恋のたまご、割るのはダレ?

ペコリーヌ☆パフェ

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嵐を呼ぶニューフェイス

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「ううう……らっれ……貴也ぎゃっ」




ジンジンする痛みに涙が溢れそうになるゆうみを見て、貴也は眉を歪めて手を離すと、素早く頬へ唇を押し付けてきた――つまりキスしたのだが、その瞬間瞼を閉じていたゆうみは全く状況を理解出来ていなかった。

貴也にキスされたとも知らず、頬を両手で覆って睨み付ける。




「滅茶苦茶痛い……」



ゆうみの恥じらいのリアクションを期待していた貴也はガクッとするが、苦笑いを浮かべ、ゆうみの鼻を摘まんだ。



「むがっ」

「今日の全体朝礼で新入社員を紹介するらしいぞ」

「べっ?」

「なんでも噂じゃあ、お前の好きな金髪碧眼野郎らしいがな」

「へええっ?」

「喜んでんじゃねーよ!」




貴也は、目を輝かすゆうみの頭を軽く拳骨で叩く。








「いったっ!……あんたってばちょっとさっきから――」



ゆうみは貴也に反撃しようと腕を振り上げるが、口元に痣があるのを見付けて固まった。

良く見れば、鼻の頭に絆創膏が貼ってある――だが決して無様でなく、貴也がそれをするとまるでお洒落の様に粋に見えてしまうのがこれまた憎らしい。

昨夜の生々しい記憶が蘇り、ゆうみは寒気に震えた。

股間に頭突きして、鼻にもパンチをかまし、確か鼻血を流していた筈だし、腕にも噛みついた……なら、腕にも痕があれば、昨夜の出来事は現実だと言うことになる。

ゆうみは貴也のシャツをガッと捲ると血走った目で点検する。



「お、おい……なんだよっ」



驚く貴也の顔を思わずゆうみは凝視して訊ねた。



「ね……ねえっ……これって」

「あ?……なんかなあ……昨夜飲み会で異様に疲れて帰ってソッコーで寝たんだけどさ、獰猛な珍獣に襲われる夢みてさ――そしたら起きたら身体中いて――しさ、こんな歯形まで付いてるわ、気味わりいよな」



貴也は顔をしかめて腕を擦った。









「ゆ……ゆゆゆ夢っ?」



ゆうみは信じられない思いで貴也の腕をぎゅう――と握ったままで震えて呟いた。

股間に頭突きした時の何ともいえない「ぐにゅん」という感触、噛み付いた時に口の中に広がった鉄のような血の味、鼻血を流しながら這ってくる貴也の凄まじい気迫のこもった目――

あのリアルな記憶が全て夢……だと?そんなバカな……と思うが、夢なら夢の方がゆうみにとっては有り難い。

まだ「理想の王子様」に会ってもいないうちにスーパー女たらし大魔人の貴也の毒牙にかかるなど、あっては為らない事だ。



――この広い世界の何処かにきっと私の思い描く王子は存在する筈……!地球上に居る殿方の0、00000……%に満たない比率確立かも知れないけど……きっといる!
……いるって信じたい――!
いつか巡り会うその日まで……鈴田ゆうみは綺麗な身体のままでいるのよおおおおお――!!










「ぬおおおおお……ふぐっ……むきゅーっ!」



心の叫びが実際に声となって出ていた事に気付いたのは、貴也が苦虫を噛み潰す様な顔でゆうみの唇を思いきり摘まんで強制的に黙らせたからだった。



――ちょっと――!王子に取っておいてあるこのピュアピュアリップ☆を気安く触んな――!
……と怒鳴りたかったが、殺されそうな目付きで貴也に睨まれ、ゆうみはビクビクしながら彼を見詰めるしかなかった。



そんな事をしている間に会社に到着し、ゆうみは貴也にまたしても抱えられ降ろされた。



「ちょー!やめてよっ!会社の玄関でこんな所を女子どもに見られたら殺され――」

「……しゃーないな、許してやるよ」



貴也は、蒼白になるゆうみを見てクスッっと笑い、そっと降ろす――が、耳元に低い声でこう囁いた。



「――金髪男よりもいい男がここに居る事、忘れんなよ」









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