異世界食レポ!~現地の料理店を冒険しながら紹介~

めしめし

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5店目「異世界定番の串焼き!実は凄い!? 後編」

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帰りの道も魔獣も現れず、労せず街の門へとたどり着いた。
門番の兵士にギルドカードを見せると、すんなりと門を通してくれた。

僕たちは寄り道することなく、真っすぐギルドに向かう。
初依頼を達成した僕たちは、ギルドに向かう足も軽やかだ。
同じ道でも依頼を達成した後は、こうも感じ方が違うのかと思ってしまう。

ギルドに到着した僕たちは受付カウンターに向かう。
依頼終了後の専用カウンターは右端となる。
依頼申請カウンターと依頼達成カウンターを分けたのは、現在のギルド長の発案らしい。
流石ギルド長、最も効率の良いシステムを構築している。

依頼終了カウンターの担当は、猫の獣人受付嬢のミーシャだ。
背の高いスレンダーグラマー系の美人で、どうも制服がきゅうくつそうだ。

「クエスト終了お疲れさまでした。ギルドカードのご提出をお願いします」
僕とミトラはギルドカードを提出すると、ミーシャはバーコード読み取り機のような機械にギルドカードをかざす。

「ミトラさんとミツルさんは、薬草採取のクエストを受領されたのですね。採取物をお願いします」
僕はカバンからキュアグラスとその他の薬草を取り出し、カウンターの上に乗せる。

「はい、ありがとうございます。それではチェックしますね。えっ、まだあるんですか?」

僕は彼女の方を見て、ニコリと微笑むと次々に薬草をカバンから取り出した。
カウンターに一山、二山と薬草が積み上げられていく。

「えっ……。これ全部採取されたのですか。しかもレアな薬草も沢山混ざっているようです」

全ての薬草をカウンターに乗せた時には、カウンターの周りには人だかりが出来ていた。

「おい、またトラ顔紳士が何かしたってよ」
「あいつ、何気に凄いよな。変なマスクかぶってるのにな」

ミーシャはキュアグラスの個数だけ確認すると、僕の方へと向き直した。

「依頼達成お疲れさまでした。一旦、キュアグラス5つ分の報酬だけ先にお渡しします。その他の薬草類については鑑定士に回しますので、明日追加報酬をお渡しいたします」

ミーシャはそう言うと、金貨2枚と銀貨6枚を手渡した。

「えっ、こんなにも!?」

僕とミトラは思わず顔を見合わせた。
薬草採取の相場よりもかなり多い報酬なのだ。

「現在、キュアグラスは乱獲の影響でかなり貴重な薬草になっているんです。まさかこれほど早く採取されるとは驚きです。この報酬は現在のキュアグラスの適正金額なんです」

そうすると追加報酬は、かなり大きな金額になるのかもしれない。
なんにせよ、僕たちは初依頼を達成したのだ。
せっかくだから、このお金で何かお祝いしてもいいのかもしれない。

「ねぇ、せっかくだから市場に行きましょ。私食べたいものがあるの」



市場はお祭りのような熱気に包まれていた。
同じウメーディの街中と言えどもこうも違うのか。
真っ先に感じたのが人の多さだ。
市場はそれほど広いエリアではないが、道幅だけは異様に広い。
その広い道幅が人でいっぱいになっているのだ。

露店には見たこともない果物や食材が並び、店主が大声を張り上げて営業をしている。
陽気な住民たちが、冗談を交えながら執拗に値引き交渉をしている。
店主も笑顔で冗談で返すが、値引きに関しては簡単には折れないようだ。

市場のあちこちで音楽が鳴り響き、大道芸をしている若者までいる。

「これがいつもの風景なのよ」

ミトラもさも見慣れたように返すも、興奮は隠しきれないらしい。
いつも以上に足早に人ごみを押し分け進んでいる。

これははぐれないようにしないと。
僕はミトラを見失わないようについて行った。

辺りから美味しそうな匂いが漂ってくる。
よく見ると露店では様々な料理が販売されている。
屋台で売られているたこ焼きやお好み焼きみたいなものだろう。
見たこともないような、珍しい料理ばかりだ。

ミトラは一体どこまで行くのだろう。
もう僕はこの誘惑に耐えられそうもない。

「着いたわ」

ミトラが立ち止まったのは、露店にしては大きなお店だ。
大型のテントのような造りで、中はだだっぴろく、いくつもの席が用意されている。

「ミトラここは?」
「串焼きのお店よ」

串焼きと言えば、ラノベの異世界ものの定番料理だ。
作品では、高貴な女性が主人公と共に串焼きにかぶりつく姿が印象的だった。

「この店は自分で串焼きを作るの」
「えっ、それってどういう……」
「いいから行きましょ」

ミトラは僕の手を強引に引きながら、テントの中に入った。
すると、ターバンを巻いた背の高い男性が僕らに話しかけてきたのだ。

「何本?」
「えっ?」

男性は口数少なく質問すると、ミトラは「1本ずつよ」と指で合図した。
すると、男性は50㎝ほどもある剣の装飾がされた串を、僕たちに1本ずつ手渡した。

「さっ、次は材料よ」

ミトラは再度僕の手を引き、テントの中央にある机へと案内した。
机には大きめに切られた様々な肉や野菜、きのこなど様々な食材が皿に盛られていた。

「このお店では、串焼きを自分で作るの!」

なるほど、様々な具材を自分の好きなだけ串につけ、自分の好きなように焼いて食べるというものだ。
焼き鳥と焼肉を合わせたような、キャンプ料理のようなお店なのだろう。
確かにこれは楽しい。

