婚約破棄から始まる恋(R18)

和気 藹

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5 パーティーの夜1





 失敗したー!

 バチェラーパーティーには既婚者のカーリンは参加できないではないか!


 恥を忍んで親友だけに打ち明けた処女喪失作戦は、今夜単独遂行を余儀なくされてしまい、いきなり見通しが悪くなってリスベスは綺麗にセットした頭を抱える。


 カーリンは侯爵家の馬車で王城まで送ってくれた。車内では「くれぐれも無理はするな」「くれぐれも自棄を起こすな」と「くれぐれも」がゲシュタルト崩壊を起こしそうなほど心配していたが、リスベスは到着当初は独りでパーティーに参加することをそんなに重大に考えていなかった。

 今夜のリスベスは所々に真珠をあしらったマーメイド・ブルーが下に向かってマリンブルーにグラデーションしていくマーメイドラインのホルターネックのドレスを着て、マーメイド・ブルーのイブニング・グローブをはめている。渚のはいから人魚♪である。
 コルセットをせずにウエストニッパーのみで美しいSラインを作れるのは、社交界広しといえどもリスベスくらいだろう。「幼女趣味の男なんてお断りだ!」というリスベスの無言のメッセージがビシビシと伝わる大人っぽい装いだ。


 しかし、パーティー開始から一時間以上経っても友人知人は見つからないし、だれも声をかけて来ない。二・三人連れの女性たちには次々と同数の男性組から声を掛けられているのは目にしたが、独りぽつんと壁の花になってワインを飲んでいるリスベスには声を懸け難いらしく、チラチラとこちらを見ている視線は感じるが、それだけだ。

 すっごく空しくなってきた。やっぱり私は異性に選ばれない人間なんだ。
 予想はしていたけど、改めて突きつけられるとは……。
 胸がつまって苦しくなって涙が出そうになる。しかしここで泣いたらいい笑い者だ。


「帰ろう……」帰りの馬車はないが、まだ宵の口だし王宮だから侍従に泣きつけば屋敷に送ってくれるだろう。カーリンの屋敷でもいい。きっと心配しているだろう。

 空になったグラスを、ワインを配っていたメイドに渡すと出口に向かって歩き出す。

 すると背後から「帰っちゃうの?」という声がかかったような気がした。立ち止まって振り返ったら、自分の後ろに誰もいなかったら、惨めすぎて立ち直れない。

 聞こえなかったフリしよう、そうしよう。歩調は変えずに歩き続ける。

「ねぇ、ブルネットのご令嬢、帰っちゃうの?」今度は近くで聞こえた。そして周りにはリスベス以外ブルネットの女性はいない。振り返ると黒髪に綺麗なサファイヤの瞳に笑みを湛えた美しい青年が立っていた。

「ご令嬢、独りなの? 僕も独りなんだ、少しどこかでおしゃべりしない?」



イイ男キター!

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