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031★命の焔石?

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 水の精霊であるチエが、和也の食べたがった?お魚を追い掛け回しながら、突然、あらわれた。

 それは、お魚と言ってイイの? という存在だった。
 それなのに、チエは、得意げに和也に話し掛ける。
 まるで、わたしは、エライでしょ‥ほ・め・て‥‥と要求するかのように。

 『ますたー‥お魚‥大きいの‥‥たくさん‥釣れてきたよぉぉ‥』

 チエの声に振り返った和也は、目を疑いたくなる光景を目の当たりにした。
 振り返った和也の目の前には‥‥‥‥。
 ウロコの有るオオサンショウウオという姿の存在が、大群?で這いずってきたのだった。
 
 チエは、お魚といったけどぉ~‥‥。
 この形状は、どう見てもオオサンショウウオです。
 それも、牙ががっつり見えて、いかにも凶暴そうな‥‥。

 国産の大人しいオオサンショウウオではなく、RED CHIN○産の獰猛で貪欲な食欲を持つオオサンショウウオって感じですね。
 でも、ウロコがあるから、イクチオステガの一種でしょうか?

 頭の形と腕や足の形を見ると、オオミズトカゲではないですね。
 よく見ると背中に背びれの名残があるし‥‥。
 腕?足?にもヒレがついてますし‥‥‥。
 これは、オオサンショウウオに、似ているけどイクチオステガのお仲間ですね。
 ということは、お魚ですね。

 銀嶺、食べられますか?

 和也の問い掛けに、身の内に隠れている銀嶺が、嬉しそうに応じる。

 マスター‥‥食べたい‥‥食べたいです。
 人間達が、枯れワジで死に掛けている怪魚を獲り、美味しそうに食べているのを見て以来、ワタシも食べてみたいと思っていたんです。
 命の輝きが凄い‥‥‥‥。
 これを食べたら、回復がぐっと進みそうです。

 命の輝き? 
 そう‥‥‥‥だったら、獲るね。
 人間が、美味しそうに食べていたなら、ボクが食べても大丈夫でしょうから。

 和也は、ほんの一瞬で、現れたお魚?を、食べる存在として獲ると判断した。
 見切りの速さは、バスケで全国大会優勝を経験している為だった。
 一瞬の判断ミスが、試合を左右することがあるから‥‥‥。

 イクチオステガ=怪魚を獲ると決めた和也は、直ぐ側に射しておいたミスリル銀の銛を手にジャンプしながら、風の精霊たちに言う。
 空腹感で、ガチガチの理性のタガが壊れた状態なので、風の精霊を使役することをいっさい躊躇しない和也だった。

 「ボクの体を空中に、浮かしてください‥‥出来れば、足場も作って欲しいんですが‥‥出来ますか?」

 水の精霊や地の精霊達を、いいなぁ~と思いながら見ていた風の精霊は、嬉々として和也のお願いに応じる。

 『はい。ますたー‥‥浮いたままにするね‥‥赤っぽい色を踏むと地面と一緒の活動ができまぁ~す』

 「ありがとう‥‥それと‥‥銛で怪魚を刺すとき、ボクの体重を出来るだけ重くして下さい‥‥出来ますか?‥‥」

 『出来るよぉ~』

 『ますたー‥‥怪魚を‥‥風牙できざんでもイイですかぁ~?』
 
 「周りに、被害を出さないで出来るんだったらね」

 『うっ‥‥デーツとか地面をちょっと傷つけるかも‥‥‥』

 『ちびっとだから‥‥風牙を使ってもイイでしょ?‥‥ねっ‥ますたー‥‥』

 それでも、理性の根幹部分までは崩壊していないので、風の精霊には攻撃ではなく、助力の方を命令する。

 「今回は、ボクの手助けだけにして下さいね」
 
 『はぁ~い』

 こんなのん気な会話をしながらも、和也は怪魚のエラと脳髄?を銛で、素早く突き刺していた。

 チエが釣れてきた怪魚を、和也は次々と突き刺して行く。
 その結果、怪魚はスズゥーンという音をたてながら、砂の上に倒れていった。
 だが、銀嶺が、命の輝きが凄いと言っただけあって、どの怪魚もまだ生きていた。
 手?や足?や尻尾?をジタバタと動かしていた。

