Love adventure

ペコリーヌ☆パフェ

文字の大きさ
39 / 93

星の瞬きよりも①

しおりを挟む
オーブンからクロワッサンの焼ける香ばしい薫りが漂い、鍋の中では、コトコト音を立てながらカラフルな野菜が踊っている。

食器棚からコーヒーカップやお皿などを出していたら、不意に後ろからほなみをフワリと抱き締める腕があった。




「きゃっ!」




食器を落としそうになり振り返って抗議しようとしたが、腕の主の顔を見てそんな気持ちは一瞬で吹っ飛ぶ。




「……おはよ。ほなみ」



「おはよう……西君」




起きて直ぐなのだろう。まっすぐな髪が一カ所だけピンと触角みたいに撥ねていて可愛い。
紺と白のストライプのパジャマの彼は、後ろから首筋にキスをしてきた。




「擽ったい……」



「いい匂いで目が覚めちゃった。
パン焼いたの?」



「うん……あんまり上手じゃないけど」



「すっげ楽しみ」



「うふふ。好評だったらまた焼くね」



東京に来て三日目の朝を迎えた。

夜は西君と一緒に眠り、朝からこうしてキッチンで話を出来るなんて夢みたいだ。
幸せ過ぎて、この先の事なんて考えたくなくなってしまう。




彼の唇が首筋に何度も落とされ、ほなみを抱き締めていた手はシャツの中へ侵入し、膨らみを弄び始めた。

身体を震わせて身を捩り、その手と唇から逃れようとするが、力強い腕で振り向かされて唇を貪られる。




「んっ……」



「今日も……可愛いよ…」



唇を食べてしまうような口付けに、ほなみは悶えてしまう。



「西く……そろそろ……んっ……
あぐりが起きて……っ」


「昨夜、沢山抱き合ったけど……
まだ足りないよ」



「あっ」




シャツの中に入った長い指が膨らみの先端を捜し当てキュッと刺激する。

押し寄せる甘い感覚でクラクラしながら、ほなみは必死で彼の胸を押した。



「……だめよ……お願い」


「今はダメ?」


悪戯っぽく瞳を輝かせて微笑まれ、胸がキュンと鳴る。


ピーッピーッ



「あっ!クロワッサンが焼けたよ!」


ほなみは腕からするりと逃げてオーブンへ向かう。


顔が熱い。
多分、真っ赤になっているだろう。
朝からこんな風に甘い時間を過ごせて嬉しいと同時にとても気恥ずかしい。





「西君、座って待ってて?もう出来るから……
パン好きだよね?」




彼は、リビングの椅子の背に顎を乗せて座りニヤニヤしている。




「好きだよ。
……でも、ほなみの方がもっと好き」



「 ――! 」



ドキリとしてクロワッサンを落としそうになる。

ほなみは、頬が熱く火照るのを感じながら珈琲を淹れ、パンと一緒にテーブルに運んだ。





「すっげ――美味そう!」


子供みたいにはしゃぐ彼の姿に、暖かい気持ちになる。



「食べてみて?」



言われる前にパンに噛じりついた西君は、モグモグしながら頷いて右手の親指を立てて見せた。


「これ最高!」


「本当?よかった!」


「うん。けど、ほなみの方がもっと美味しいよ」


「――っ!」


真っ赤になったほなみを彼は妖しい瞳で見ながら珈琲を飲んでいる。



(朝から、こんな調子では正直身が持たない……)



