と受け継がれ、存在しているのも確かなコトだった。
いつだって、権力者の欲望は尽きるコトなく、そういう後ろ暗い者達の懐(ふところ)と探求心を潤す糧(かて)となっていた。
そんな、ちょっとやそっとの力を持つ者には手に負えないようなモノ(最終段階に入った蟲毒虫)を、リアは気軽にレイニーから引っぺがし、封印してアイテムボックスに収納してしまったのだ。
見る者のが視れば、誰の作品で、どういう呪力が込められたかを知るコトも出来る、生きた確たる証拠が、リアの手首に納められてしまったのだ。
勿論、そういうモノ(蟲毒虫)の経過観察するモノもちゃんと存在しているのだが、リアに手を伸ばすコトなど到底無理だったりする。
また、リアの凄さを見てしまった、監視役のモノは、リアに魅せられてしまい、自分の飼い主を、ポイッとしたコトは、リアの預かり知らないコトだった。
「はい…リアお姉ちゃん…お水……レモネの果汁を搾ったの入れたから…すっきりするよぉ……酸味〔さんみ〕の実と違って、こっちは飲みやすいんだよぉ……」
「あっ…ありがとう…ユナ……流石に…ちょっと……いや…かなり…気持ち悪かったから……それに、喉が渇いちゃったわ」
封印した蟲毒虫を手首のアイテムボックスに収納したリアは、ユナが差し出す冷たい水を受け取り、思わずクイっと一息で飲んでしまう。
あら…本当に美味しいわ……うん…こっちのがマイルドな感じね
酸味〔さんみ〕の実の方は、前世で使っていたお酢に近い味だものね
物々交換で手に入れてくれたのかなぁ~……ああ…喉もすっきりするわねぇ
「はぁ~……美味しいぃ~……ありがとうユナ……ってコトで、もう一杯頼めるかな?」
「うん」
嬉々として魔法で冷水を出し、レモネと呼ばれる果汁を入れてリアに差し出すユナは、にこにこと楽しそうにしていた。
が、そんなモノを見れば、顔を出すのがナナである。
ユナが果汁を搾ったレモネをパクッと口に銜えて、もしゃもしゃと食べてしまう。
が、やはりナナでも酸っぱいらしく、ちょっとしかめっ面をしていたりする。
「ふふふふ………ナナってば、そのまま食べちゃったのねぇ…酸味〔さんみ〕の実とは違うけど酸っぱかったでしょ……はい…お水ね」
と、リアはクスクス笑いながら、ナナの前に水球を作って出す。
ただし、ナナは野生っ子だったので、リアはちょっと冷たいかな?程度の汲みたての井戸水ぐらいで出して上げていた。
眼前に浮かんだ水球に、ナナは嬉しそうに口を付けてちゅぅ~っと吸い込むようにしてコクコクと水を飲む。
そう、リアは無自覚に、ナナにお水を与えていた。
ただ、そこで休憩の為に停泊している者達にとっては、かなり目に毒なコトだった。
砂漠の大街道を渡っている最中なので、持ち歩ける水にも限度量がある為、みんながみんな、ほぼ節水で制限して飲んでいるのだ。
勿論、ナナのお乳を余分に買い込んだ伯爵令嬢だって、例外ではなかったりする。
どうしたって、ある程度は我慢しなければならないのだ。
が、ナナはリアから気軽に飲みたいだけお水を飲み、貴重な果実も食べていたのだ。
だから、そこに集まった者達は納得する。
ナナが豊富にお乳を出すのは、リアという飼い主が居て、好きなだけ水分や食べ物を与えられているからだと。
それだけに、中には自分もリアに飼われたいと思うモノが、出て来てもしょうがないコトだった。
「リアお姉ちゃん…ローストビーフ、スライスしたの塊り肉を2つ分と、ソーセージを一袋(革袋小)と、フライドポテト一袋分(冒険者の持っていた小鍋に入れた)に、ミルクとチーズたっぷりのシチューを小鍋いっぱい(冒険者の持っていた別の小鍋に入れた)と、ハンバーグ10個出したよ……あとは、グレンお兄ちゃんが交渉してた」
ユナの言葉に、リアは頷く。
「そう、ジャンボモアの卵も交換してもらえたかしら?」
リアの言葉に、ユナが答える。
「大丈夫だよぉ~…オルトさんが、レイニーさんを馬車に運んだあと、グレンお兄ちゃんにジャンボモアの卵を手渡していたから………6つ…この中(マジックポーチ)に入ってるよぉ………うふふふ……また…プリン作って欲しいなぁ~…甘くてツルッとして美味しいのぉ~……」
うっとりするユナに、クスッと笑ってルリを振り返れば、ルリもちょっと舌なめずりしていた。
勿論、慌てて手で口元を隠したが、アイスクリームとセットにしたプリンアラモードのコトを思い出したらしい。
「うん…それじゃ……馬車に戻ったら、早速作って食べようか………グレン…終わった?」
側にグレンの気配が戻ったコトで、リアは振り返って聞く。
「ああ……お礼も込みで……結構、色々なモノと交換できたぞ……」
「そうなんだ……それじゃ…そろそろ………って…あっ……ナナっ……」
40
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした
まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」
王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。
大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。
おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。
ワシの怒りに火がついた。
ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。
乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!!
※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる