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プロローグ(前編)
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「どうしてこうなったのだろう……」
僕は見知らぬ街に一人佇んでいた。
その手にスマホとトラの覆面を握りしめながら。
・・・・・・・・・・・・
僕は虎谷 満
今年で35歳となる東京の一般企業のサラリーマンだ。
朝8時から働いて、夕方17時に仕事が終わる。
会社はブラック企業とは程遠い、むしろホワイト企業と言えるだろう。
食品関係の仕事で、僕は営業事務を10年ほど担当している。
仕事内容や同僚に何の不満もない。
彼らとは仕事上の付き合いをし、たまには近所の安居酒屋へ飲みに行く。
いわゆる普通のサラリーマンである。
ただ、僕には誰にも行っていない秘密がある。
趣味の食べ歩きの記録にしようと始めたブログが大ヒット。
食べ歩き系のブログランキングで、常に上位にランクインされる有名ブロガーなのだ。
食べ歩きのジャンルも幅広く、和食や中華、イタリアンやフレンチ、激から料理からスイーツまでなんでもこいだ。
特に好き嫌いもないので、どんなジャンルでも一人で食べ歩いている。
僕のブログの影響力も高く、記事をアップした次の日には紹介したお店に行列ができているらしい。
先日会社の近くに、新しいイタリアンのお店がオープンしたらしい。
食レポブロガーたるもの、新店チェックはかかさない。
早速仕事の昼休みの時に行こうとしたその時だ。
僕は急に酷いめまいに襲われ、そのまま意識を失った。
・・・・
・・・・・・
・・・ミツルくん!
そろそろ起きてくれたまえ!
誰かが僕を呼ぶ声がする。
意識を戻した僕は、目をこすりながら頭を起こした。
あれ?僕は一体何をしていたのだろう?
「ミツルくん!やっとお目覚めかね」
まだ視界がぼやけている。
混濁する意識の中で、僕は自分の置かれている状況を整理しようとしていた。
僕は昼休みに新しく出来たイタリアンレストランに行こうとして……倒れた!?
それじゃここは病院か?
こんなことをしていたらランチの時間が終わってしまう。
パンパン!
掌で頬を叩き、強引に目を覚まさせようとした。
視界が徐々に鮮明になる。
あれ?病院じゃない!?
ここはどこだ?
見慣れぬ景色が僕の前に広がっている。
会社の近くのビル街ではなく、病院のベッドでもない。
もちろん僕の自宅でもない。
真っ白い石畳のフロアに、巨大な柱がいくつも立ち並んでいる。
まるでギリシャのパルテノン神殿のような、どこか厳かな雰囲気を感じる。
僕に声をかけているのは一人の青年だ。
24.5歳だろうか?僕よりも若く見える。
ただ、彼もこの場所のように、どことなく存在感を感じる。
「ミツルくん。目が覚めたかな?」
どうして彼は僕の名前を知っているんだろう?
「ここはどこですか?僕は倒れたようだけど?」
「パンパカパーン、おめでとうございます!」
「は?」
「あなたは選ばれました!」
選ばれた?一体何を言っているんだ?
彼の言葉に動揺を隠せない。
っていうか仕事が始まる前に、早くランチに行きたいんだけど。
「もうランチに行かなくてもいいよ。君は今から異世界に行くんだから」
ごめん。本当に何言ってるか分からない。
異世界?こいつ危ないんじゃないの?
「異世界?ってよく分からないけど、そろそろ戻らないと仕事に遅れるんだけど。帰してくれないかな?っいうかここはどこ?」
「それは出来ない。そもそもここは君がいる世界じゃないしね」
「はっ、どういう…」
「君がこれから行く世界は、人族だけでなくてエルフ族やドワーフ族といった他種族が済んでいる世界。いわゆるファンタジーってやつさ」
えっ、なになに。どうなってるの?
まさか本当に異世界に?漫画やラノベの世界のことだよね?
「その世界にはよかれと思って、君のような異世界人を時々招待してるんだよ。新たな風を入れることで世界の発展にもつながるしね」
青年はそう言ってくるっと背中を向けた。
「彼らはうまくやってるよ。特に【居酒屋】や【レストラン】を開いた彼らの店は、今や異世界中が注目する人気店さ。ただ……」
彼は再度僕の方を振り返った。
「元々あった異世界の料理店の売り上げは激減。お客さんが来なくて撤退してしまった店もたくさんあるんだ」
つまり、転移者が開いた店のため、潰れた店が多くなったってことか?
「そこで人気ブロガーの君の力を借りて、元のお店の人気を取り戻して欲しいってわけ」
なんて僕を無視した都合のいい話だ。
そもそも僕がそんなこと引き受ける訳はないだろう。
「あっ、拒否とか無駄だから。ある程度お店が立て直せないと、君は元の世界に戻れないから」
は?
それってどういう……
「まっ、取りあえずサクッと行ってきてよ。僕とはいつでも連絡が取れるようにしておいたから」
そう言いながら彼は、僕に近づき両手でドンッと僕を突き飛ばした。
後ろによろめいた僕は、急に地面に足が設置している感覚を失った。
えっ、落とし穴?
僕はふわっと体が浮いたかと思うと、真っ暗な穴の中へと吸い込まれていったのだ。
「うわぁぁぁ」
その穴は深く、その底がまるで見えない。
一体僕が何をしたんだ。
こんなことをされるいわれは全く無いはずだ。
「君は僕に一体何の恨みがあるんだ!一体君は何者?」
「僕?僕はこの世界の神様だよ」
そんなチャラい神様がいてたまるかぁ!
