朝起きるとミミックになっていた ~捕食するためには戦略が必要なんです~

めしめし

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第4章 7階層攻略編

第112話 リザードマンの首領

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部屋の奥の玉座には眼帯をつけた一際大きなリザードマンが座っていた。
他のリザードマンのように鎧や文官衣装は着ておらず、上半身は裸のままだ。
鱗に覆われた皮膚に、いくつもの傷跡が確認できる。
感じる威圧感は他のリザードマンとは別格で、歴戦の戦士のようなオーラをまとっている。
彼はリザードマンの上位種、リザードキングらしいのだ。

「お前らが獣人たちを排除したミミック共か?」
キングは口を開いた。
発する一言一言に、ビリビリと圧を感じる。
ただ、ここで威圧に負けるわけにはいかない。
僕らは対等に交渉しにきたのだ。

(厳密には僕ではない。僕は結果として加担しただけだ。)
僕は即座に返答をした。
獣人族を殲滅させたのはリュウだが、いちいち言い訳をする必要もないだろう。

「ふん、そのことはどうでもいい。負けたのは奴が弱かったからだ。
族長を倒したのはお前だろう?
奴から聞いていた話とお前は印象がよく似ている。」

(族長はここにいるのか?)

「ああ、奴はここで保護している。一緒に転がっていた人族のメスもな。」

やはりここでリリアも保護されているのだ。
どうにかして彼女から魔神の鍵を受け取らなければならない。

(その人族の女を迎えに来たのだが。会わせてはくれないだろうか?)

「なぜ?」

キングの問いに一瞬固まってしまった。
「なぜ?」とはどういうことだ?

(仲間を迎えに来たというのは、理由としておかしいだろうか?
こちらで保護してくれたことには感謝する。
出来る限りのお礼もしたい。
今度は我々が彼女を保護したいのだ。)

「だったらもう少し早く来れば良かっただろう?
なぜ今更なのだ?
我らが保護しなければ、あのメスは死んでいたぞ。」

返す言葉もない。
確かに僕は彼女を見捨てた。
あの場所から逃げることで精一杯だったのだ。
僕は彼女がリュウの攻撃で死んだものだと決めつけていた。

確かにキングの言う通り、もっと早く探すことも出来た。
ハルクが亡くなって以来、僕はあの時のことを思い出さないようにしていたのだ。

「お前らが欲しいのは、あのメスではなくこれだろ?」
キングは、おもむろに台座の奥に手を突っ込むと、ドクロのレリーフが入った鍵を取り出した。

「動けないヤツが持ってても仕方がないだろう?
俺が有効活用してやるのさ。」

キングは釘付けになっている僕の目の前で、鍵をくるっと一回転して見せた。

(光さんちょっと…)
ナースがキングと話す僕の間に入ってきた。

(どうした?リュウからメッセージがあったのか?)

僕の問いにナースはこくんと頷く。
ナースは僕にリュウからのメッセージを僕のチャットに転送した。

早速メッセージを開いてみると、

「やっぱり悪魔の鍵持ってないやん。
まあええわ。自分で取りに行くわ。」

この一言だけが入っていた。
どこで持っていないことがバレてしまったのか?
取りに来るってどういう意味?

メッセージが届いたのは僕らだけじゃなかった。
血相を変えたリザードマンの兵士が、キングの元に駆け寄った。

「報告いたします。斥候から『魔族の集団がこちらに向かってきている』との連絡を受けました。
いかがいたしましょう?ご英断をお願いいたします。」

タイミングが良過ぎる。
リュウからのメッセージを受け取った瞬間に、最西端も敵からの襲撃を受けるようだ。
もしかすると、魔族とリュウはつながっているのか?
いや、それはないだろう。
リュウは魔族に目の敵にされていた。
魔族とリュウが共闘することはあり得ないのだ。

(リザードマンたちは、戦闘に長けているのか?)
僕はキングに質問をした。

「ああ、強いぜぇこいつらは。
ただ、魔法には弱いけどな。手伝ってくれるんだろ?」

キングは僕の方を見てニヤリと笑みを浮かべたのだ。
ここで恩を売っておくのも悪くはない。

(手伝ってやってもいいぞ。)

「ああ、よろしく頼むわ。鍵はやれんけどな。」

僕らは、お互いの顔を確認し再度ニヤリと笑った。
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