妖魔戦輝

ブラックベリィ

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011★タケルは繭玉に助けられる

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 一方、落とし穴に落下したタケルは途方にくれていた。

「イテテテテ………なんで? 落とし穴?」

 こんなところに掘っても、何にも獲物は落ちないのに?
 だいたい、この守護地の守護結界内に野生動物すら入れないのに
 じゃなくて……………どうしよう……

 自分に対する悪意で掘られた穴だとは気付かないタケルは、首を傾げてから上を見て溜め息を吐く。

 はぁ~……どんだけ掘ったんだよ……深すぎるだろぉ……
 見たところ、俺の身長の倍…
 いや、もしかしたら3倍ぐらいあるよなぁ……
 俺が居ないこと、誰か気付いてくれるかなぁ?

 見上げれば、雑草のモサモサとした向こう側に、木々の間から微かに空が見えていた。
 言いつけられたことを全部終わらせて来たタケルは、今の時間を考えて溜め息を吐く。

 今はまだ、日暮れまでそこそこ時間のある時期だけど………
 それでも、あと3時間もすれば日が暮れちまう

 そう思いながら、タケルは自分が落ちた穴を確認する。

 見た感じ、土壁はまだまだ新しいよなぁ……
 となると、誰かが昨日から今日にかけて掘ったってことだよなぁ
 昨日通った時には、こんな落とし穴無かったんだから……

 自分が落ちた場所は、古い井戸とかなどではなく、どう考えても人為的に掘られたばかりの穴であると認識して考える。

 大きさてきに、大人ならばひとりで掘っても数時間程度の穴だ
 何時も怒られているやんちゃな子供達のイタズラと考えるのが妥当かな?
 たまに、陰湿な視線は感じていたけど……何故?
 じゃなくて、今はこの落とし穴から出る方法だよなぁ………

 誰が作ったかなど考えてもしょうがないと思い、タケルはどうにか出られないかと周囲を改めて見回す。
 落とし穴の幅は、タケルが両手を広げたよりも確実に大きく、両手を左右に張って無理矢理這い上るということは不可能だった。

 また、見上げるれば自分の身長の3倍近くあり、よく足などを骨折しなかったものだと、ゾッとしつつ思った。
 掘りたての土が、ある意味で硬めのクッションがわりになったお陰で無事だったのは、本当に僥倖だったとしか言えない高さだった。

 タケルは幸いにして無事だったが、打ちどころが悪ければ、大怪我ではすまないような落とし穴だったからだ。
 ただ、落とし穴を仕掛けた者達は、まだ守護地の外苑にある森林に、狩りなどに連れていってもらえない者達だった。

 それは、タケルにとってまさに不幸中の幸いだった。
 何故なら、本来の狩りの為の落とし穴には、穴に落ちた時に足を引っ掛けて吊るす為の括り罠と、罠抜けした獲物を殺す為の仕掛けを穴底にするからである。
 だが、落とし穴を掘った者達には、そういうことをするという頭が無かった。

 とは言え、深く広い落とし穴から抜け出す方法が無いタケルは、グルッと土壁を確認してガックリとする。

「マジかぁ……手の…というか指さえ…引っ掛けられないや」

 タケルが土壁の凹凸に指をかけると、ボロボロと土が崩れてしまうのだ。

 これでは、土壁をよじ登ることもできないじゃん
 力を入れたら直ぐにぼろけちまう……クソッ………

 よじ登ることもできない土壁に、タケルが絶望と共に嘆息する。
 すると、たった今触って諦めた土壁のが、ホワッとほのかに光り、ボロボロっと崩れる。

 うげっ……どんな掘り方したんだよっ

 タケルが慌てて、少し後退りすると、その眼前で土壁に横穴がポッカリと出現する。
 その横穴の大きさは、タケルがスッポリと入れるほど大きかった。
 それだけに、タケルはその横穴につられて、他の場所も崩落する危険を感じて焦る。

 これじゃぁ……探しに来た大人でも落ちるぞ
 下手したら、俺…生き埋めになっちまう

 そんな冷や汗ダラダラの中、久しぶりにか細い念話が届く。

『…穴…開イタ……入ッテ……』

 繭玉からの念話に気付き、タケルはその誘導の言葉に対して、たった今恐怖した土壁に開いた空間へと、疑問も持たずに身体を滑り込ませる。
 自分でも理解わからない繭玉への確固たる信頼感に促されて入った横穴は、タケルが入っても余裕な大きさだった。

 土を掘ったばかりの時に感じる土臭さもなく、狭いところに入った時に感じるような圧迫感も無かった。
 一切迷わず、ぽっかりと開いた穴に入ったと同時に、タケルは温かいモノに包まれるの感じた。

 そして、タケルは温かいモノに包まれる感触を感じた次の瞬間、ふわっとした微かな浮遊感を感じて、思わず条件反射的に目を瞑ってしまう。

 硬く目を瞑ってしまっていたタケルは、何処か湿った土臭さが漂う空間から解放されたコトを感じて、そっとうすめを開ける。

 と、落とし穴の土壁から、最近見慣れた大樹に開いた穴の壁と変化していた。
 それで、自分が大樹の穴の中に移動していることを知る。
 それが判ったのは、タケルの目の前に繭玉が存在しているからだった。

 へっ? えっとぉ~……もしかしなくても、繭玉???
 ってコトは、ここはあの大樹に開いた穴のかな?

 タケルは周囲を見回し、夢じゃなく自分が大樹の穴の中に居ることを認識して脂汗を浮かべる。

 うわぁ~……もしかして、また【力】使わせちゃったのかぁ……
 いや…もの凄く助かったけど…繭玉…大丈夫かなぁ…
 こんなに何回も【力】使っちゃって…ちゃんと孵化できるかなぁ?

 その繭玉の無償の優しさに救われつつも、タケルはちょっと不安を覚えた。
 が、まずは落とし穴に落ちた自分を【力】を使って救出してくれたことに対するお礼を口にする。

「お前が助けてくれだんだね。ありがとう」

 そう言って、隠した時よりも3倍くらい大きくなった繭玉に、タケルは抱きついた。
 ほわっとして温かい感触が、確かなる現実のものだと感じて、ホッとしたことでようやくタケルは自分の両手が痛いことに気付く。

 あれ? なんか両手とも痛いや

 そう感じた途端に、ズッキンズッキンッという痛みと共に、生温いモノが流れていることに、ようやっと気付いたのだった。
 タケルは慌てて、繭玉から離れて、痛みを訴える両手を見て愕然とする。
 両方の掌からダラダラと流れる鮮血に、タケルは眩暈を感じた。

「うわぁ~……落とし穴に落ちる時に、切ったのかなぁ………」

 無意識に両手を伸ばした記憶はあるので、穴を掘った淵にあった何かで両手を切ったんだろうことは明白だった。
 だから、繭玉が【力】を使ってまで自分を大樹の中へと即座に運んだのだと、本能的に感じた。

『…触テ……血…止メル……』

 繭玉からの念話に、何の疑いも持たず、タケルは痛みを訴える血塗れの両手で繭玉に縋り付くのだった。











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