一体どんな食材が並んでいるのだろう。

「おすすめはワイルドマトンやオークね。ジャイアントボアの肉も捨てがたいわ。野菜ならオニアンはおすすめよ。トマテを付けると見た目が良くなるわよ」

結局はよく分からないということか。
一つの串に刺して焼くなら、同じくらいの時間で焼き上がる食材を選んだ方が良いだろう。

ぼくは肉を中心に串に刺していき、オニアン(玉ねぎ)を間に挿入した。

「食材が決まったらお金を払うのよ。もちろん私の分も出してくれるのよね?」

ミトラは案外しっかりしてる。僕は苦笑いしながら頷くと、店員に料金を計算してもらった。

「銅貨8枚(約800円)だ」

うん、安い!
客に全てを委ねるからってこの量で価格は破格だろう。
さすがミトラ。いいお店をよく知っている。

「じゃあ焼きに行くわよ」

ミトラは僕を焼き場へと連れて行った。
巨大な串焼き台に10人ほどのお客さんが自分の串を焼いていた。
どの人も顔から汗が吹き出ているが、特に気にせず自分の串をしっかり焼いているのだ。

「このカメにドボッと串を付けてから焼くの。ソースが飛び散るから気をつけて」

焼き場の隣には1m以上もあるカメが置かれていた。中には黒色のソースがたっぷりとはいいているようだ。

ミトラはお手本とばかりに、ツボの中にズボッと串を浸し、間髪入れずに焼き台に串をセットした。

「二度漬け厳禁ね。ソースに浸すのは一度だけよ」

なんと異世界にも二度漬け禁止のルールがあった。
なんだか急に親しみが湧いてきた。

僕も同じ様にツボにしっかりと漬け、焼き台に自分の串を置いた。
ぱちぱちと音を立て、具材に火が通り始める。
肉の脂が落ちると、ジュっという音と共に香ばしい匂いと音が辺り一帯に広がる。

串焼きというのは不思議な食べ物だ。
食材にタレをつけて焼くという単純な料理なのに、これほどまでに心が惹きつけられる。
炎による癒し効果もあるのだろう。
炎の揺らめきを見ているだけで、不思議と気持ちが落ち着いてくるのだ。

色々考えている間に、どうやら焼き上がったようだ。
異世界初の串料理。香ばしくて旨そうだ。
隣のミトラはすでにがっついている。
口元にたっぷりタレがついているのだが、ここは大人しく言わずにおこう。

まずは一口。僕はソフトボールくらいある巨大な肉にかじりついた。
これは旨い!
これは羊の肉であろうか、羊特有の独特の風味と旨味が口中に押し寄せる。
タレの濃厚な味わいとしっかりついた下味が、羊の臭みを完全に消しているのだ。
さらに外側の焦げた脂の香ばしさと、肉の中の脂の甘味が見事なまでに調和している。
極めつけは香辛料だ。
クミンによく似たスパイスは、僅かにカレーのようなオリエンタルな味わいを演出している。

次の肉はオークだろうか?この脂身の甘さと、濃厚な肉の味わいは最高級の豚肉すらかすんでしまう。
贅沢にぶつ切りされたオーク肉は、シンプルに食べるのが一番旨いのではないだろうか?
串焼きにはベストマッチだ。
この肉だけでご飯何倍も食べれ、ビールも5本くらいは軽いだろう。

もちろんオーク肉だけではない、間に挿入したオニアン(玉ねぎ)の甘みと香りも、オーク肉の味わいを高めているのだ。
豚肉との間の玉ねぎ、僕は日本でもこの組み合わせが大好きだった。

最後の肉は何だろう?ささ身のようにあっさりしているが、パサパサではなく弾力がすごい!
噛めば噛むほどに味わい深く、なんだか元気になりそうなそんな感じすらする。

「それは、スモールサーペントの肉ね、いわゆる蛇の肉よ」

蛇の肉は初めて食べた。
これはこれで美味いもんだな。
このタレの味わいが淡白な蛇の肉の味を何倍にも高めているようだ。

あっという間に一串を食べてしまった。
これは危険だ、病みつきになってしまう。
エールでも飲もうものなら、酔っぱらうまで食べ続けてしまうだろう。

ぜひまた来たい!
そんなお店だった。
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