朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

文字の大きさ
102 / 120
第4章 7階層攻略編

第102話 戦闘開始

しおりを挟む
ルールが決定し、僕とタケル、うさぴょんは作戦会議を行った。
相手は僕らの30倍以上いるので、個々で戦うのは圧倒的に不利だ。
ここは集団対決に慣れていて、集団殲滅攻撃スキルの多い僕が主軸で戦うのが良いだろう。
彼らには僕が漏らした敵を各個撃破してもらうのはどうだと提案。

タケルは頷いてくれたが、うさぴょんは自分がその役をやりたいと提案。
花柄の宝箱という少女っぽい箱の持ち主だが、中身は反対。
血に飢えた野獣のように好戦的なのだ。

(私も集団戦闘ばかり行ってきた。
だから私も集団戦のスキルを沢山持ってるのよ。)

とても頼もしいが、僕はまだ彼女のことを何も知らない。
どの程度の強さ・スキルを持っているのか全く分からないのだ。
この戦闘は圧倒的不利な条件の下で行われる。
作戦が失敗すれば、さらに窮地に追い込まれることが予測される。

そこで、初っ端の攻撃を彼女にさせてみて実力を図りたいと提案した。
彼女がそこまで強ければ僕と彼女のツーアタッカーとして、タケルにはディフェンダーの役割を任せたいと思う。

(私はそれでもいいわよ。
久しぶりの大戦闘!興奮しちゃうわね!)

なんて生き生きしてるんだろう。
彼女は本当に戦闘が好きなのかもしれない。

(兄貴、俺は回復魔法は持ってないから突っ込み過ぎないようにしろよ。
うさぴょん、お前本当に大丈夫か?けったいな宝箱して。)

(あんたみたいな、センスのかけらもない宝箱の持ち主に言われたくないわよ。
夜露死苦ってバッカじゃないの?)

僕に言わせればどっちもどっちだ。
今までこの2人はどうやって生きてこれたのだろう。
この個性的な2人が戦闘で噛みあうかどうか、少々心配である。

僕は具体的な作戦を2人に話し、作戦会議は終了した。

一方相手陣営、審判のジークフリートが積極的に作戦会議に関わっている。
やはり一番注意すべきなのはジークフリートだろう。
どのタイミングで戦闘に関わってくるのか、非常に気になるところだ。

相手チームで気になるのはジークフリートだけではない。
あきらかに目立つゴールドの宝箱の持ち主、箱助。
講演前に僕が話した印象では、攻撃系スキルに特化したミミック。
冷静沈着で僕と話している最中でも、全く隙を見せなかった。
おそらく彼が相手チームのリーダーだろう。

防御系に特化しているのは、メタルボックスの持ち主のアミナ。
アミナはギリシア語で「防御」を意味しているらしい。
メタルボックスの強さは、僕が一番よく知っている。
硬く、機動力があり中級レベルの宝箱の中でもトップクラスのスペックなのだ。

続いて僕と同じファラオボックスの持ち主のアヌビス。
アヌビスはエジプト神話に登場する冥界の神様のことだ。
おそらく彼は暗黒魔法や暗黒系スキルの使い手だろう。
彼の背後から隠すことが出来ない量の黒いオーラが漏れ出している。

純白の白い箱に赤十字が描かれた宝箱のナースは、回復系に特化しているのだろうか?
講演前に話した印象では、ミミックには珍しい丁寧な言葉遣いで物腰の柔らかい印象を受けた。
ただ、どこかタケルやうさぴょんに似た個性的な印象を持った。
大人しい印象とは別の性格をもっているのかもしれない。

ビックリ箱風のにぎやかな装飾がされたファニーボックスの持ち主が、重複亭箱太郎だ。
元々芸人を目指してたと話す彼は、元の世界ではマジシャンの真似事もしていたらしい。
僕と話している間も、簡単なマジックを披露してくれた。
実はジークフリート以外では、彼が一番やっかいだと思う。
突拍子もない手段で攻撃をしてくるかもしれない。

他にも強そうな箱、警戒すべき箱が沢山いたが、ジークフリートを併せた6体に特に注意すべきであろう。

どうやら向こうも作戦会議が終わったようだ。
戦闘準備は完了。
審判のジークフリートは、双方のチームが部屋の中央に集合するように指示をする。

僕たちのチームと、相手のチームは部屋の中央で向かい合う。
こうしてみると圧倒的な戦力差。
相手のメンバーのみなぎる闘志に圧倒されそうになってしまう。

僕のチームメンバーを見ると、タケルは冷静だ。
落ち着いて審判の合図を待っているようだ。

うさぴょんを見ると、小刻みに震えており呪文のように何かを唱えている。
聴覚を凝らして彼女の声を拾ってみると、

「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す・・・・」

あ、危ない…。なんなんだだこの子は…

審判のジークフリートが僕たちの間に移動し、舌を天井に向けて長く高く伸ばした。
「それでは、はじ…」

ジークフリートが始めの号令をかける前に、うさぴょんが飛び出した。
彼女の目の前に、直径10メートルほどの大きな岩がいくつも出現する。
これは【岩石】のスキルだ。
この岩の量、大きさ共に僕よりも遥かにスキルレベルが高いことが分かる。
うさぴょんは間髪を入れずに、その岩石を敵陣営に向けて発射した。

意表を突かれた攻撃に、防御すら忘れたミミックも多い。
ほぼ無防備の状態で、うさぴょんの岩石群は相手陣営に直撃した。

爆発に近い音が上がり、爆心地にいた無数のミミックたちが吹き飛ばされた。
箱が潰れ、舌が裂け、悲鳴が部屋中に響く。

しかも1度だけで終わりではない。
うさぴょんは次々に岩石を召喚させ、止まることなく相手陣営に発射する。
その光景はまるで、流星群が地球を目がけて落下し続けているようだ。
容赦なく岩の塊が、彼らに襲いかかった。

うさぴょんはここまで強かったのか。
確かに集団戦闘ばかりをしていたという言葉にも頷ける。
ただ、見た目とのギャップが激しすぎる。
今後も彼女を怒らせない方が得策だろう。

ただ、攻勢はいつまでも続かなかった。
飛んでくる岩石を粉々に砕くゴールド宝箱の箱助。
岩石を文字通り消してしまうファニーボックスの重複亭箱太郎。
味方の前に岩石よりも大きな盾を召喚し、岩石を防ぐメタルボックスのアミナ。
岩石を暗黒魔法で塵に変える、ファラオボックスのアヌビス。
そして傷ついたミミックを瞬時に回復させる赤十字箱のナース。
やはり、彼らの実力はミミックたちの中でも群を抜いている。

箱助の号令が響き渡る。
ミミックたちは即座に陣形を立て直した。

(来るぞ!)
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

処理中です...