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第4章
第13夜 不安定恋核(3)
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俺は再び星空を見上げた。無数の星が、静かに瞬いている。あの星々の向こうに、救わなければならない地球がある。でも同時に、ここにいる大切な人たちもいる。胸が痛むほどの葛藤。
地球を救えば、何十億もの命が助かる。その重みが、肩にのしかかる。でも、それは先輩が思い出を失うかもしれないということ。胸が締め付けられる。先輩を選べば……いや、そんな選択肢はない。俺たちの幸せのために、地球を見捨てることなんてできない。自己嫌悪が込み上げてくる。
でも、先輩が大切にしている思い出がなくなるなんて……。あの高校の屋上で過ごした時間、一緒に聴いた音楽、交わした約束。心臓が痛むほど鮮明に蘇る記憶たち。全てが消えてしまうなんて残酷すぎる。目の奥が熱くなる。
「蛍くん?」
先輩の声が、遠くから聞こえてくる。
「大丈夫?」
先輩の心配そうな表情が、ぼんやりと見える。
俺は我に返った。頬を伝う涙の温かさに気づく。
「先輩……俺……」
言葉が喉につまる。
そのとき、哲が腕時計を見て、顔色を変えた。その表情に、一瞬で場の空気が凍りつく。
「時間……あまりないかも」
哲の声が、重く響く。
その言葉に、全員の表情が強張った。空気が重く、息苦しい。内調から逃げ出してから、12時間は経っている。ということは、残りはあと12時間。時間の重みが、さらに増す。
「そうか……」
未来が小さく呟いた。その声に、諦めと決意が混じっている。
俺の頭に、黒石の警告が鮮明に蘇る。まるで今、目の前で再び聞いているかのように。
「24時間以内に協力の確証がなければ、我々は君を排除せざるを得ない」
黒石の冷たい声が、頭の中で反響する。
その言葉が、俺の心を鋭い刃物で突き刺すように痛む。息が詰まりそうだ。
「先輩……」
俺は震える声で言った。
「俺たちには、もう時間がない」
その言葉が、重く場に沈んでいく。
先輩の顔から血の気が引いた。その青白い顔に、俺の胸が痛む。
「そうね……」
先輩は深呼吸をして、続けた。
「でも、蛍くん。急いで決めなくていいの」
「いや、決めなきゃ」
俺は歯を食いしばった。拳を強く握りしめる。
「このまま時間が過ぎれば、先輩が……先輩が……」
言葉につまる。その可能性を口にするのも恐ろしい。
「蛍」
哲が俺の肩に手を置いた。その温もりが、少し心を落ち着かせる。
「冷静に考えよう。まだ12時間ある」
哲の声には、いつもの冷静さが戻っていた。
「そうよ」
未来も寄り添ってきた。その声に、少し希望が混じっている。
「一緒に考えよう」
未来の言葉に、みんなが少しずつ頷く。
だが、俺の中では時間の重みが、どんどん増していく。12時間。720分。43,200秒。その一瞬一瞬が、砂時計の砂のように容赦なく流れ落ちていく。焦りが胸の奥で渦を巻く。
世界か、先輩か。その過酷な選択を、残された僅かな時間の中で下さなければならない。重圧で息が詰まりそうだ。
「くそっ……」
俺は思わず呟いた。拳を強く握りしめる。
「なんでこんな選択を……こんな短い時間で……」
声が震える。不条理さに対する怒りと悲しみが込み上げてくる。
先輩が俺の手を取った。その手が冷たい。でも、その温もりが少し心を落ち着かせる。
「蛍くん、一緒に乗り越えよう」
先輩の声に、強さと優しさが混じっている。
俺は必死で答えを探し続けた。頭の中で様々な可能性が駆け巡る。まるで迷路の中をさまようように。でも、どの選択肢を選んでも、何かを失わなければならない。その事実が、鋭い痛みとなって胸を刺す。そして、その決断の時間は刻一刻と迫っている。焦りと不安が押し寄せてくる。
再び星空を見上げた。無数の星が、静かに瞬いている。そこには、俺たちの未来への道が、かすかに輝いているように見えた。だが、その光は時間とともに薄れていくようにも感じる。希望と不安が、胸の中で交錯する。
