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039★お客様は‥‥人間?それとも‥‥?

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 ヒナの発言に、和也はその言葉の意味をわかっていながら、シレッと答える。

 「‥‥うん‥‥そうだね‥‥」

 『今‥追い払いますね‥‥』

 「いや‥‥このまま‥‥ボクの前に誘導して‥‥」

 『ますたー‥‥なぜですか?‥危険が‥』

 「幽霊でも、もとは人間‥話してみたいんだ」

 『でも‥‥』

 「危なくなったら、ヒナが追い払ってくれるでしょ?」

 『‥‥はい』

 和也の意思に、ヒムカは引き下がってしまう。
 これではマスターの和也に、危険が及ぶと思った火の精霊達だった。
 
 『あの‥‥』

 口を開きかけた2人に、和也はにっこりと笑って言う。

 「いざとなったら、エンとカカの浄化の炎で、送ってあげればイイでしょ」

 『出来ますが‥‥‥‥』

 火の精霊が言いよどむのをみて、ツクヨが決意をもって言う。

 『ますたーに、アレらが危害を与えたら‥‥‥‥』

 が、和也は意に介さない。

 「ツキが、隠してくれるでしょ」

 『ますたー‥‥もしかして‥‥』

 「‥‥うん?‥」

 『アレらから、人間の情報を取りたいの?』

 「出来ればね」

 『あたし達のお話じゃ‥‥ダメ‥‥なの?』

 「ダメじゃないけど‥‥ボクの国では‥『百聞は一見にしかず』っていうことわざがあるんだ‥」

 『それって‥‥どういう意味?‥‥』

 「どんなに沢山の本を読むよりも、実際にモノを見たほうがイイって意味なんだよ‥だから‥‥確かめたいんだ‥」

 『‥‥‥‥』

 「だって、ボクには、アレらを追い払えるヒナと、アレらからボクを完全に隠せるツキと、浄化の炎を持ってるエンとカカが、いるんだよ。大丈夫って思ちゃうでしょ‥‥‥‥誰だって‥‥ねっ」

 和也の意思が、どうやってもくつがえらないことを理解する。

 『ますたー‥分かりました‥追い払うのは‥‥ちょっと‥待ちます』

 『ますたーが、ちょっとでも危なくなったら、隠しますよ』

 『おれは、勝手に判断しますイイですか?』

 「うん‥‥イイよ‥‥」
 
 和也は、幽霊でもイイからお話ししたいという欲望の為に、精霊達を強引に黙らせたのだった。

 和也と精霊達が会話している間にも、幽霊達は近付いて来る。
 和也の目には、幽霊達のキャラバンが、はっきりと見えるようになった。
 
 なんで? ‥これが‥‥幽霊だって‥わからないんだろう?
 影のつき方がいい加減です
 だいたい、馬? ラクダ? の映像に乱れがあり過ぎです
 歩くたびに、足が多かったり、少なかったりして、足の数があっていません  
 CG担当したの誰ですか?

 あぁ‥もう‥‥‥映像がブレてるし‥‥ムラがあり過ぎです
 これで、見分けられないのは、幽霊をガチで怖がる緋崎くんぐらいです
 あとで、藤田主任に言いましょう

 もっと、CG映像に予算を割り振ったほうがイイですね
 人間とまるっきり見分けがつかないぐらい、精密に作って欲しいです
 その方が、驚きがあっておもしろいんですけどぉ‥‥‥‥

 ほんと、RPGの幽霊って、どうしてこういい加減なんでしょう?
 そう言えば、あのドラク○のは、あまりにも酷かった‥‥‥‥
 予算が無いわけじゃないだろうに‥‥‥‥

 それにしても、今回のもかなぁーり映像が手抜きですね
 砂漠の民っていうか、イスラ○教徒の白い民族衣装に似すぎです
 もっと、凝った服装にして欲しかったなぁ~

 それとも、アラビアのロレン○の映画のオマァージュですか?
 民族衣装(白いアラブ服=トーブ、頭の白い布=シュマーグ、頭部り黒いワッカ=イガール)に、本当によく似ているなぁ‥‥‥

 まっ、ボクは、お祖父さんやお祖母さんと一緒に、古い映画を見ていたセイでそう思うのかも知れないけどぉ‥‥‥‥
 でも、白一色の民族衣装は、つまんないなぁ‥‥‥‥
 もう少しカラフルでもいいんじゃないかなぁ?