「ふああ~お二人さん、早いわねえ」


あぐりが目を擦りながらリビングに入って来た。



「おはよう。
珈琲と紅茶どっちにする?」


「こーひー……ふああ。にひ君……おは――」


あぐりが片手を上げて挨拶すると西君はニッコリ笑った。


「おはよう、あぐりちゃん」


「……お邪魔したかしら?」


「いや、全然」


「お二人さん、夜中まで頑張ってるのに元気よね……私しゃ無理よ……ふああ」



「うるさかったらゴメンね」


「いえいえ……心おきなく楽しんで下さいよ……」



二人の会話を耳にしながら、ほなみは恥ずかしさに俯き珈琲を運んだ。




「うわあお。クロワッサンじゃん!
理想のブレックファーストだわ~!」



「そういえば、昔、旦那さんとこういう朝を迎えるのが夢だって言ってたね」


あぐりは何故か一瞬暗い目をした。


「……そうだったっけ?忘れちゃった。
もう昔の記憶が飛んでてさ~
ヤバいよ!アハハ」



「今日、BEATSのライブ、何時頃出かければいいかな?」


今日はあぐりの大好きなBEATSなのだ。
東京でのライブだからギリギリの時間でもオッケーだろうけど、もしグッズも購入するつもりなら早めに出かけなければならない。


あぐりはクロワッサンを頬張り、短く言った。




「……今日、体調悪いんだ私」


「えっ?大丈夫?」


「何これ!
馬鹿うっま!もう一個食べていい?」


「うん……沢山焼いたから、食べて?」


「もきゅもきゅもきゅ……おいし――!
スープもおいし――!
ほなみ料理上手!
私、あんたと結婚したかったわ!
……今日は具合悪いから、私行かない。
西君と行って来なよ!
……もきゅもきゅ……
おいひ――っ」



具合が悪い様には見えない食べっぷりだが、あぐりが
『BEATSのライブに行かない』
と高らかに宣言するのは未だかつてない事件だ。
ほなみと西君は顔を見合わせた。




「……うん……無理しないほうがいいと思うけど……西君、行ける?」


「俺はオッケーだよ」


「あぐり、あと何時間か様子みて、行けそうなら行く?」



「い――や!今日は無理!お二人さんで楽しんできて!ごちそう様!
あ――美味しかった!そうだ、今からあんたビーフシチュー作る時間ある?」


「うん。大丈夫」


「それ作っててくれれば夕飯にするからさ。ゆっくり出かけて来なよ……あ――食べたら又眠くなった……
寝てくる!お休み!」



「う、うん。お休み…」




怠そうに髪をガシャガシャ手で弄りながら、あぐりは寝室へ戻って行った。



「大丈夫かな……?なんかこっちに来てから元気が無いし……」



「俺はほなみが来てから元気一杯だよ?」


「きゃっ」


西君が甘える様に胸に顔を埋め、その姿勢のまま頭をフルフル振って、ほなみは擽ったさに身悶えた。




「もうっ……西君ったら」


不意に、ギュッと力を込めて抱き締められて囁かれた。



「今夜は……初めてのデートだね?」


デート、というカジュアルで素敵な響きにときめいた。



「う、うん……何着てこうかな……
ライブの時はいつもあぐりがコーディネートしてくれたけど……今日は自分で何とかしなくちゃ……」



「何でも可愛いよ。ほなみは」


……ドキン。


膝を突いて、立ったほなみの身体を抱き締め、彼は上目遣いで見つめて来る。

恥ずかしくて目を逸らしたくなったその時、西君はスクッと立ち上がると、ほなみをソファに押し倒した。




「あっ……ダメ」


倒された途端、啄むようなキスを頬や耳に沢山される。



「ほなみが一番綺麗な姿……俺は知ってる」



「……西く」



「今……見たい」


「――っ」



長い指が優雅な動きで、エプロンの腰のリボンを解いた。


「だ……だめ……こんなところで」



「あぐりちゃん、寝に戻っただろ?大丈夫だよ」


西君はニコニコしてエプロンを楽しそうに脱がして放った。



「もうっ!西君のエッチ!」


頬を熱くしながら言うと、彼は鈴を転がすような声で笑った。


「……それ何だか新鮮な響きだな~……ふふ」


「あんっ!ダメ」


手がスカートの中へ入ってくる。



「……エッチだからじゃなくてさ。
ほなみが好きで仕方ないから……こうなるんだよ」



「西く……ん」



彼はほなみの頬を両手で挟むと、顔を近付けて来た。

サラサラッと前髪が額にかかる。



「――っ!」



思わず目を閉じたその時。


ピンポーン……



インターホンが鳴った。




『俺だ。起きてるか?入るぞ』


西君は、ほなみと至近距離で顔を近付けたまま、一瞬顔をしかめて舌打ちした。



「……ちっ。
綾波の奴……空気読めよな……」



頭をそっとコツン、とされ、ほなみの心臓が激しく鳴る。


西君は溜め息を吐いてほなみから離れ言った。



「残念……けど、これからいくらでも出来るからいいか。
……いや、本当は良くないけどね」



ほなみは笑いながら、胸が痛む。


(いつまでこうしていられるのだろう……)



