eyes to me~私を見て

ペコリーヌ☆パフェ

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獣は恋情にのたうち廻る

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美名からメールの返信が来た。


読んで、思わず頬が緩む。


心配していたが、あのセッションの映像を見て安心した。

個性の強いjunkと、素直な美名のボーカル。

合わないのではないかと思っていたが……


素晴らしくスリリングな演奏だった。
ネットで公開したら、おそらく直ぐにかなりの反響を呼ぶはずだ。


志村がプロデュースするという鳴り物入りというだけでなく、バンドメンバーそれぞれの演奏技術に、ルックスの良さ。

特に、庵原翔大の野獣の様な魅力は女だけでなく男も惹き付けるだろう。

演奏中に美名を熱い目で見つめているのが気にくわないが、そういう危うい雰囲気がバンドの魅力を増しているというのも否めない。


奴の側に昼も夜も美名が居るのだと思うと、ムカムカしてくるが、歌っている生き生きした美名を見て、やはり行かせて良かったのだ、と思う。



才能ある者達は、やはり引き合うのだ。







暗いリビングのソファで寝ていた三広が、欠伸して目を開いた。


側には亮介が鼾をかいて爆睡している。



「綾ちゃん……まだ起きてたの?」



綾波はパソコンを開け、三広を手招きした。



目を擦りながら三広が隣に来て画面を見る。


志村から送られてきた動画を再生すると、三広が隣で息を呑むのがわかった。


ッチンからウイスキーとビールを出して、ビールを三広に差し出すと、三広は受取り口に含み、溜め息を吐いた。



「なんだよこれ……すっげ良いじゃん!」


「いいだろう?これは来るぞ」


三広はミュージシャンの顔になって画面を食い入る様に見る。
時折唇を噛み締めたりしながら。


「メンバー、上手いなあ……このドラム、何者さ?……ベースもすげえな……ボーカルも尖っててカッコいい……
あ――!こうしちゃいられない!負けてらんないよ!練習――」


