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0149★おぞましき性の饗宴が意味するモノ

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 【オロチ】の言葉を聞き終わる前に、意識が途切れた蒼珠が次に目覚めたのは、残念ながら、朱螺の側ではなかった。

 そう、蒼珠は再びロン・パルディーアの中に堕ちてしまっていたのだ。
 ただし今回は、今までのように、ロン・パルディーアが感じるモノは何一つ感じられなかった。

 確かに、ロン・パルディーアの中に堕ちいてるのに、匂いや感触というモノが綺麗さっぱりと無いのだ。
 感覚全てが遮断されているような状態で、彼女の中に居た。
 その異様さに、蒼珠は戸惑う。

 〔なんだぁ? 何か今までと全然違う…何か変だ
 いったい、どうなっているんだぁ?
 不思議なほど何も感じないんだけど?

 何か…例えて言うなら風やラオスの手のひら…が
 肌に触れる感触すら感じない
 マジで、どうなっているんだ?

 ……へっ? えっ? えぇぇぇぇぇぇ?
 嘘だろぉぉぉぉ…どうしてっ? …何でっ?

 いったい……何がどうして?
 見知らぬ男が、彼女の上で動いてるんだっっ〕

 現在の情況を認識した途端、蒼珠は彼女の中で叫んでいた。

 何故なら、今、蒼珠が精神だけ堕ちてしまっていたロン・パルディーアという名を持つ羽鱗龍族の女性は、押さえ付けられて、ラオスではない見知らぬ男に犯されていた。

 それも、大勢の異形の男達に囲まれる中で…………。

 ロン・パルディーアの感覚と切り離され、隔絶された空間?にいるような状態で、彼女の双眸を通して見ていた。
 欲情に濡れた下卑た表情で見下ろす異形の男達の視線に、蒼珠は、ぞくんっとした強烈な拒絶感と怖気を味わう。

 〔うぐっっ……感覚…繋がってねぇーのに…
 おぞましさで…精神がおかしくなっちまいそうだ〕

 その間も、異形の男達はロン・パルディーアを交替で犯し続けていた。
 まさに、男達の嗜虐心を満たす為だけの、性的なリンチとしか言いようの無い輪姦行為に、蒼珠は呆然としていた。

 〔何がどうなっているんだよっ?
 彼女が、何かから逃げているらしいことは
 ラオスとの言動でわかっていたけど………

 はぁ~…おぞましいな…

 彼女が男達に味合わされているモノを
 一切感じないのはありがたいけど……
 どうして、こんなことに成っているんだ?

 護衛兼戦士のラオスは、どうしたんだ?
 彼女が望んで情を結んだ…………

 いや、その前に……
 此処は何処で、どう成っているんだ?〕

 最初の驚愕が過ぎてしまえば、蒼珠もロン・パルディーアの受けている凌辱は、所詮は他人事なので、辺りを見回す余裕が出来た。
 その見開かれた双眸に映るモノから最大限を読み取ろうと、蒼珠は周辺を観察する。

 と、唐突に、ロン・パルディーアから、ポンッという感じて、躯から精神体が放り出された。

 〔へっ? えっ? 嘘っ? はじき出された?
 マジで何がどうなっているんだ?

 いや、その前に状況確認だろっ俺っ
 慌てるな、蒼珠……まずは…そう…

 何か、どうして、どうなった…だ〕

 そう自分に言い聞かせ、蒼珠は周囲を見回し、眼下にロン・パルディーアを中心に据えて、輪姦真っ盛りの狂乱を観察する。

 蒼珠の眼下では、無理矢理与えられる《精》と快楽に塗れ、許していない者に躯をいいように犯される屈辱に噎び泣きもがいていた。
 そんなロン・パルディーアの拒絶の啼き声を楽しみながら、異形の男達は、自分の《精》を腹腔に吐き出していた。

 それは、その腹に宿った胎児に、様々な魔族や妖族などの特性や《魔力》を帯びさせる為の行為だった。
 ロン・パルディーアの腹に宿った胎児は、支配主の資格を持つ者だったのだ。

 ちなみに【オロチ】が言った、支配主という資格は、別の名を《帝王の資格》とも言う。
 また、別の呼び名として《帝王の資格》を持つ子を〈契約の子〉と呼んでいた。
 一般的には、こちらの〈契約の子〉という名称で通っている。
 まさに、大地との《契約》がなされ、その地を完全に支配できるのだ。

 そう、荒涼とした砂漠すら、望めば緑豊かな地へと変換する程の《力》と、その地を支配する権利を持つのだ。
 そして、それは持ち主である〈契約の子〉を喰らうことで、その全てを盗り込めるという裏技があるのだ。

 他にも幾つかの手段はあるが、遥か昔から、この〈契約の子〉は絶大な《力》を発揮することもなく、成長しきることも無かった。
 何故なら、奪えるモノだということが知られてしまっていたから………。

 どの種族も、自分達を生み出した星からの恩恵を奪うことに血眼になり、誕生した〈契約の子〉を守り育てて成人させることは無かった…………。

 前回、その《帝王の資格》を有する〈契約の子〉は、ある竜種の双子で、どちらがそうかわからず、どちらも陵辱(より多くの《魔力》などを得る為に《精》を本人の意思に関係なく注がれる)され、喰われる寸前に、全て消失したということだった。

 なお《帝王の資格》には、地・水・火・風の4つの属性がある。
 ちなみに、蒼珠はある理由から、この内の1つを内包していた。
 閑話休題

 まさしく眼下で行われる異形の男達による残酷な性の饗宴に、吐き気を覚える中、だった今、ロン・パルディーアの中に《精》を吐き出した額に捩じれた角を持つ男が、自身を抜きながら言い放つ。

 「もうすぐ 我等が偉大なる盟主が
 女の腹に宿った〈契約の子〉を喰らう為に
 此処にいらっしゃる もっと《精》を注げ

 我等の《魔力》を 〈契約の子〉に注ぎ
 偉大なる盟主に捧げるのだっ

 〈契約の子〉が 我等の《魔力》を吸って
 成長すればする程 盟主はお喜びなられるぞ」

 額に捩じれた角を持つ男の発破に応え、男達がロン・パルディーアに群がる。

 「急げっ 口にも 尻にも 《精》を注げ
 次々注げ どうせ 死ぬ女だ 遠慮はいらん

 腹の〈契約の子〉を抉り出せば
 いかに 龍族とは言え 生きてはおれまい」

 蒼珠は、そのあまりにもおぞましい内容に、目眩を感じた。






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