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021★俺の言葉通じているけど、意思疎通は皆無
しおりを挟む翼龍は上機嫌にそう俺に言って、誕生したての我が子の回りをくるくると舞って、高速言語と共に愛情を注いだ後、あっさりと昇華してしまった。
あちらの世界では見慣れたモノだったので、俺は翼龍がちゃんと昇華出来たコトにホッとする。
ほんと、あの翼龍が、ダンジョンに摂り込まれずにすんで良かったわ
にしても……この子どうしよう(困)
いや、ペット枠で飼うのも良いかもだけど………
翼龍なんてファンタジー生物の雛の育て方なんて、わからないんですけどぉ~
まず、たぶんに、この翼龍の雛には、まだまだ【魔力】が必要だろう
となると、しばらくは俺の血を与えないとダメだろうなぁ
当座は、小さいから俺の生き血でも間に合うだろうけど
何時まで俺の血が必要かも、全然分からないんだよなぁ
「あぎゃきゃぁ~…あぎゃあぎゃ……」
何が楽しいのか、翼龍の雛は俺を見上げて鳴く。
けして嫌がっている鳴きではないので、取り敢えず俺は翼龍の雛を腕に抱き上げて、周囲を見回す。
まずは、俺の現在地だな
だいぶ落下したってコトで、かなりダンジョンコアの近くに居るんじゃないかな
このダンジョンの性質は、性悪っぽいんだよなぁ
トラップなんかもいやらしい感じだったし
いっそ、このダンジョンのダンジョンコアを探して、破壊しちゃうかぁ?
ちょっとそんなコトを考えたら、新たな地響きが連続して起こる。
俺はそれに溜め息を吐きつつ、周囲を見回す。
と、あの翼龍が座していたすぐ傍に、ひとまわり小ぶりな亡骸が存在していた。
それが、あの翼龍の番か何かだろうと勝手に判断する。
実際のところはどうか知れないが、きっと番だったんだろうなぁ
ただ、あの翼龍は、既に自分と卵のコトだけで手一杯だったみたいだけど
きっと、ダンジョンに捕らわれないように、隠して守っていたんだろうなぁ
このまま放置して、下手にダンジョンに摂り込まれて、使われたら可哀想だ
こっちの宗教なんてわからないからなぁ…取り敢えず南無阿弥陀仏
ってところで、これも回収しとこう
俺がこころの中でそう唱えた途端に、ふわりっと翼龍から何かが浮かび上がる。
『嗚呼…我等の卵が孵ったのだな……ありがとう…稀人よ』
その言葉で、やはりあの翼龍の番だったと納得する。
同時に、置いてけぼり食ってしまったコトを不憫に思う。
その俺の心情を読んだのだろう。
『稀人よ良いのだ…我の我が儘で、我等の雛の誕生を見るまでと言う誓約で、魂と共に亡骸を封じてもらっていたのだから………だが、我も無事に誕生した我が子を見れた………我の亡骸も好きに使ってくれ……ありがとう稀人よ…我が子のコトを頼む』
と、完全な自己完結して、あの翼龍の番も、スゥーと昇華して逝った。
俺はひとつ溜め息を吐いてから、あの翼龍の番の亡骸に手をかざすようにして呟く。
「翼龍を収納」
その言葉と共に、翼龍の亡骸はフッと消える。
時空神エターナリア様の神託と同時に使えるようになったので、アイテムボックス的なモノも、言語理解【幻想】の次に、発現したのだろう。
にしても、俺がもらったアイテムボックス(仮)ってもの凄いヤツなんじゃねぇ?
いや、言語理解【幻想】も、とんでもないギフトだけど
そう考えて、俺が付与された残りのギフトってなんだろうと、現実逃避気味に考えてしまった。
その間に、地響きが治まっていた。
それから、フッと俺は気付く。
パッカンと割れた翼龍の卵の殻が足元に転がっているコトに。
「あっ……この卵の殻も、この雛の食料になるのかなぁ? 取り敢えず、拾っておくかぁ? この子が食べなかったとしても、何かに使えるかもだし……」
飛竜とかの卵の殻も、色んなモノの素材になっていたよなぁ……
まぁ~…俺のファンタジー系知識は、ウェブ小説のモノが大半だけどな
「卵の殻を収納」
シュッと消えたので、ちょっと満足気に頷いて、俺は改めて自分が落ちて来た周囲を見回す。
が、あの地響きの後から、妙な違和感を感じて首を傾げる。
なんか、地下深くへと墜ちた時の圧迫感がめっちゃ激減しているんだけど?
そう……こう……身体にかかる重力が軽くなっているような……
例えるなら、深海から浅瀬へと移動したような……って
もしかして、俺がダンジョンコアの破壊を考えたから、遠ざけられたのか?
ダンジョンってモノがある種の魔物で、ダンジョン内に入った生き物や、周囲に存在する生き物の欲望によって変化するて言うしな。
ウェブ小説でも、そう言う記述が散見してたので、ダンジョン内部にいる生き物の思考などもある程度読み取っているのではないかと、俺は推測する。
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