綾波は、いきり立つ三広の頭をポンとはたいた。


「夜中に騒ぐな。闘志をみなぎらせるのは結構な事だがな」







「えへへ……
あ、そうか……桃子ちゃん、こんなイケメン達の中に……
三日間も……」


三広の表情が暗くなる。

――正直で素直過ぎる奴だ。


綾波は三広のそんな所が気に入っている。



「そうだな。男と女が三泊四日、合宿……
しかも相手は音楽という強い武器を持っている……雰囲気に弱い女ならイチコロだろうな」


「あ、綾ちゃん」


「情けない顔をするな」


泣きそうな顔になる三広にデコピンする。



「い、いてえよ!」


「いいか三広。
桃子が好きなら、帰ってきたらバシッと決めろよ」


「き、決めるって」


綾波はニヤリと笑う。



「わかってるだろ」


「バシッて」


「有無を言わさず押し倒すに決まってるだろうが」


「い――っ!?」



三広が目を大きく見開いた。





「まあ、俺とアレコレした時の事を思い出しながら応用するんだな。
相手が男と女で性別が違うだけだ。なんとかなるだろ」


三広は青くなったり赤くなったり忙しい。


「そ、それは大きな違いだろ――!」


「お前がグズグズしてたらこのままで終わるぞ」


「うう……ていうか、綾ちゃんだって美名ちゃんが心配で寂しいから俺達を泊まらせてるんだろ――?」


綾波はウイスキーを煽る。


「良く言うな。
お前らが暇だー言って押し掛けて来たんだろうが」


三広は膨れた。


「む――。まあ、そうだけどさ」



綾波が三広の小さなぷっくりした唇を指でなぞると、彼がビクリと身体を震わせている。



「なんなら……今から予行演習するか?
久し振りだしな……」



綾波は、三広の腕を掴み床へと押し倒す。



「あ、あああ綾ちゃんっ!」


三広は側で眠る亮介を気にして手足をばたつかせた。


男にしては小柄な三広は抱くにはちょうどいい体型だった。

顔つきも女みたいに可愛くて、もし三広が女だったら綾波のど真ん中だ。


三広は女と経験がない。
昔のトラウマのせいで、女を怖いと思っているのだ。

だが、決して男が好きな訳ではない。

女に好意も持つし欲情もする。

ただどうしても女とそういう関係に持っていけない。


三広のそんな事情を知ったのは、デビューして少し経った頃だった。


生意気な祐樹と違って素直な三広は俺に懐いていて、ある日打ち上げの帰りに俺のマンションで飲んだ時に、そんな話になった。


三広と初めて身体を重ねたのはその夜だった。

――放って置けなかった。



だが、三広はどうやら桃子に本気らしい。
だったらこれを機会にちゃんと女を愛せるように……
と綾波は思った。




冗談のつもりで三広を組み敷いて身体を擽っていたが、ケラケラ笑う三広の姿が一瞬美名と重なってしまう。


「……」


「綾ちゃん?」



頭の中に次から次へ浮かぶ美名の喘ぐ姿を打ち消す様に、綾波は自分の頬を拳で殴った。

口の中に苦い味が広がった。



「な、何してんのさ!」



三広が仰天し、綾波は彼を見ないようにして立ち上がる。



「シャワーを浴びてくる……お前も寝ておけ」


綾波は逃げるようにバスルームへ入ってドアに鍵を掛けた。

ドアを後ろに、深呼吸する。


危なかった……

美名と重ねて、三広を滅茶苦茶にしてしまう所だった。



下半身は既にムクムクとたぎって纏っている布が邪魔に感じる程だ。


「はっ……どうしようも無い奴だな俺は」


自分に笑えてくる。
美名と離れてたった一晩なのに。
もう禁断症状か……


美名に出会う前は、自分はどんな風にしていたのだろうか。




――ついこの間まで、俺は他の女を愛していた。
決して手に入らない女を。

この腕に抱き締めて、奪おうとした事もあるが、出来なかった……

彼女にそっくりな美名を、最初は彼女の代わり位に思っていた。

だが、あっという間に俺の中で美名は大きくなり、今や心底溺れている。

身も心も、だ……



服が窮屈に感じて、綾波は無造作に一枚一枚脱ぎ捨てる。


腰の廻りを覆う布もすべて取り去ると、バスルームの大きな鏡に大きく硬くを向いた獣が映し出される。


シャワーの栓を捻り、壁に手を突き頭から浴びた。


熱いシャワーは、火照って欲望に目覚めた身体をますますたぎらせる。


出発前に、美名をここで抱いた事を思い出すと、ひとりでに獣がビクンと疼く。


「くっ……」


耐えきれずに右手を伸ばし握ると、快感ですぐに暴発しそうだったが堪えた。


右手の指の中で、ピクピクと震えるそれは、今すぐに刺激を与えてくれと叫んでいるかの様だ。



「うっ……」


ゆっくりと手を動かす。
自分で慰めるのは久し振りだった。
美名と会ってからはそんな必要がない位に美名を毎日攻め立てていた……


我慢がない獣の先端部からは、既に精が零れている。


指を動かす度にそれは少しずつ溢れて獣自身を濡らし、快感に拍車をかけた。

美名の唇が獣を這う感触を思い出しながら、緩急を付けて指と手を動かす。


恥じらいながら俺の服を脱がして、胸に唇を当てて来る可愛くて淫らな裸の美名……



