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決心
③
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ほなみは深呼吸して智也の頬にそっと触れ、口付けた。
智也は戸惑いその目を見開く。彼女のほうからそんな風にされたのは初めてだった。眉をひそめたのはほんの一瞬。智也はみるみるうちに幸福な微笑みで一杯になる。
妻の口付けに応え、腕の中のたおやかな身体を掻き抱き、甘える様に胸に顔を埋めた。ほなみは、智也の頭を抱き締め、髪を撫でる。
(上手にやるのよ……私)
「ずっと放っておかれて、憎たらしかったから驚かしただけなの……」
「本当、なのか……?」
「『岸君』て呼んでみたんだけど……?違う風に聞こえたかな?小学生の頃はそう呼んでたよね?……懐かしいね……うふふ」
智也は、一瞬訝しい色を目に浮かべる。
彼の口が何かを言う前に、ほなみは彼に抱きつき唇を奪った。熱烈に夫の咥内を舌で掻き回し指で背中を愛撫すると、彼は甘く息を漏らし、再び覆い被さってきた。
「あっ……智也っ」
ほなみは、首筋を烈しく吸われ、身体を震わせた。
智也は、情欲と切ない恋情の混ざった眼差しで妻を見つめ、苦しげに呟く。
「……お前が……もしも他の男と……そんなことを考えただけで俺は……狂いそうになるんだ!」
「……貴方って頭がいいのに、馬鹿みたいね?……そんな事有り得ないから」
ほなみは、口に放りこんだとたん蕩ける砂糖菓子のように柔らかく笑うと、指で智也の少し歪んだ口元に触れてみる。
形の良い眉に、きりっとした切れ長の瞳、高く通った鼻筋に、魅力的な唇――
誰が見ても、彼を美形だと言うだろう。
この完璧な人を、欺かなければならないのだ。
――西君を守る為に。何よりも私自身の為に――
ほなみは、とっておきの切り札になる言葉を、呪文を唱えるような気持ちで智也に囁いてみせた。
「……貴方を、愛してる」
「ほなみ……!」
智也は声を震わせ、ほなみの身体じゅうに口付けた。
夫に抱かれながら、ほなみは瞼を閉じ、瞼の裏に焼き付いている西本祐樹の面影を追い求めていた。
――たとえあの日限りの愛だったとしても私が本当に焦がれているのは西君だ。
――智也の前では、夫を愛する妻を演じるの――
智也は戸惑いその目を見開く。彼女のほうからそんな風にされたのは初めてだった。眉をひそめたのはほんの一瞬。智也はみるみるうちに幸福な微笑みで一杯になる。
妻の口付けに応え、腕の中のたおやかな身体を掻き抱き、甘える様に胸に顔を埋めた。ほなみは、智也の頭を抱き締め、髪を撫でる。
(上手にやるのよ……私)
「ずっと放っておかれて、憎たらしかったから驚かしただけなの……」
「本当、なのか……?」
「『岸君』て呼んでみたんだけど……?違う風に聞こえたかな?小学生の頃はそう呼んでたよね?……懐かしいね……うふふ」
智也は、一瞬訝しい色を目に浮かべる。
彼の口が何かを言う前に、ほなみは彼に抱きつき唇を奪った。熱烈に夫の咥内を舌で掻き回し指で背中を愛撫すると、彼は甘く息を漏らし、再び覆い被さってきた。
「あっ……智也っ」
ほなみは、首筋を烈しく吸われ、身体を震わせた。
智也は、情欲と切ない恋情の混ざった眼差しで妻を見つめ、苦しげに呟く。
「……お前が……もしも他の男と……そんなことを考えただけで俺は……狂いそうになるんだ!」
「……貴方って頭がいいのに、馬鹿みたいね?……そんな事有り得ないから」
ほなみは、口に放りこんだとたん蕩ける砂糖菓子のように柔らかく笑うと、指で智也の少し歪んだ口元に触れてみる。
形の良い眉に、きりっとした切れ長の瞳、高く通った鼻筋に、魅力的な唇――
誰が見ても、彼を美形だと言うだろう。
この完璧な人を、欺かなければならないのだ。
――西君を守る為に。何よりも私自身の為に――
ほなみは、とっておきの切り札になる言葉を、呪文を唱えるような気持ちで智也に囁いてみせた。
「……貴方を、愛してる」
「ほなみ……!」
智也は声を震わせ、ほなみの身体じゅうに口付けた。
夫に抱かれながら、ほなみは瞼を閉じ、瞼の裏に焼き付いている西本祐樹の面影を追い求めていた。
――たとえあの日限りの愛だったとしても私が本当に焦がれているのは西君だ。
――智也の前では、夫を愛する妻を演じるの――
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