 その様子を見た和也は、エンキに質問する。

 「エン、怪魚って、なかなか死にませんねぇ‥‥通常は‥どのくらいで‥逝くんですか?」

 『半日ぐらいだったと思います』

 「えっえ~‥‥そんなに‥‥生きているのぉ?」

 『生命力に溢れているから‥‥でも、命のホムラをむしり獲ることが出来るなら、‥‥トドメを刺すことになります』
  
 なるほど、命の焔を奪うんですかぁ~‥‥‥。
 ふぅ~ん‥‥RPGらしい方法ですね。
 命の焔を、血石みたいに、石化して閉じ込めるコトが出来たら‥‥‥。
 
 血石を造るときは、水の女神様の助力を請いましたから‥‥‥。
 今回は、冥府の女神様の助力を求めてみましょう‥‥‥。
 お礼は、命の焔石を奉げましょう。
 良し、試してみましょうか‥‥。
 ダメモトなんですから‥‥。

 ドラク○やファイフ○ンのお仲間のファンタジー設定のRPGを、作るって藤田主任が言っていたんだし‥‥。
 オリジナルっぽい設定を、ボクがプラスしたら‥‥。
 アルバイト代が、けっこうイイかも。
 
 内心で、和也にしては、打算的なことを考えていた。
 そして、思いついたコトを早速試す和也である。
 勿論、怪魚の長い尻尾や手足に、ぶつかる心配の無い空中の足場で‥‥‥。

 ミスリル銀の銛を、足元に置いた和也は、太陽が沈む(仏教の西方浄土=冥土、冥府のイメージ)方向に向かって言う。

 「 ありとあらゆる 魂の還る場所を治める
   慈しみ深く 心優しい 麗しの冥府の女神様に
   助力を こいねがいたてまつりまする     」

 気分的な詠唱に、まさかの応答が‥‥‥‥。

 『既に忘れ去られて久しい我に、そなたは何を望むのじゃ?』

 流石、そういうのもやっぱり有りですか‥‥‥‥。
 なら、詠唱を続けてみよう。

 「 我が 倒せし怪魚の命の焔を 我が手に集め結晶化し
   命の焔石を造りたいのです ご助力を頂けますでしょうか?
   冥府にありても 艶やかに輝く美しき冥府の女神様?
   もちろん 出来上がった命の焔石の中で
   1番大きなものを 御身に奉げます            」

 『ほほほほ‥まぁ‥‥嬉しいことを言う‥そなたに、助力しましょう‥‥ただし‥‥そなた自身に、それ相応な霊力が無ければ、結晶化はなりませんよ』

 「ありがとうございます」

 太陽が沈む方角に、深々と頭を下げた和也は、左の手のひらを天空に差し出して呪文を唱えるように言う。

 「 我が左手に宿り力は すべての魂を抱き締める 
   麗しい冥府の女神のかいなの力 
   その力によりて 怪魚の命の焔を
   我が手に集めん              」

 和也の言葉には、言霊が入っていたので、音も無く怪魚の上に、淡く揺らめく炎が浮かび上がった。

 次の瞬間に、その揺らめきは和也の左手に、吸い込まれるように消えていた。
 そして、和也の手のひらには、命の焔が揺らめいていた。
 命の焔を確認した和也は、最後の呪文?を唱える。

 「 命の焔よ ‥‥結晶化せよ 」
 
 呪文を言うと同時に、和也は手をクッと握り締めた。

 はぁ~日常では、バスケをする以外使わない左手だから、聖なる手としてやってみたけど‥‥‥‥。
 うまく結晶化するかなぁ~‥‥。
 出来たら嬉しいんだけどぉー‥‥‥‥。
 
 あっ‥‥石の感触が有る。
 でも‥‥‥ちっちゃ‥‥。
 造れただけでも、ラッキーだ。
 後は、女神様達に、お礼として投げればイイ‥‥‥‥。

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