「美名……っ」


思わず呟き、手の動作を速めた。


益々獣は熱く増大し、快感も凄まじくなる。



「くっ……うっ」



美名の身体の反応を愉しみながら突き上げるのも堪らないが、こうして自分で自分を爆発に導くのも捨てがたい快感だ。


自分の身体は自分が一番良くわかる。
何処をどうすればスイッチが入るのか、何を思い浮かべ、見たらエレクトするのか。

自分が一番善くなる方法をやり尽くして楽しむ事が出来る。

久々の快感に、我を忘れそうになりながら身体を仰け反らせた。



『あっ……あっ!……剛さん……もっと……ああんっ』


美名が最高潮に達した時の表情と、揺れる美しい身体が蘇り悩殺された瞬間、獣はついに爆発した。


決壊した大量の欲望がシャワーで流れていく。



「ハア……ハアっ……」


身体から急速に力が抜けて、途端に虚しさが襲う。


壁を拳で殴り、痛みに顔をしかめた。



「クソッ……」



堪らない快感に酔ったのも束の間、動画の中で美名を見つめる庵原翔大の姿を思い出して、沸き上がる嫉妬に苛まれた。


理性は、これで良いのだ、と納得している。

だが、本能は奴を殺したい位に憎む。



――俺が家を空けた時、美名に奴は迫ったに違いない。

美名はとぼけていたが、何も無かった筈はない。

あんなに焦がれた目で見つめる位に想っている女を、放っておく男などいるものか。



「落ち着け……っ」


嫉妬に苛まれて頭がパンクしそうになるのを、何とか止めようとする。



『剛さん……大好き……』


「美名……」



腕の中で正気と狂気の狭間で快感に酔いながら、涙を溜めた目で囁く美名を思い出す。



そうだ……

俺は美名を愛してる。

他のどんな男が美名を欲しがろうと、俺は渡さないだけだ。

ここまで夢中になるとは予想外だった。

祐樹の母を女として愛して、もう二度と女に心を奪われる事はしないと思っていたのに、俺はほなみに出会ってしまい、いつの間にか惹かれていた。
……だがほなみは祐樹の物だ。
気持ちをぶつけてみた事もあったが、ほなみの幸せを考えれば俺は身を引くしかない。
俺は愛する女とタイミングが合わない人間なのではないかと半分もう悟ったようになっていたが、ほなみにそっくりな美名を見つけて我慢出来ずに自分の物にしてしまった。

ミュージシャンとしてデビューさせるのを餌に手を出した様な物なのに、軽蔑されてもおかしくない俺を、美名は愛で応えてくる。
それがどんなに思いがけず嬉しくて幸せな事か。美名を愛すれば愛する程、美名はそれ以上の幸せをくれるのだ。


幸せ……


自分には分不相応なのではないか、と思ってしまう位に。



この幸せのしっぺ返しが何処かで来るのではないか?
闇が手ぐすねを引いて罠に誘っているのではないか?

幸福が恐ろしく感じる、という感覚を初めて味わっている。





綾波は、深い溜め息を吐いて身体を拭いてバスローブを纏い鍵を開けた。



おかしな態度に三広が心配しているかも知れない。

ごく普通に振る舞って安心させてやらなければ。



リビングに入ると、静かな寝息が聞こえてくる。


三広は気持ち良さそうに床で大の字になって眠っていた。



「……腹を出して寝るとは子供か」


苦笑してタオルケットをかけてやる。
ブラインドに指を掛けて外を見ると、もう空が白み始めている。


美名はまだ眠っている頃だろうか。



「あと二晩か……」



果たして自分が持つのか本気で怪しい。


改めて節操の無さに笑ってしまう。



リビングのソファに腰を降ろし目を閉じたら、あっという間に眠りに堕ちてしまった。






――――




甘い匂いがして目が覚めた。


部屋の中がもう明るい。


「て……」



鈍い痛みを頭に覚えた。二日酔いか……

久々だな。



亮介と三広の姿は既に無かったが、妙に部屋の中が片付いている。


三広がやってくれたのだろうか……


ぼんやりと考えながら起き出すと、テーブルにクロワッサンが白い大皿の上に山盛りになっている。



見覚えのある光景に驚きと懐かしさを感じて綾波は辺りを見回した。





『君は……を奏で……君……恋を……撒いた……』


聞き覚えのあるアルトの歌声。


その声は寝室から聴こえる。


吸い寄せられる様に、ドアを開けると、眩しい陽射しが逆光になり一瞬目を細めた。

部屋のベッドの廻りを掃除機をかけていた細い背中が振り向くと、真っ直ぐな長い髪がサラリと揺れる。



綾波は夢現(ゆめうつつ)のまま呟いた。







「…………ほなみ」






少し頬がふっくらしたのだろうか。

まろやかな笑みを浮かべて掃除機の電源を切り、こちらへ二、三歩踏み出して来る。


綾波は思わず後ずさった。


「亮介君と三広君、さっきまで居たんだけど、取材の時間だからって出掛けました」



心地よい声が、身体中を侵(おか)していく。



「……なぜ来た」


否応無しに舞い上がる気持ちをひた隠しにして、冷たい口調で言ってしまう。



ほなみは一瞬真顔になるが、すぐに柔らかい笑顔になった。



(……やめてくれ。
俺は、お前のそういう所に弱いんだ)


