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003★文化祭の出し物は、女装喫茶らしい(涙)

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 部室で、資料を持った部長が嫌な笑顔で言う。

 「今回の文化祭で、私達は女装をして
 喫茶店をします
 目指せ、メイドカフェって感じでします」

 その宣言に、思わず俺は言い返した。

 「部長、それって、マジですか?」

 涼しい顔で部長は、俺に言い返す。

 「もちろんよ」

 俺達の会話に、俺の幼馴染みの忍が混ざる。

 「なんで、突然そんなコトを
 言い出したんすか?」

 にこにこと音がするような黒い笑顔で、部長は酷いコトを言う。

 「だって、朔夜君達っていう
 美形が揃ったんですもの
 やって欲しいってみんなに言われてるし
 おもしろそうだったから」

 もちろん、忍は嫌がって言い返す。

 「うえぇぇ~……んな理由で
 女装しなきゃなんねーなんて、いやっす」

 そんな忍に、部長達は、にやーっと嗤う。
 
 俺は背筋にぞくぞくと嫌な予感が走り回ってしまう。
 だから、思わず口を閉じて様子を窺がってしまう。
 ああそうだよ、俺は、小心者なんだよ。
 年上の女は苦手なんだ。

 双子の姉の弟っていうのは、おもちゃと一緒なんだって、ものごころ付いた頃には諦めていたからさ。
 そんな諦めの入った俺の視線の先では、忍達と部長達の会話が続いていたんだ。
 
 「大丈夫よ。危ないことはさせないから」

 「何が大丈夫なんすか?」 

 「お茶とお菓子を運ぶだけで
 どこぞのメイドカフェみたいに
 オムライスに、トマトケチャップで
 ハートマークをかいたりするなんて
 こともないわよ」

 部長と忍のズレた発言に、イラついた薫がボソッと突っ込む。

 「部長、あんたは、学園祭で
 メイドカフェを出したかったんだな
 だったら、自分でやれよ

 性格と嗜好を無視すりゃー
 美少女なんだから」

 薫の突っ込みに、部長の相棒の副部長が笑って言い返す。

 「あらあら、忍くんも薫くんも
 我が儘ねぇ……

 麗羅(部長)が頼んだ時、コスプレで
 売り子してくれたじゃないの
 それの延長なんだから、素直にやってよね」

 俺は、副部長(京香)の言葉にぞーっとした。
 ゴールデンウィークに、ウチの本をコミケで販売した時のコトを思い出したんだ。
 部員が、全員でコスプレして販売するってコトになって、男は女装、女は男装することになっていたんだよぉ。

 どうせだからって、俺は、ベルバ○のオスカ○をやってみた。
 ウチの母親がコスプレも同人誌も大好きで、売り子全員でコスプレする話しをしたら、衣装を作ってあげるし、お小遣いもあげるって言うんで、何も考えずにやったんだ。

 部長達は、銀河の英雄伝○の帝国側(皇帝陛下達)と同盟側(提督と将軍達)をやっていたんだ。
 制服が好きな人達だから………。

 忍は、妖怪が出るアレの巫女装束を着ていた。
 薫は、メガネ付きの死神の着物と袴を着ていた。
 光は、イケメンと根暗ホラー好き女の振袖姿をしていた。
 明は、お団子付きのチャイナ服にスパッツ?の夜○の格好をしていた。

 コスプレと女装は違うって言っても、部長達にはわからないだろう。
 俺は、どう足掻いても、女装する未来しか見えなかった。






 
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