綾波がリビングにズカズカと入って来た。



「……おはようございます」


ほなみは綾波に珈琲を出す。


「おう」


綾波は鼻をクンクンさせた。


「ん?何だこの匂い……」


「クロワッサン焼いたんです。よかったらどうぞ」


皿に乗せて持って行くと、無愛想な目がいつになく爛々と輝いた。


「こ、これは……!」


「ほなみのパン、めちゃくちゃ美味いぞ!」


西君がほなみの肩をグイと抱き寄せて得意げに言った。



「何故お前がドヤ顔をしている?」




「だって俺の彼女だも――ん。
自慢だもんね――っ!
羨ましいだろっ?
羨ましがってもこの幸せはお前にはやらないよ――っだ」


子供みたいにはしゃぐ西君を綾波は呆れ顔で見て、パンをハムハム食べ――
目を見開く。



「……!!」


何回も頷きながら、皿の上のクロワッサンを全部平らげ、満足げに珈琲を啜っている。



「……相当気に入ったみたいだな。
綾波も、こう見えて甘いもんとかパンとか大好きなんだぜ」


西君は、ほなみに耳打ちした。



「そうなんだ……」



「あの……今日、西君と出かけてきます」


「何処に行くんだ」



綾波は口元にパンのカスをくっつけたまま鋭い目を向けた。



「……BEATSのライブです……あぐりが急病なので西君と……」


「BEATSだと?……ちょっと待て」


綾波はスマホを取り出し誰かと話し出した。
普段の無愛想さとはうって変わって営業用の声で話している。
三分程して終わったようでスマホをしまうと、命令口調で言った。



「運転手の送迎で行って来い。
関係者スペースを用意したそうだから観覧はそこでしろ。
ライブ前には稲川に挨拶に行けよ、祐樹」



「関係者スペース……て別に要らんよ。普通に見に行けばいいじゃんか」



「絶対にダメだ」



ムッとした表情の西君の手を、ほなみはそっと握る。



「……わかりました。そうします」



綾波は、咳ばらいするとギロリとほなみを見た。



「ところで。お前何か忘れてないか?」



「――え!?」



「報告だよ報告」



あっ!とほなみは口を押さえる。



「何の話しだよ」


西君が後ろからほなみに抱き着いて来た。



「ちょっと、仕事に関する話しだ。
ほなみ、こっちへ」


綾波は寝室の方へ歩いて行く。



「呼び捨てすんなよ!」


西君がムキになって口を尖らせると、ほなみはクスリと笑ってしまうが、強い力で彼に手を掴まれドキリとした。



「――気をつけろよ。あいつには」


「えっ……」



「女の好みが俺とカブるんだよ……危険だ……」


「え――っ大丈夫だってば……」



「大丈夫じゃないよ」



グイと抱き寄せられ、触れるだけのキスをされ、心臓が早鐘を打った。





「綾波――!
話はいいけど手え出したらコロスからな――っ!」



西君はほなみを抱き締めたまま寝室に向かって叫んだ。



「もう……西君ってば」


独占欲を隠す事なく素直に表す彼に、たまらないいとおしさが込み上げて、頬が緩んでしまう。



「早く行って、早く済ませておいで!」


彼は、ほなみの頭をポン、と軽く叩き笑う。



「う、うん」



ほなみが寝室のドアをノックして中へ入ると、綾波はピアノの前に座っていた。
その姿が西君とダブって見えて、ほなみは目を擦る。



「……どうした」


「な、なんでもないです」


「で、どうだ祐樹の様子は」


「朝ちゃんと起きてご飯も食べる様になりましたし……夜も眠れています」


「……夜寝る暇があるのか?」


綾波が、意味ありげにくつくつと笑うと、ボンッとほなみの頬が熱くなる。


「え、えっと……」



「祐樹と話した事、した事全部報告の約束だぞ」



「……!」



「眠る前に何を話す?何をする?」



「……今、曲を作ったりしてます……
一緒に歌詞を考えたり、西君が作ったのを私が聴いて、二人で手直ししたりとか……そうしていると真夜中になってしまって……」



「そのまま眠るのか?」


「……」



「毎晩抱かれてるんだろう?」



