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0001★始まりは………
しおりを挟むそれは、悠虎が七歳の時のに起きた、突然の出来事だった。
まるで物語りに出て来るような、夜叉のような嫉妬と怒りに狂った表情を浮かべ、父に向かって叫ぶ母。
そんな母に対して、父はその状況がおかしいとでもいうように、口端に笑みすら浮かべていた。
そして、見知らない髪の長い女性が、父の腕に絡みついて、母に向かって嘲笑っていた。
記憶に残るような、赤い…紅い…嗤う真っ赤な唇。
酷く張り出た胸とお尻を持つ、まるでモデルのような女性。
まだ幼い悠虎でも、その状況が何を意味するか、理解った。
その認識が正しいかどうかは別として、幼い悠虎には、そう見えた。
そう、世間一般で言うところの、不倫というモノで、目の前でのやり取りが痴情の縺れだと………。
最初は、そう思った悠虎だった。
そして、そんな状況にもかかわらず、父は酷く残念なモノを見る、いっそ哀れみすら帯びた、不似合いな微笑みを浮かべて、自分の妻であり、悠虎達の母・明音を見詰めていた。
『クスクス…うふふふ…残念だったわねぇ~……明音さん
その子、七つになったのになぁ~んの能力も顕現しなかったのね
悠一郎さんの子なのにねぇ~……最初の子が能無し
というコトは、残りの子達も期待できないわねぇ~…………』
そう嘲る真っ赤な唇の女は、チラリと悠虎を見て首を振る。
『その子と半年違いの私の子、悠護はね
たった三つで、能力が顕現化したわよ
妊娠した明音さんとの駆け落ちを許す代わりに
私と子供を作るっていう交換条件でね
今まで悠一郎さんは、自由でいられたの
そう、その子が七つになるまでという期限付きでね
でも、その子……悠虎君は、能力が何も発現しなかった
そう、大概の者は七つの誕生日までに、何らかの能力が発現するから
もしも、類い稀な能力が、七つまでに顕現化していたなら
悠一郎さんは、この先も自由なままだったのよ
くすくす…でも残念なコトに、何も発現しなかった
だから、悠一郎さんは一族に帰るコトになるの
そして、私と次の子を作るのよ……それが一族の望みだから
いくら明音さんが啼き縋ったって、これは変わらないわ
だって、貴女の産んだ子供達に、能力が発現する可能性はほぼ無いもの
好き合っての駆け落ちだから期待していたのよ
きっと、高い能力の子が生まれるかも…………ってね
だけど、実際にはなぁ~んの能力も無い無能者
貴女は、悠一郎さんに優秀な子供を提供できなかった
だから、これ以上を悠一郎さんに縋るのは諦めなさい
さぁ~帰りましょう悠一郎さん、皆が待っているわ
ちゃんと能力のある子が産める私が、何人も産んであげるわ
勿論、貴方を狙っている女達からも、ちゃぁ~んと護ってあげるわ
だから、貴方が抱くのは私だけよ
さぁー…もう、ここには未練なんて無いでしょう…ね』
そう言って、悠一郎は腕を取られるまま、真っ赤な唇の女と共に玄関を出て行った。
一度も、悠虎を振り返らないまま…………。
そして、二度とその姿を見せるコトは無かった。
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