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壊れたきらきら星
④
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足元から立ちのぼる生暖かい不気味な感覚に身震いする。
目の前にある鍵盤が、全く別の物体に見えた。
今、何処にいて、何をしようとしているのか、わからなくなりそうだ。
客席がざわめき始める。いつまで経っても演奏が始まらないからだーー
「真由ちゃん!あなたの好きなキラキラ星でしょー!頑張って!」
母の必死な励ましが会場じゅうに響き、かえって真由を居心地悪くさせた。
弾かなくちゃ。キラキラ星を、弾かなくちゃーー
真由は、鉛のように重たくなった両手を鍵盤の上に置き、先生の顔を見る。
先生はお面のような笑顔で頷き、タクトを大きく振った。
最初の音を鳴らした瞬間、真由の身体中の血の気が引いた。
先生が大きく目を見開き上半身を傾けタクトを振りながら、真由の方へ囁く。
「真由さん、そのまま続けて」
続けるどころか、真由は全く動けないでいた。
間違えたのだ。初っぱなから。
始まりのフレーズを、一オクターブ高い音で鳴らしてしまった。
「あ~あ、やっちゃったよ、やっぱり尻のでっかい女は頭の中が空っぽだよな~」
背後から、ジョーの冷やかしが聴こえる。
真由の頬が燃えるように熱くなった。初めての発表会に張り切った母が施してくれた薄化粧が、その熱でどろどろに溶けてしまうのではないだろうか。
(お尻が大きいのは悪いことじゃないもん……お母さんは、赤ちゃんを産むのには大きい方がいいわよって言うし……それに……好きで大きくなったわけじゃないもんーー!)
ジョーは真由の顔を見るたびにお尻の事をからかう。真由が嫌がるのをわかっていて、その反応を楽しんでいるのだった。
好意からジョーが突っ掛かってくるのだが、幼い真由がそんな事を理解できるわけがない。
(とーた君……なんでここに居ないの……私のきらきら星を楽しみにしてるって……そう言ったよね?
とーた君が居ないのに、なんでジョーがここにいるの……
なんでーー!)
心の中の叫びが、真由の両の指すべてを強く鍵盤に叩きつけさせた。
ざわついていた会場は、不協和音が響くと同時に静まり返る。
目の前にある鍵盤が、全く別の物体に見えた。
今、何処にいて、何をしようとしているのか、わからなくなりそうだ。
客席がざわめき始める。いつまで経っても演奏が始まらないからだーー
「真由ちゃん!あなたの好きなキラキラ星でしょー!頑張って!」
母の必死な励ましが会場じゅうに響き、かえって真由を居心地悪くさせた。
弾かなくちゃ。キラキラ星を、弾かなくちゃーー
真由は、鉛のように重たくなった両手を鍵盤の上に置き、先生の顔を見る。
先生はお面のような笑顔で頷き、タクトを大きく振った。
最初の音を鳴らした瞬間、真由の身体中の血の気が引いた。
先生が大きく目を見開き上半身を傾けタクトを振りながら、真由の方へ囁く。
「真由さん、そのまま続けて」
続けるどころか、真由は全く動けないでいた。
間違えたのだ。初っぱなから。
始まりのフレーズを、一オクターブ高い音で鳴らしてしまった。
「あ~あ、やっちゃったよ、やっぱり尻のでっかい女は頭の中が空っぽだよな~」
背後から、ジョーの冷やかしが聴こえる。
真由の頬が燃えるように熱くなった。初めての発表会に張り切った母が施してくれた薄化粧が、その熱でどろどろに溶けてしまうのではないだろうか。
(お尻が大きいのは悪いことじゃないもん……お母さんは、赤ちゃんを産むのには大きい方がいいわよって言うし……それに……好きで大きくなったわけじゃないもんーー!)
ジョーは真由の顔を見るたびにお尻の事をからかう。真由が嫌がるのをわかっていて、その反応を楽しんでいるのだった。
好意からジョーが突っ掛かってくるのだが、幼い真由がそんな事を理解できるわけがない。
(とーた君……なんでここに居ないの……私のきらきら星を楽しみにしてるって……そう言ったよね?
とーた君が居ないのに、なんでジョーがここにいるの……
なんでーー!)
心の中の叫びが、真由の両の指すべてを強く鍵盤に叩きつけさせた。
ざわついていた会場は、不協和音が響くと同時に静まり返る。
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