溺愛してよ!

睦月 なな

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個人面談

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まさか、自分の留学先の大学教授と寝ちゃったとは。
ショックが大きすぎて、その後の教授達の紹介は全く耳に入ってこなかった。

その後、オリエンテーションの為、いくつかのグループに分けられ、小さな教室に移動した。
先生が1グループに一人つくらしく、そこで自己紹介や1ヶ月のカリキュラムの説明を行うらしい。

こういう時の嫌の予感は当たる。
俺の担当は、ギルバード教授だった。

クールな感じの先生で、淡々と説明をしていった。
オリエンテーションはそつなく終わり、教授と学生が面談をすることとなった。
1ヶ月の目標とか不安なことを質問するためらしい。
一対一なんて、緊張する。
終わった人から自由時間になるんだけど、くじ引きで1番最後になってしまった……。

俺の番が来た。
ギルバード教授の部屋に行くと、整理整頓が行き届いていて、紅茶の香りがした。

『失礼します』

『座って』

ギルバード教授は、ティーポットで紅茶を入れているようだった。

『ヤマオカ マヒロ君、紅茶は飲めるか?』

『あ、大丈夫です』

白磁のティーカップに紅茶が注がれ、前に出される。
ティーカップのそこには蓮の花が描かれていた。

『リスニングが心配だと、事前のアンケートで答えていたが、私の英語は聞き取れるかな』

『大丈夫です……聞き取れます』

『ライティングのテストでは満点だったらしいし、レポート等の提出は問題ないだろう。聞き取りは他の留学生の中でも心配している人がいる。慣れれば問題ないだろうが、心配だったら、また相談してほしい。他に不安に思っていることは?』

『あ、あの学校の事じゃないんですけど……その、今日の朝……俺、先生の家で寝てしまったみたいで……』

緊張しながら、おずおずと話した。

『あぁ、そのことか……』

教授は立ち上がり、扉に掛けてあった札を『留守中』にして、中から鍵をかけた。
カチリという音にドキッした。

「あれは君から誘ってきたんだ」

ギルバード教授は途端に訛りのない日本語で話し始めた。

「え、先生……日本語?」

「こういう話は聞かれたらお互い気まずいだろ」

それにしても、急にそんな綺麗な日本語はびっくりする。
けど、今はそれどころじゃなくて……。

「お、俺から誘ったって……本当ですか?」

「あぁ、『寂しい、離れちゃ嫌だ』とすがりついてきてな。仕方なく、私の家に連れてきた」

そんな子どもみたいな真似をしたのか……。
顔に熱が集まるのを感じた。

「君はそのまま暑いからといって、服を脱いだり、寂しいから傍に居てだの、キスしてくれだの言って、寝た。
君がいたバーは危ない所だ。そういう関係を持ちたい奴ならいいだろうが、君はゲイじゃなくてストレートなんだろ?
あんな所へは、もう行くな」

「……すみませんでした」

全く記憶にないが、かなりの醜態を見せた上に、面倒まで掛けたらしい。

「全く覚えてないんだな」

「はい、全く覚えてないんです……」

自分が情けなくなってくる。

「あの、先生……俺、先生と、その、最後までしたんでしょうか……」

もうここまできたら、どうとでもなれという気持ちになってくる。

「君は狙われやすい……細身で、肌もキメ細かくて……おまけに」

先生は、グイッと俺の顔を上に向けた。
言いかけた言葉は続くことはなく、先生は美しい顔をニヤリとさせると、俺の耳元に口を寄せた。

「最後までしたかどうか、後ろに指を入れて、確かめてみたらいい」

「え……」

『さぁ、面談は終了だ』

教授は言葉を英語に戻し、ドアを開けた。
俺は呆気にとられながらも、部屋から出るしかなかった。

『気をつけて、帰りなさい』

最後の言葉は色々な意味が込められていそうだ……。

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