3 / 10
お持ち帰りの相手は……
しおりを挟む
シャワーを浴び終わると、リビングのソファで頭を抱える町田の姿があった。
金髪にピアスの、一見チャラ男。
大学では、いつも男女問わず友達に囲まれてた。パリピみたいな感じだ。
俺はそういうパリピっぽい人は苦手だったから、同じ大学に留学して、しかもルームシェアまですることになって不安だったけど、案外話しやすくて驚いた。
「あー、まだ頭痛てぇ……」
「町田」
「真尋!お前、外国で朝帰りとかやべぇな」
「開口一番がそれか……」
「で、どんな女にお持ち帰りされたの?」
ニヤニヤと聞く町田に、俺は「……内緒」と答えるしか出来なかった。
まさか、男にお持ち帰りされたとは、言えない。
「あ、もしかして、男にお持ち帰りされたとか?」
俺は冷蔵庫から取り出した水を飲もうとして吹いた。
「え!マジで!?本当に男だったの!?」
「な、何で……」
「だってこの街、ゲイが多いことで実は有名なんだぜ?知らなかった?」
「まじか……知らなかった……」
「ゲイバーも多いしさー」
覚えてないけど、きっとゲイバーに迷い込んだ。
俺は、あのイケメンにお持ち帰りされてしまったんだ。
……キモいおっさんじゃなかっただけ、マシだったのかな。
俺はホロリと心の中で泣いた。
『なになに?何の話してるの?』
電話をしていたらしい劉さんは、スマホを片手にリビングにやってきた。
『聞いてよ、劉さん!こいつさー』
『バカ!やめろ!!』
家で大騒動した後、三人は大学に向かった。
今日は大学の登校日初日。
ルームシェア自体は一週間前から始まっていて、劉さんとも町田ともすっかり打ち解けている。
二人のコミュニケーション能力が高いのもあるけど。
俺と町田は語学留学のため、他の語学留学生達が集まる教室に行った。
劉さんは、実は建築学専攻で、1年間この大学で学ぶらしい。
その後、アメリカの大学院に行って、中国にある外資系の建築会社に勤めて、世界で働きたいのだと教えてくれた。
夢が大きいけど、それを努力して叶えようとしている劉さんはすごい。
それに比べて、俺は……。
「おい、真尋。この教室だぞ」
「え、あ、ごめん……」
「そんなショック受けんなよ。貴重な体験したと思ったらいいんだよ」
町田は俺がお持ち帰りされたことがショックだと勘違いしていたが、それもだけど、それ以上に自分がいかに目的もなく生きているかを思い知っていたことにショックを受けていた。
教室に入ると多種多様の国籍の留学生達が所狭しと座っていた。
俺は少し圧倒されながら、指定された席に座った。
前から2番目か……。
大学特有の階段状の教室。
前の扉から、先生が続々と登壇する。
ロマンスグレーの紳士然りとした背の高い男性が教壇に立つ。
大学のパンフレットに載ってた、この大学の学長だった。
『ようこそ、歴史と由緒ある我が大学へ。留学生諸君を歓迎する。
私は、ジョン=マクドネル。イングランドの歴史を研究している。
ここでは様々な分野の学問を学ぶことができる。ぜひ優秀な教員たちと交流しながら知識を吸収していってほしい。
長々と話すのは得意ではないので、ここで教員の紹介をさせてもらいたい。では、若い順にしましょうか……ギルバード教授から』
学長は挨拶を済ますと、一人の男性を教壇に立たせた。
金髪の髪をワックスで後ろに流し、細いフレームの眼鏡の奥にヘーゼルの瞳が見えた。
『初めまして。イギリス文学を研究しています。シン=ギルバードです』
俺は目を疑った。
今日の朝、隣で寝ていた見ず知らずの男が、今、教壇に立っている。
『シンという名前は、日本人である私の祖父、進三郎から取ったものです。私にはイギリス人とスイス人と日本人の血が入っています』
シン=ギルバード教授は、ぐるりと見渡すように広い教室の端から端まで眺めると、俺と目が合った。
口角をあげて、薄く笑う。
『ここにはスイス人の方はいらっしゃらないみたいですが、日本人の方はいらっしゃるみたいですね』
俺、どうしよう。
先生にお持ち帰りされちゃった……?
