異世界食レポ!~現地の料理店を冒険しながら紹介~

めしめし

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プロローグ(中編)

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・・・・・・

・・・・・・・

・・・ん?



気が付くと僕は草原に横たわっていた。



一体ここはどこなんだろう?

あいつ、僕を突き落としやがって。

やっぱり夢じゃなかったんだ。



ここがあいつが言う異世界なのだろうか?

それっぽいものが何もないので、どうもはっきりしない。

うん、服は着ている。

カバンもスマホも持っている。

ん?これは何だろう。



僕の右手には布のような物が握られていた。

こんなもの僕は持っていなかったはずだ。

おそるおそる布を広げてみると、どうやら覆面のようだ。

往年のタイガーマ〇クを彷彿させる、トラ顔の覆面だ。



一体何のためにここにあるのかを考えてると、急に僕のスマホが大きな音を立てて鳴り響いた。



えっ!?電波が届いてる?一体誰から?

スマホの画面を見てみると、通知番号無しで『神様』と胡散臭そうな発信者名が表示されていた。



電話に出ると、聞き覚えのあるチャラい声が聞こえてきた。



「やっほーミツル君!異世界には無事到着したかな?」



反射的に通話を切ろうとしてしまったが、こらえて返答した。



「異世界って全く実感ないんだけど。本当にここは異世界?」

「そうだよ。ここは魔法あり、魔獣あり、笑いありの君の世界と違うファンタジーの世界。ほら上を見てごらん。君たちの世界には絶対存在しない生物がいるよ」



上?

僕はチャラい神様の言う通り上を見上げてみると、コウモリのような翼をもったトカゲのような爬虫類が集団で飛行していた。

その背中には鎧をまとった騎士のような人たちが乗っている。



えっ、あれってドラゴン?



「いや、あればワイバーンさ。低級のドラゴンにあたるかな。あれは、これから君が行く街ウメーディの竜騎兵だろうね」



確かにあれは僕らの世界にはいない。

本当に異世界に転移したのか?



「これから君にしてもらいたいことを伝えるよ。君はこの異世界で落ち込んでいる異世界の料理店を救うんだ」

「それは前も聞いたけど、救うってどうするの?」

「君にはそれぞれの料理店へ覆面調査員として行ってもらい、その店のことやメニューの食レポを書いてもらう。それをこの国の雑誌社に投稿するんだ」

「えっ、どういうこと?僕はこの国のこと何も知らないけど?」



異世界に来たばかりの人に頼む依頼じゃない。

そもそもこの世界の言葉や文字すら知らないんだから。



「それは君のスマホを使えばいい。そのスマホには君がいた世界の機能をパワーアップして残してある。」

「えっ、スマホ使えるの?」

「いわゆるマジックアイテムってやつさ。翻訳も写メもなんだってできるんだ」

「それは便利だけど、でもこの世界に無い物なんでしょ?怪しれるんじゃないの?」



考えてなかったのか。

しばらく沈黙が流れた。



「と、とにかくそれを使って、調査と食レポをしてみてよ。方法はまかせるからさ」

「スマホは分かったけど、このマスクは何なの?トラのマスクのようだけど」

「あー、それね。一度被ってみてよ」



これをかぶる?

訳が分からないまま、僕はトラのマスクを被った。

被ってみると、通常のマスクのように視界の狭さと息苦しさは感じない。

まるで何も被っていないかのように、周囲を見渡せるし、口も楽に開閉できる。



「で、これは何なの?」と僕は彼に尋ねた。



「えっ、何って?覆面調査には覆面が必要なんでしょ?」



えっ。まじで?

まるっきり意味をはき違えているみたいだ。

覆面なんか被ってお店に行ったら、逆に目立ってしまう。正体を隠して調査する意味はないし。



「覆面調査に本当の覆面なんか必要ないでしょ?もう外していい?」

覆面を脱ごうとするも脱げない。

覆面を脱ごうと布部分をつかもうとしても、何の手ごたえもないのだ。

まるで覆面が皮膚に同化したような、一体感すら感じる。



「ミツル君ごめん!それは脱げないよ。覆面調査員になりきるために取り外せないように設定しておいたから」



は?脱げないってどういうこと?

僕はこの世界でずっと覆面をしながら生活しなきゃいけないってこと?



「実はそうなんだ。いわゆる呪いのアイテムってやつ?でも正体がバレないからいいっしょ?」



いいって何がいいんだよ!?

ふつふつと怒りがこみ上げてきた。



「ずっとマスクつけっぱなしって、食事はどうするの?お店にトラの覆面で来た人が入ってきたら警戒されるでしょ!っていうか追い出されるに決まってる!」



僕は爆発しそうな怒りを彼にぶつけた。



「ここは大阪とちゃうねんで!」



僕は普段は標準語で話すようにしているが、興奮すると無意識に関西弁が飛び出してしまう。



「あー、食事は大丈夫。それを付けてても食事はできるし、違和感は……相手の方が慣れてくれるんじゃない?」



それでいいのか異世界!

僕はスマホのミラー機能で、自分の姿を写してみた。

スマホに写ったのは、怪しいトラのマスクをつけた中年のおじさん。

仕事着のスーツ姿がやけに浮いて見える。



「この世界は獣人族も多いから、心配ないと思うよ……たぶん」



なってしまったものは仕方がない。

ここは現実的にこれからどうするかだ。

取りあえず街に行けばいいんだよね?

まずは生活する拠点を作らないと。



そうだ、お金。

お金はいるよね?



「もちろん、お金は必要だよ。お金がないと料理屋にも行けないからね」



もちろんそうだ。

どれくらい援助してもらえるの?



「援助?それは無理だよ。お金は自分で稼がなきゃ」



え?僕ここのこと何も知らないんだけど。

お金も自分で稼げってこと?



「もちろんじゃない、何言ってるの?自分で稼がないと食べていけないじゃない」



ごめん、話がわからない。

神様の話をまとめれば、僕の仕事は食レポを書いて投稿することと、そのための資金は自分で稼がいけないってこと?



ああ、そうか。

僕には異世界定番のチートスキルがあるんだね?

戦闘力が増す能力とか、チート魔法が使えたりとか、お金が簡単に稼げる能力とか付与してあるんだよね?だよね?



「そんなわけないじゃん。君には何のスキルも付与してないよ」

「えっ、チートスキルは?」

「君にはスキルは何もない。その代りスマホばバージョンアップできるようになってるよ」

「スマホだけ?他には?」

「残念ながら君が描いているようなスキルは何も付与されていないよ。だって、食レポにスキルなんていらないでしょ。後は自分で頑張ってね」



神様はそれだけ言って通話を終了した。

今まで感じたことのないような不安が襲って来たのは言うまでもない……。
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