僕はそのまま意識を失った。
僕は見知らぬ街に一人佇んでいた。
その手にスマホとトラの覆面を握りしめながら。
・・・・・・・・・・・・
僕は虎谷 満
今年で35歳となる東京の一般企業のサラリーマンだ。
朝8時から働いて、夕方17時に仕事が終わる。
会社はブラック企業とは程遠い、むしろホワイト企業と言えるだろう。
食品関係の仕事で、僕は営業事務を10年ほど担当している。
仕事内容や同僚に何の不満もない。
彼らとは仕事上の付き合いをし、たまには近所の安居酒屋へ飲みに行く。
いわゆる普通のサラリーマンである。
ただ、僕には誰にも行っていない秘密がある。
趣味の食べ歩きの記録にしようと始めたブログが大ヒット。
食べ歩き系のブログランキングで、常に上位にランクインされる有名ブロガーなのだ。
食べ歩きのジャンルも幅広く、和食や中華、イタリアンやフレンチ、激から料理からスイーツまでなんでもこいだ。
特に好き嫌いもないので、どんなジャンルでも一人で食べ歩いている。
僕のブログの影響力も高く、記事をアップした次の日には紹介したお店に行列ができているらしい。
先日会社の近くに、新しいイタリアンのお店がオープンしたらしい。
食レポブロガーたるもの、新店チェックはかかさない。
早速仕事の昼休みの時に行こうとしたその時だ。
僕は急に酷いめまいに襲われ、そのまま意識を失った。
・・・・
・・・・・・
・・・ミツルくん!
そろそろ起きてくれたまえ!
誰かが僕を呼ぶ声がする。
意識を戻した僕は、目をこすりながら頭を起こした。
あれ?僕は一体何をしていたのだろう?
「ミツルくん!やっとお目覚めかね」
まだ視界がぼやけている。
混濁する意識の中で、僕は自分の置かれている状況を整理しようとしていた。
僕は昼休みに新しく出来たイタリアンレストランに行こうとして……倒れた!?
それじゃここは病院か?
こんなことをしていたらランチの時間が終わってしまう。
パンパン!
掌で頬を叩き、強引に目を覚まさせようとした。
視界が徐々に鮮明になる。
あれ?病院じゃない!?
ここはどこだ?
見慣れぬ景色が僕の前に広がっている。
会社の近くのビル街ではなく、病院のベッドでもない。
もちろん僕の自宅でもない。
真っ白い石畳のフロアに、巨大な柱がいくつも立ち並んでいる。
まるでギリシャのパルテノン神殿のような、どこか厳かな雰囲気を感じる。
僕に声をかけているのは一人の青年だ。
24.5歳だろうか?僕よりも若く見える。
ただ、彼もこの場所のように、どことなく存在感を感じる。
「ミツルくん。目が覚めたかな?」
どうして彼は僕の名前を知っているんだろう?
「ここはどこですか?僕は倒れたようだけど?」
「パンパカパーン、おめでとうございます!」
「は?」
「あなたは選ばれました!」
選ばれた?一体何を言っているんだ?
彼の言葉に動揺を隠せない。
っていうか仕事が始まる前に、早くランチに行きたいんだけど。
「もうランチに行かなくてもいいよ。君は今から異世界に行くんだから」
ごめん。本当に何言ってるか分からない。
異世界?こいつ危ないんじゃないの?
「異世界?ってよく分からないけど、そろそろ戻らないと仕事に遅れるんだけど。帰してくれないかな?っいうかここはどこ?」
「それは出来ない。そもそもここは君がいる世界じゃないしね」
「はっ、どういう…」
「君がこれから行く世界は、人族だけでなくてエルフ族やドワーフ族といった他種族が済んでいる世界。いわゆるファンタジーってやつさ」
えっ、なになに。どうなってるの?
まさか本当に異世界に?漫画やラノベの世界のことだよね?
「その世界にはよかれと思って、君のような異世界人を時々招待してるんだよ。新たな風を入れることで世界の発展にもつながるしね」
青年はそう言ってくるっと背中を向けた。
「彼らはうまくやってるよ。特に【居酒屋】や【レストラン】を開いた彼らの店は、今や異世界中が注目する人気店さ。ただ……」
彼は再度僕の方を振り返った。
「元々あった異世界の料理店の売り上げは激減。お客さんが来なくて撤退してしまった店もたくさんあるんだ」
つまり、転移者が開いた店のため、潰れた店が多くなったってことか?
「そこで人気ブロガーの君の力を借りて、元のお店の人気を取り戻して欲しいってわけ」
なんて僕を無視した都合のいい話だ。
そもそも僕がそんなこと引き受ける訳はないだろう。
「あっ、拒否とか無駄だから。ある程度お店が立て直せないと、君は元の世界に戻れないから」
は?
それってどういう……
「まっ、取りあえずサクッと行ってきてよ。僕とはいつでも連絡が取れるようにしておいたから」
そう言いながら彼は、僕に近づき両手でドンッと僕を突き飛ばした。
後ろによろめいた僕は、急に地面に足が設置している感覚を失った。
えっ、落とし穴?
僕はふわっと体が浮いたかと思うと、真っ暗な穴の中へと吸い込まれていったのだ。
「うわぁぁぁ」
その穴は深く、その底がまるで見えない。
一体僕が何をしたんだ。
こんなことをされるいわれは全く無いはずだ。
「君は僕に一体何の恨みがあるんだ!一体君は何者?」
「僕?僕はこの世界の神様だよ」
そんなチャラい神様がいてたまるかぁ!
僕はそのまま意識を失った。
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