朝焼けが遠くの空を染め始めた瞬間、胸の奥がキュッと締め付けられた。まるで時が止まったかのように。あの日の記憶が、鮮やかな映像となって蘇ってくる。先輩が少し上目遣いで俺を眺めた。その瞳を見つめると、目の奥がじわりと熱くなる。喉元に熱いものがこみ上げてくる。あの日も、こんな風に二人で朝焼けを見ていたんだ。懐かしさと切なさが押し寄せる。
朝焼けも、学園祭も、合宿も、全部忘れたくないって言ってた。好きを忘れた自分は、ただの抜け殻だって。先輩の言葉が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。その声が、今も耳に残っているかのよう。覚えているよ、忘れる
わけがない。先輩との思い出の一つ一つが、今の俺を作っているんだから。その確信が、胸の奥で強く灯る。
「先輩……」
俺は思わず呟いた。声に感情が溢れる。
俺の口から、自然とその言葉がこぼれる。「悲しそうな顔をしないでほしい」心の中でそう叫ぶ。先輩が忘れちゃっても、俺は絶対忘れない。先輩のことも、好きだって気持ちも。4光年の距離がなんだよ。プリンター植物の不具合? そんなので、この気持ち、こんなに好きな人を、そんなことで忘れるわけない!! 決意が、全身に広がっていく。
俺の中で、様々な感情が渦を巻いていた。恐怖、不安、そして決意。まるで嵐の中にいるかのよう。これまでの俺なら、きっとこの重圧に押しつぶされていただろう。でも、今の俺は違う。この旅で得た経験が、俺を少しずつ変えていた。強くなっている自分を、はっきりと感じる。
「みんな」
俺は静かに口を開いた。声が震えないよう、必死に抑える。
「決めた」
その言葉に、自分でも驚くほどの強さを感じる。
全員の視線が、一斉に俺に向けられる。まるで時が止まったかのよう。先輩の瞳が不安げに揺れる。哲は眉をひそめ、眼鏡の奥で鋭い光が走る。未来は息を呑み、その表情に緊張が走る。
深呼吸をして、俺は言葉を紡いだ。心臓の鼓動が、耳元で響く。
「俺が、地球に行きます」
その瞬間、世界が一瞬止まったように感じた。
地球を救えば、何十億もの命が助かる。その重みが、肩にのしかかる。でも、それは先輩が思い出を失うかもしれないということ。胸が締め付けられる。先輩を選べば……いや、そんな選択肢はない。俺たちの幸せのために、地球を見捨てることなんてできない。自己嫌悪が込み上げてくる。
でも、先輩が大切にしている思い出がなくなるなんて……。あの高校の屋上で過ごした時間、一緒に聴いた音楽、交わした約束。心臓が痛むほど鮮明に蘇る記憶たち。全てが消えてしまうなんて残酷すぎる。目の奥が熱くなる。
「蛍くん?」
先輩の声が、遠くから聞こえてくる。
「大丈夫?」
先輩の心配そうな表情が、ぼんやりと見える。
俺は我に返った。頬を伝う涙の温かさに気づく。
「先輩……俺……」
言葉が喉につまる。
そのとき、哲が腕時計を見て、顔色を変えた。その表情に、一瞬で場の空気が凍りつく。
「時間……あまりないかも」
哲の声が、重く響く。
その言葉に、全員の表情が強張った。空気が重く、息苦しい。内調から逃げ出してから、12時間は経っている。ということは、残りはあと12時間。時間の重みが、さらに増す。
「そうか……」
未来が小さく呟いた。その声に、諦めと決意が混じっている。
俺の頭に、黒石の警告が鮮明に蘇る。まるで今、目の前で再び聞いているかのように。
「24時間以内に協力の確証がなければ、我々は君を排除せざるを得ない」
黒石の冷たい声が、頭の中で反響する。
その言葉が、俺の心を鋭い刃物で突き刺すように痛む。息が詰まりそうだ。
「先輩……」
俺は震える声で言った。
「俺たちには、もう時間がない」
その言葉が、重く場に沈んでいく。
先輩の顔から血の気が引いた。その青白い顔に、俺の胸が痛む。
「そうね……」
先輩は深呼吸をして、続けた。
「でも、蛍くん。急いで決めなくていいの」