ほなみを見ない様にそっぽを向く。



「昨夜、亮介君と三広君が電話をくれたの……
綾波さんの所に行くから、西君とおいでって。
けど西君が疲れてて、行かなかったの。
皆に暫く会ってないし、久々にクロワッサンを届けようと思って……来ちゃった。
……迷惑、でした?」





微かに声が震えている様に聞こえて胸がざわめいてしまう。


――美名を愛しているから、もう、ほなみを目の前にしても心が粟立つ事は無いと思っていたのに……



綾波は目の前のほなみに激しく掻き乱されていた。

妊娠中の身体を締め付けない様に、ゆったりしたジャンバースカートに白いブラウスを合わせた服装のほなみは、可憐だった。

まだ下腹部は膨らんでいる様ではなく、妊婦には見えない。

思わずほなみの身体に視線を落として上から下まで見てしまった。

妊娠して身体付きがより女らしくなった様で、ブラウスの膨らみは以前より大きくなっている。

腰の廻りも円みを帯びて来ているようだ。



思わず欲情しそうで、綾波はほなみから背を向けた。



「祐樹には、ここに来る事は言ってあるのか?」


「はい……この間のお礼もあるし、西君も、亮介君と三広君が居るならいいよって……」




――そうなのだ。
この間俺が家を空けて帰らなかったのは、祐樹の所に泊まったからなのだ。
些細な事で二人は仲違いして、感情的になったほなみが俺に連絡して来たのだ。
夫婦喧嘩に関わりたくなかったが、妊娠中の不安定な時に心が乱されたら身体に障る。
電話で泣きじゃくる声を聞いたらじっとしていられなかったのだ。

それに家庭が不穏になれば、祐樹の精神状態も悪くなる。
そういう事が音楽活動にダイレクトに現れてしまうのが祐樹なのだ。
俺からすれば、プロ失格だと説教したくなるが。

