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目指せ体育会系ヒーロー!①
しおりを挟む「鈴木勇人殿。
この度の文部科学大臣作文コンクールにて、貴方の作品は佳作に入選しましたので、ここに表彰致します。
文部科学省大臣
四野宮 衛(しのみや まもる)
……鈴木くんっおめでとう!」
朝の特別全校集会で、僕は壇上で校長から賞状をガクガク震える手で受けとる。
大きな拍手が体育館を包む。
全校生徒が、先生達が、僕に注目している。
背中に視線が突き刺さってる――
怖いよ、怖いよ――
目が怖いよ――!
心の中で絶叫しながらひきつった笑いを浮かべる僕に校長はとんでもない要求をしてきた。
「それでは鈴木君。受賞した今の気持ちを一言頼むよ」
「――!?」
そんな段取り聞いてないよ!
と、僕は口をパクパクさせてウッチー先生を見たが、ウッチーはグラグラ揺れながら寝ていた。
僕は公開処刑される罪人みたいな気持ちになった。
「さあ、鈴木君」
校長の笑顔が今日ほど恐ろしいと思った事はない。
ライヴから時は流れて、今日は大型連休明けの五月のある日。
朝登校するなり、ウッチーが僕の所にやってきて、全校朝礼で表彰されるから宜しくな、という爆弾みたいな言葉を僕に投下したのだ。
側にいた茜が目を輝かせて手を叩いた。
「凄い!おめでとう勇人君!……て、何の表彰なんですか?」
ウッチーは頬をぽりぽり掻いた。
「んーほら、アレだよ。お前らに宿題で"自分"について作文を書いて貰ったろ?
ジミーの作文が賞獲ったんだよ」
「先生……ジミーじゃ ありません」
「あっすまんすまん!つい言いやすくてな~!
で、休みに入る前に連絡が来てたのをすっかり忘れててな!
お前に報告するのが今になったという訳だ!」
「勇人君凄いよ――!賞なんてなかなか獲れないよ!」
すると何事かとクラスメートがワラワラと集まってきた。
「ジミー、どうした?」
「ジミー表彰?」
「ジミー何したの?」
「ジミー!」
皆に注目されて僕のノミの心臓はますます縮こまる。
ぺ、ペコリーヌ……ジャム……何とかしてくれよ……
と思ったが、そういう時に奴等は大概現れない。
奴等は相変わらずタイミングやらこっちの心情など全く無視しては突然現れては消えて、傍若無人振りを発揮している。
茜の弟の亜太もスクスク育ち、僕が遊びに行くと必ず乳をねだる……
そして何故か、吸い付かれるとドクドク乳が出るのだ……
僕が乳を与える様になってから亜太が手がかからなくなったと茜や茜の母は大喜びしているが、内心こんなに体内から乳を出して僕はどうなってしまうのだろう、と恐怖に脅えている。
実際亜太に乳をやった翌日は必ず寝込むし、髪が大量に抜ける。
ただでさえペコリーヌの魔法の代償に毛根の命を差し出している僕は、いつ禿げるのかヒヤヒヤしている。
「ねえ勇人君、どんな作文を書いたの?」
茜に聞かれて、うっと詰まる。
僕は
"一重瞼に生まれて"
というタイトルで、自分の一重瞼と小さな目、内気な性格に対するコンプレックスの気持ちや、今まで受けてきた屈辱的な出来事をドキュメンタリータッチで包み隠さずに書いたのだ。
作文の締め切りをすっかり忘れていた僕は、提出の前夜にペコリーヌとジャムにムチ打たれながら書き上げたのだ。
ムチという言い方は大袈裟ではない。
それと同じくらい酷い事を奴等は僕に日常的にしているのだ。
僕が寝そうになると、ペコリーヌの長い髪が首に巻き付き息絶える寸前まで締められる。
∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∪。△。)⊃∥∥∥∥∥∥勇人――!
寝るな!ここは雪山!
寝たら死んでしまう位の危機感を持って書き上げるのだ――!
たまにはお前も本気を出せ――!
お前なら出来るかも知れないし出来ないかも知れないし、まあわたくしには正直どっちだって良いのだ――!
ぬらぬらにら―――とにかく寝るな――!
するとそこにジャムがやって来て僕の眉毛にかじりつきぶら下がるのだ。
それでも眠気を催そうものならシャツの中に入り込んで腹に噛みついてくる。
あの地獄の苦しみの夜、泣きながら書いた、正に血と汗と涙の証の作品なのだ。
※※
「さあ、鈴木君!」
校長の声で我に返った僕は、目の前のライトを浴びてますます照り返すつるん、とした頭を見た。
うっ……眩(まばゆ)い……
僕も……近い将来こんな風になるのだろうか……
今のうちに、ふさふさした頭をエンジョイしなくてはなのかも知れない……
生き物の命も、毛根の命も儚いものだ……
と、妙な感慨に耽っていた時、頭をガツンと何かに殴られた様な衝撃を受けた。
「い、痛いっ!?」
∥∥∪。△。)⊃―☆∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥∥ぬらぬらぬらぬらぬら
勇人――!
何をぼさっとしているのだ――!
早く何かしゃべれ――!今お前はかつて無い注目の中にあるのだぞ!
今こそ立ち上がれ勇人よ!ガツン!とやったれ――!
目の前に逆さになったペコリーヌが現れ、僕はお決まりの絶叫をした。
「ギャアアアアアアア」
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