 あっ‥白だと、影を入れるだけだから、映像作成が楽だから‥‥‥‥
 こういうところの予算をケチったらダメでしょ
 RPGは、映像が命なんだから‥‥‥‥

 和也が、幽霊達の服装にダメだしをしている間に、精霊達は全員姿を消していた。
 幽霊に、姿を見られるコト自体を穢れとして忌み嫌うから‥‥‥‥。
 精霊達は、和也を独りにすることを嫌がったが‥‥‥‥。

 和也の居る現世(うつしよ)から、ちょっとズレた現世α(うつしよアルファ)に、精霊達は移動したのだった。
 和也に何かあったらすぐに行動できるように‥‥‥‥。
 我が儘になっている和也に、何を言っても無駄と諦めたセイだった。

 和也が、こんなに自分の欲望に従ってしまったのは、調理の為にお酒の味見を何度もしたセイだったりする‥‥‥‥。
 それと、銀嶺が怪魚を食べたときに、デーツのお酒をぜぇーんぶ飲んだ為だった。
 身の内に、銀嶺を宿している為に、酔っている銀嶺の影響をもろに受けるのだ。

 ようするに酔っていたりする。
 その為に、何時もの理性的な和也は、どこかに行って‥‥‥‥。
 我が儘な欲望に忠実な和也が出て来たのだった。

 和也の前に到着した幽霊達のキャラバンは、乗っていた馬? や、ラクダ? ちょ○ぼ? から、全員が降りる。
 そして、キャラバンの隊長?長?が、和也に挨拶する。
 まるで、生きている本物のキャラバンの人間のように‥‥‥‥。

 「始めまして、オアシスの主殿よ‥‥私は‥このキャラバンを‥率いるガラム=ムーシェルと申します」

 頭を下げて礼をとる姿は、映画のワンシーンのようだった‥‥‥‥。

 えぇ~‥とぉ‥‥なんで、ボクが‥オアシスの主なの?
 って‥‥‥そっか‥地の精霊が出したモノ達のセイか‥‥‥‥
 なんて答えたら良いのかな?

 「‥‥‥‥」

 何と答えていいか分からなかった和也は、黙って頷くだけにした。
 そんな和也に、ガラムは、再度、頭を深く下げて礼をとりながら言う。

 「日も落ちきり、月が上り、風も凪いで、砂漠の旅に、良き夜に、何ゆえ来たかとお疑いでしょうか?」

 和也はちょっと首を傾げてから、その顔を見たいと思ったので、声を掛ける。

 「‥あ‥‥あのぉ‥‥‥頭を‥上げて‥‥喋って下さい‥‥‥‥」

 和也の困ったが含まれる言葉に、頭を上げて言う。

 「砂嵐に会い、われらの持つ水があと二日で尽きてしまうのです。それ故、オアシスを探しておりました」

 そのセリフに、和也はちょっと眩暈を感じた。

 うわぁぁぁ~‥‥‥すっごい‥ベタな言葉‥キタァー‥‥‥まさにテンプレ‥‥‥‥
 はぁ~‥‥‥もう少し‥考えたセリフが欲しいですねぇ~‥‥‥‥
 せっかくの異世界感バリのRPGなんだからさぁ‥‥‥‥
 ここは、ボクがヒネッたセリフを入れてあげましょう

 「先触れは無かったが‥‥‥‥」

 和也の問いに、ガラムは年老いた男を手招きして言う。

 「ここに、おります。占い師が、水晶に映るこのオアシスを探し出しました」

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