「いや、決めなきゃ」
俺は歯を食いしばった。拳を強く握りしめる。
「このまま時間が過ぎれば、先輩が……先輩が……」
言葉につまる。その可能性を口にするのも恐ろしい。
「蛍」
哲が俺の肩に手を置いた。その温もりが、少し心を落ち着かせる。
「冷静に考えよう。まだ12時間ある」
哲の声には、いつもの冷静さが戻っていた。
「そうよ」
未来も寄り添ってきた。その声に、少し希望が混じっている。
「一緒に考えよう」
未来の言葉に、みんなが少しずつ頷く。
だが、俺の中では時間の重みが、どんどん増していく。12時間。720分。43,200秒。その一瞬一瞬が、砂時計の砂のように容赦なく流れ落ちていく。焦りが胸の奥で渦を巻く。
世界か、先輩か。その過酷な選択を、残された僅かな時間の中で下さなければならない。重圧で息が詰まりそうだ。
「くそっ……」
俺は思わず呟いた。拳を強く握りしめる。
「なんでこんな選択を……こんな短い時間で……」
声が震える。不条理さに対する怒りと悲しみが込み上げてくる。
先輩が俺の手を取った。その手が冷たい。でも、その温もりが少し心を落ち着かせる。
「蛍くん、一緒に乗り越えよう」
先輩の声に、強さと優しさが混じっている。
俺は必死で答えを探し続けた。頭の中で様々な可能性が駆け巡る。まるで迷路の中をさまようように。でも、どの選択肢を選んでも、何かを失わなければならない。その事実が、鋭い痛みとなって胸を刺す。そして、その決断の時間は刻一刻と迫っている。焦りと不安が押し寄せてくる。
再び星空を見上げた。無数の星が、静かに瞬いている。そこには、俺たちの未来への道が、かすかに輝いているように見えた。だが、その光は時間とともに薄れていくようにも感じる。希望と不安が、胸の中で交錯する。
朝焼けが遠くの空を染め始めた瞬間、胸の奥がキュッと締め付けられた。まるで時が止まったかのように。あの日の記憶が、鮮やかな映像となって蘇ってくる。先輩が少し上目遣いで俺を眺めた。その瞳を見つめると、目の奥がじわりと熱くなる。喉元に熱いものがこみ上げてくる。あの日も、こんな風に二人で朝焼けを見ていたんだ。懐かしさと切なさが押し寄せる。
朝焼けも、学園祭も、合宿も、全部忘れたくないって言ってた。好きを忘れた自分は、ただの抜け殻だって。先輩の言葉が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。その声が、今も耳に残っているかのよう。覚えているよ、忘れる
わけがない。先輩との思い出の一つ一つが、今の俺を作っているんだから。その確信が、胸の奥で強く灯る。
「先輩……」
俺は思わず呟いた。声に感情が溢れる。
俺の口から、自然とその言葉がこぼれる。「悲しそうな顔をしないでほしい」心の中でそう叫ぶ。先輩が忘れちゃっても、俺は絶対忘れない。先輩のことも、好きだって気持ちも。4光年の距離がなんだよ。プリンター植物の不具合? そんなので、この気持ち、こんなに好きな人を、そんなことで忘れるわけない!! 決意が、全身に広がっていく。
俺の中で、様々な感情が渦を巻いていた。恐怖、不安、そして決意。まるで嵐の中にいるかのよう。これまでの俺なら、きっとこの重圧に押しつぶされていただろう。でも、今の俺は違う。この旅で得た経験が、俺を少しずつ変えていた。強くなっている自分を、はっきりと感じる。
「みんな」
俺は静かに口を開いた。声が震えないよう、必死に抑える。
「決めた」
その言葉に、自分でも驚くほどの強さを感じる。
全員の視線が、一斉に俺に向けられる。まるで時が止まったかのよう。先輩の瞳が不安げに揺れる。哲は眉をひそめ、眼鏡の奥で鋭い光が走る。未来は息を呑み、その表情に緊張が走る。
深呼吸をして、俺は言葉を紡いだ。心臓の鼓動が、耳元で響く。
「俺が、地球に行きます」
その瞬間、世界が一瞬止まったように感じた。
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