「――っ」


綾波は立ち上がると、ほなみに向かって近付いて来る。

危険を感じ、ほなみは後ずさるが、よろめいてベッドに倒れてしまうと、そこに綾波が被さった。


「――!!」


悲鳴をあげようとするが大きな手で口を塞がれた。




「奴に、どんな風に抱かれる?」



綾波が射るような目で見る。


「――!」


ほなみが首を降ると、顎を乱暴に掴まれた。



「どんな体位でやるんだ?
祐樹が上か……後ろからか……
お前が乗るのか……それとも……」


綾波の息が少し荒い。

ほなみは恐怖と恥ずかしさで涙ぐむ。


「……いやっ……言えな……」



「言わないなら、犯すぞ……今ここで」



「――やっ……」



「それとも……お前を追い出してやるか……
どっちがいい?」



「!!」



目の奥が焼ける様に熱くなったかと思うと、涙がポロリと零れた。


すると綾波の鋭い目が瞬間揺らぎ、一転して穏やかな優しい光を宿した。


ポン。


くすぐったい感触が頭を掠める。

――綾波の手が頭を撫でていた。

ほなみが驚いて彼を見た時には、既にいつもの冷たい表情に戻り、乱れたスーツを直していた。



「今日はこれで許してやる……
運転手の番号だ。都合の良い時間に迎えに来て貰え……
くれぐれも、目立つ真似をするなよ」


メモをピアノの上に置き出て行こうとするが、ふと振り返り再び鋭い目をほなみに向けた。




「――せいぜい楽しめ。どうせ今だけだからな」


パタン、とドアが閉じられた。





綾波はマンションから出て行ったようだ。


やっとの思いで、震える身体を起こすと、西君が部屋へ入って来た。




「胡散臭い奴がやっと帰ったな――!ハハハ!
……?……どうしたんだ」


彼は、グシャグシャに歪んだほなみの顔を見て目の色を変えた。



ほなみは、彼の胸に飛びつく。




「どうしたんだよ!あいつに何かされたのかっ?」




「違う、違うよ……何でも無い」



ほなみは、彼のシャツを強く掴みしがみつく。
次から次へと涙が溢れて彼の胸を濡らした。



「何でも無くてそんな風に泣くのかよ!」



西君が本気で怒っているのが分かると、ほなみは嬉しいと同時に、彼に心配をかけてはならない、と思う。


(私は……
西君を元気付けに来たんだから……
私が泣いたりしたら駄目……)



「本当に大丈夫!」


精一杯笑ってみせると、彼の瞳が揺らぎ、先程の綾波と一瞬重なって見えた。


心配そうに見つめるその表情が愛おしくて、彼の身体をギュッと抱き締めた。




『せいぜい楽しめ。
どうせ今だけだ』




ほなみは、また涙が出そうになるのをグッと堪えた。




「……暫くこのままで居て?」



戸惑う色をその瞳に浮かべたが、彼は頷いて強く抱き締めて来た。


ほなみは暖かい胸にしがみ付いて、彼の匂いを身体中で感じていた。




(――お願い神様……時を止めるのが無理なら……せめて一日でも長く……側に居させて……)



叶わないのはわかっていた。
けれど願わずには居られなかった――


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

《完結》追放令嬢は氷の将軍に嫁ぐ ―25年の呪いを掘り当てた私―

月輝晃
恋愛
25年前、王国の空を覆った“黒い光”。 その日を境に、豊かな鉱脈は枯れ、 人々は「25年ごとに国が凍る」という不吉な伝承を語り継ぐようになった。 そして、今――再びその年が巡ってきた。 王太子の陰謀により、「呪われた鉱石を研究した罪」で断罪された公爵令嬢リゼル。 彼女は追放され、氷原にある北の砦へと送られる。 そこで出会ったのは、感情を失った“氷の将軍”セドリック。 無愛想な将軍、凍てつく土地、崩れゆく国。 けれど、リゼルの手で再び輝きを取り戻した一つの鉱石が、 25年続いた絶望の輪を、少しずつ断ち切っていく。 それは――愛と希望をも掘り当てる、運命の物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...