マネージャーとして、放って置くわけにいかなかった。

……いや、それは言い訳だ

俺は単に、ほなみが心配で会いたかったのだ……

だが、その留守中に美名は庵原翔大に迫られ、俺はその行動を死ぬほど後悔する事になったのだが

あの時は祐樹も居たし、おかしな気持ちにもなる事はなかった。

だが、今日は状況が違う。




マンションで、無防備なほなみと、飢えた獣が二人きり。



美名が不在で渇いている時によりによって、ほなみが飛び込んで来るとは……



邪な考えが頭をもたげ始めるのを必死で抑えようとするが、自覚なくほなみが挑発してくる。



「綾波さん、いつまでバスローブでいるんですか?着替えません?ついでにお洗濯します」



いつの間にか直ぐ側に来て、バスローブの裾をつまんで上目遣いで見つめている。



「いい。自分でやる」



「……」



思わず吸い寄せられる様に、見つめ合ってしまう。



ダメだ。
本能が、これ以上一緒の空間に居たら危険だ、と警報を鳴らす。


綾波は思わぬ事を口走っていた。



「俺は……クレッシェンドのマネージャーを辞める」




ほなみの顔が真っ白くなったように見えた。



そうだ。
俺には美名が居る。
美名を一人前のミュージシャンとして売り出す。
この厳しい音楽業界で長く輝いて居られる様に、俺の全てを美名に注がなくては。

クレッシェンドは俺が居なくても大丈夫だろう。

メンバー同士の絆も固いし実力も人気も安定している。


後任のマネージャーは、顔の広い志村か智也に適当な人物を探して貰えばいい。



一瞬の間に頭の中で考えを纏めた。
もう、それが一番の最上の方法に思えてくる。



それに、クレッシェンドの担当から外れれば、ほなみに関わる事も減るだろう。


ほなみは祐樹の物で、俺も美名の物だ。


もう、必要以上に関わったらいけない。




「まあ、今にすぐではないが……
段々に後任マネージャーに任せていくつもりだ」



「……」




ほなみの目が潤んでいる。



――止めてくれ。
そんな風に見ないでくれ。



綾波は顔を逸らしてわざと素っ気なく言った。




「もう、ここには来るな」


ほなみが息を呑む気配がする。



「俺は祐樹の義理の兄弟だが、血の繋がりはないし、仕事で関わる事も減るだろう。
それなのに、お前がここに出入りするのはどう考えても不自然だろうが」



一気に言ってしまうが、胸がキリキリと痛む。


これでいい。
ズルズルといつまでも、ほなみへ残った感情を持っていたらダメだ。
ほなみは祐樹が守ってやればいい。
俺はそれをする資格はない。



「ごめ……なさ……私」


泣き声がして、綾波はハッとする。

ほなみが肩を震わせて涙を目に一杯溜めて居た。


「私……綾な……さんに頼ってばかり……でっ……寂しい……けど、仕方ない……ですよね」


しゃくり上げながら無理矢理笑おうとするが、また切なく顔を歪ませる。

その様子を見た途端に、身体中が別の何かに支配された。



「私……帰ります」



ほなみが泣きながら、側を通り過ぎようとした時、綾波の身体が勝手に動いた。



気が付いたら、綾波はほなみをベッドに沈めていた。

目を見開いたほなみが何かを言おうとしたが、その前に綾波はその唇を塞ぐ。


夢中で柔らかく甘い唇を愛している時、何もかもを忘れてしまっていた。


クレッシェンドの事も、美名の事も。




「んんっ……ん」



ほなみが弱々しく抵抗するかの様に胸を押したが、構わずに唇を犯す。

甘い香りと身体の柔らかさに、気が狂いそうだった。



「綾……波さ……ダメっ」


「お前が此所に来るのが悪い……」


「あっ」



白い足首から太股をゆっくりと愛撫する。


その時、手に何か引っ掛かった。



綾波が以前贈った、花のマーガレットのモチーフのアンクレットだ。



「付けて来たのか……」



「は、はい……可愛くて、好きなんです」


ほなみの頬が紅くなる。


「好き……て、俺を、か?」


「ち、違……あっ」



綾波は、ほなみの一回り大きくなった乳房をブラウスの上から指で揉みしだいた。



「や、や……止めて」



「ほなみ……っ」



「あんっ!」



身体を震わせるほなみが、美名と重なり、綾波の頭の中が真っ白になった。



『君は恋(旋律)を奏でた
君は恋(旋律)を撒いた……』



祐樹の声、いや、クレッシェンドの着メロが不意に聞こえて、二人は同時にビクリとする。



ほなみは綾波が腕の力を緩めた隙にベッドから降りて電話に出た。



「はい……うん、うん。……うん、今帰る所だよ?……うふふ、大丈夫だってば……うん、うん……私も……好き。
じゃあ、後でね……」



相手は祐樹だろう。
綾波には決して聞かせた事のない甘い声だ。


ほなみはさっきまで乱れていたのが嘘の様に、冷静に電話で話していた。

「綾波さん……ごめんなさい……帰ります」


ほなみは、ぎこちなく笑うとバッグを持ってドアを開けたがまた振り返る。



「クロワッサン……食べて下さいね?」


いつもの、捉え処のない笑顔を残してほなみは部屋を出ていった。



甘く、淫らになりかけたほなみの姿を見てしまった綾波、堪らずバスローブを脱ぎ捨て猛った獣を握り締めた。



半ば自暴自棄になりながら、激しく手を上下させる。



「う……くっ……!」



堪らない快感が身体中を駆け巡る。



俺は、一体何をしようとしたんだ?
祐樹からの電話が鳴らなかったら、俺は止まれたのか?


あのままもし、欲望のままにほなみを抱いていたら――



考えただけでゾッとした。


だが、そんな理性とは反比例して手の中で獣は大きく膨らみ、快感にうち震えている。


頭の中ではほなみと美名を交互に犯す映像が次から次へと浮かんだ。


「くっ……俺は……最低だ……」



低く呻いた瞬間、獣は欲望を噴き出した。

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