金髪にピアスの、一見チャラ男。
大学では、いつも男女問わず友達に囲まれてた。パリピみたいな感じだ。
俺はそういうパリピっぽい人は苦手だったから、同じ大学に留学して、しかもルームシェアまですることになって不安だったけど、案外話しやすくて驚いた。
「あー、まだ頭痛てぇ……」
「町田」
「真尋!お前、外国で朝帰りとかやべぇな」
「開口一番がそれか……」
「で、どんな女にお持ち帰りされたの?」
ニヤニヤと聞く町田に、俺は「……内緒」と答えるしか出来なかった。
まさか、男にお持ち帰りされたとは、言えない。
「あ、もしかして、男にお持ち帰りされたとか?」
俺は冷蔵庫から取り出した水を飲もうとして吹いた。
「え!マジで!?本当に男だったの!?」
「な、何で……」
「だってこの街、ゲイが多いことで実は有名なんだぜ?知らなかった?」
「まじか……知らなかった……」
「ゲイバーも多いしさー」
覚えてないけど、きっとゲイバーに迷い込んだ。
俺は、あのイケメンにお持ち帰りされてしまったんだ。
……キモいおっさんじゃなかっただけ、マシだったのかな。
俺はホロリと心の中で泣いた。
『なになに?何の話してるの?』
電話をしていたらしい劉さんは、スマホを片手にリビングにやってきた。
『聞いてよ、劉さん!こいつさー』
『バカ!やめろ!!』
家で大騒動した後、三人は大学に向かった。
今日は大学の登校日初日。
ルームシェア自体は一週間前から始まっていて、劉さんとも町田ともすっかり打ち解けている。
二人のコミュニケーション能力が高いのもあるけど。
俺と町田は語学留学のため、他の語学留学生達が集まる教室に行った。
劉さんは、実は建築学専攻で、1年間この大学で学ぶらしい。
その後、アメリカの大学院に行って、中国にある外資系の建築会社に勤めて、世界で働きたいのだと教えてくれた。
夢が大きいけど、それを努力して叶えようとしている劉さんはすごい。
それに比べて、俺は……。
「おい、真尋。この教室だぞ」
「え、あ、ごめん……」
「そんなショック受けんなよ。貴重な体験したと思ったらいいんだよ」
町田は俺がお持ち帰りされたことがショックだと勘違いしていたが、それもだけど、それ以上に自分がいかに目的もなく生きているかを思い知っていたことにショックを受けていた。
教室に入ると多種多様の国籍の留学生達が所狭しと座っていた。
俺は少し圧倒されながら、指定された席に座った。
前から2番目か……。
大学特有の階段状の教室。
前の扉から、先生が続々と登壇する。
ロマンスグレーの紳士然りとした背の高い男性が教壇に立つ。
大学のパンフレットに載ってた、この大学の学長だった。
『ようこそ、歴史と由緒ある我が大学へ。留学生諸君を歓迎する。
私は、ジョン=マクドネル。イングランドの歴史を研究している。
ここでは様々な分野の学問を学ぶことができる。ぜひ優秀な教員たちと交流しながら知識を吸収していってほしい。
長々と話すのは得意ではないので、ここで教員の紹介をさせてもらいたい。では、若い順にしましょうか……ギルバード教授から』
学長は挨拶を済ますと、一人の男性を教壇に立たせた。
金髪の髪をワックスで後ろに流し、細いフレームの眼鏡の奥にヘーゼルの瞳が見えた。
『初めまして。イギリス文学を研究しています。シン=ギルバードです』
俺は目を疑った。
今日の朝、隣で寝ていた見ず知らずの男が、今、教壇に立っている。
『シンという名前は、日本人である私の祖父、進三郎から取ったものです。私にはイギリス人とスイス人と日本人の血が入っています』
シン=ギルバード教授は、ぐるりと見渡すように広い教室の端から端まで眺めると、俺と目が合った。
口角をあげて、薄く笑う。
『ここにはスイス人の方はいらっしゃらないみたいですが、日本人の方はいらっしゃるみたいですね』
俺、どうしよう。
先生にお持ち帰りされちゃった……?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる