3 / 11
003★安全の為に黙ってます
しおりを挟む俺は、目の前の茶番劇を内心でだけ、鼻で嗤いつつも、少しづつ真崎 良(まさき りょう)を中心とした輪からズレる。
まぁ俺の偽装したステータスを盗み見た魔術師達は、俺に興味が無いらしく、高い数値を出した真崎 良(まさき りょう)とその仲間を取り込もうと躍起になる。
そんな中、1番最初に口を開いた魔術師、王宮魔術師長のウリン・ベクトルが、真崎 良(まさき りょう)達に問いかける。
「申し訳ございませんが、皆様のお名前を窺っても宜しいでしょうか?
あと、そちらの方との関係はどうなのでしょうか?
どう見ても勇者様達とは………その…毛色が違うと言うか………
もしかしたら、巻き込んでしまった一般(能力なし)の方でしょうか?」
本音が透けて見える王宮魔術師長のウリン・ベクトルの言葉に、勇者様呼びされた真崎 良(まさき りょう)は、ちょっと肩を竦めて言う。
「ああ、ソイツは間違いなく巻き込まれだろうな
俺達は、生徒会という学園の生徒達を指導する立場にいるんでな
残念だが、彼は…たぶん、なんの役にも立たないだろう
生徒としても落ち零れだからな
せいぜいが、下働きの下男………できるかなぁ~?
って程度だからな」
召喚した中の代表者らしき態度の真崎 良(まさき りょう)の言葉を聞いて、王宮魔術師長のウリン・ベクトルは大仰に頷く。
「おお、そうでしたか、それでは彼は別室にご案内しましょう
我々が必要としているのは、勇者様と聖女様なのですから………」
戦力外と認識された瞬間、俺の価値はゴミと同等とみなされたようだ。
俺は、安全の為に一切口を利かない。
というか、俺の気配を零さないようにするので忙しかった。
もしも前世で《契約》していた精霊達が、喜び勇んで現われたら、どんなコトになるか判らないからだ。
たぶんというよりは、間違いなく使い潰されるのが目に見えているからな
偽装したステータスを見破られないように、巧妙に気配も隠すようにつとめ続ける。
そんな中、王宮魔術師長のウリン・ベクトルが、魔術師集団の中でも装飾が少ない、どう見ても魔術師として位が1番低い男に頷いて、無言の指示を出す。
そう、その役立たずをこの場からつまみ出せ………と。
視線で指示された男は、いかにも仕方が無さそうに、呆然としている俺の手首を掴み、なんの言葉もなく歩き始める。
それも、乱暴に腕を引っ張るようにしながら………。
俺は、えっ?という表情を作り、一応カタチばかりの抵抗を示して、真崎 良(まさき りょう)達を振り返る。
と、そこには嘲るような、予想通りの表情を浮かべる集団がいるだけだった。
その表情を見て、俺は自分の中にある僅かな同情が綺麗さっぱりと消えて行くのを感じて、内心でホッとしていた。
そう、この人でなし達が巣食う魔城で、使い潰されるコトへの憐憫が無くなったコトに………。
嘲笑を浮かべる真崎 良(まさき りょう)を筆頭とした生徒会役員達と、それに侍る双子達に一応は縋るような瞳を向けながら、俺は召喚の間?らしき場所から引き摺り出されたのだった。
が、殺される様子は無さそうなので、不安そうな表情を作りながら、無口な、たぶん下級魔術師の男に引き摺られて歩く。
石造りのせいか、妙に静かな廊下を、ただただ黙って手首を掴まれて歩く。
そうコミュ症の役立たずを装いながら、俺は男に手首を掴まれて歩きながら、周囲を見回す。
ここ………俺は知っている気がする………記憶にある……ここは………
本来は、神々や精霊達への祈り場を、あいつらは召喚の場にしたんだな
そして、俺はその場所を知ったコトで、この後に崖(がけ)から落とされて死ぬ運命にあるコトを知る。
が、別に殺されてやる予定はない。
手首を握る下級魔術師の男は、王城の裏側にある背面からは難攻不落な絶壁から、俺を落とすだろうコトは予想できた。
わざわざ刃物を出したり、魔術で殺そうとしたりはしないだろうコトは見て取れた。
きっと、急な召喚に意識が追い付いていない間に、絶壁となっている崖(がけ)から突き落とせはすむと思っているのだろう。
その証拠に、兵士の1人、騎士の1人も、この回廊には存在していなかったから………。
そして、長い長い回廊を巡って、1つの扉へと辿り着く。
そう、王城裏の崖(がけ)へと出る扉の前に………。
下級魔術師らしい男は、その扉に手の平を付けて、開錠して俺を引き摺り出すのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
93
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる