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プロローグ
1 顔合わせですよ!
しおりを挟む私はフェルセンダール侯爵家が三女マリアンネ、八歳です。
ダークブロンドとビリジアンの瞳を持つ、手足がひょろっと長い将来美人になりそうな顔立ちをした美少女です。自分の事を美少女言うなって? だって、そう言えって作者が直接語り掛けてくるんですもの。
今、私は王宮にいます。
この国の第一王子アルフォンス殿下の婚約者候補として、初顔あわせ中です。
殿下は細くさらさらのストレート・プラチナブロンドを肩まで伸ばし明るいサファイヤの虹彩に時折白く筋が入る輝く碧眼を持つ如何にも王子様然とした美少年十一歳です。今日のお召し物は白いフリルがふんだんに入ったシャツとウェストミンスターに白のラインが入ったベストと同色の半ズボン、白タイツにビット・ローファーというこれまた王子然としています。
私的にはこうやっておしゃべりしていても嫌悪感を感じる事もないので、きっとお互い可もなく不可もない印象なのではないでしょうか。
私の単純な好みとしては、メガネ男子なら即、了承! バッチコーイ! という感じなのですが、悲しいかなこの世界にはモノクルしか開発されていないので、メガネ男子の中指でブリッジをくいっと上げる仕種が見れないのが、凄く、すごーく残念なところです。
あ、私、二十一世紀日本の転生者です。三十八歳で財務管理部でCFO補佐まで上りつめた局してました。コーヒー好きと仕事の知識を生かしカフェオーナーを目指し勉強していたところの死。もともと遺伝により心臓が弱く妊娠・出産に耐えられる体でなかったので、結婚を諦め、いつ死んでも良い様に法定代理人指定もして死後の事はあんまり心配していなかったのですが……。
心残りはあるんですよ……甥っ子の結婚式を見たかったのと、漫研の部室みたいなカフェ作りたかった事……。
この世界はある乙女ゲーの世界と似た世界で、全てド定番すぎて申し訳ないのですが、気付いたら第一王子の婚約者という役回りの悪役令嬢でした。そこは三十八歳プラスの精神年齢。そうなってしまったことは仕方ない、と腹をくくりました。
婚約者フラグを叩き割り、イベントスルー、ヒロインスルーはデフォルトで行うとして、侯爵家は金持ちだし、両親は私に興味がないし、居てもいなくて一緒の三女だし、前世で果たせなかった、カフェオーナーになる夢を叶えたいと少しづつ準備をしていきたいと思っています。
さて、王宮の庭園内のガゼボで殿下と二人当たり障りのなくお茶を飲み談笑していたのですが、カップの最後の一口を飲んだ殿下が、私にさりげなく質問してきました。
「マリアンネ・フェルセンダール嬢、君は王妃になりたい? それとも僕のお嫁さんになりたい?」
おお、ストレートですね!地位か恋愛かどちらかって事ですね。
いくら何でも十一歳の子供が言うセリフではありません。差し詰め誰かに聞け、と指示されたのでしょう。
「殿下、今から私が申し上げる事は、私個人の考えであり個人の要望です。侯爵家には全く責がありませんので、ご了承願います」
殿下が小さく頷いてくれました。さぁよくある悪役令嬢のフラグスルー第一弾! 言っちゃうよ!
「申し訳ございませんが、私はどちらにもなりたくはございません」
「へぇ……」
殿下はそう言うと完璧なアルカイック・スマイルを浮かべました。
……目が笑っていません、怖いです、十一歳なのに! 甥っ子が十一歳の頃なんて、う〇こ(食事中の方、申し訳ありません)とカードゲームが大好きなダンスィーでしたよ? ちょっと精神年齢高すぎではございませんかね?
「……理由を聞いても?」
「私、カフェオーナーになりたいのです。なので王妃様になりたくないし結婚もしたくありません」
「カフェオーナー?」
「侯爵家の領地にある豆を使った飲み物と軽食を出すお店のオーナーになりたいのです」
「そんなものは、人を使って資金だけ出せば良いのではないの?」
「私には結婚願望がありません。が、悲しい事に私は三女で他家に嫁ぐぐらいしか用途はありません。この国の貴族女性は嫁がなければ修道院に入るぐらいしかなく修道院で実家の援助を受けて余生を送るくらいなら家族に迷惑をかけないように平民のように全てを自分で行って生きていたいのです。私は平民になりたいのです」
「王妃より結婚より平民になりたいと?」
怖いけど殿下に御為ごかしを言っているのではないと理解して欲しくて殿下の目を真っ直ぐに見つめて頷きます。
「はい」
殿下のアルカイック・スマイルが深くなり、一瞬、心底面白そうな、おもちゃを見つけた子供のような無邪気な笑顔になりました。
「君は面白いね」
「あの、ですから、婚約者候補から外していただきたいのです。殿下が嫌だとおっしゃれば即候補から外されるはずです。どうか、お願い致します!」
「うーん、協力してあげたい気もするけど、こればっかりは僕の一存だけでは、ね?」
小首を傾げた殿下の完璧なアルカイック・スマイルを真正面で見てしまった私は、背筋が凍り全身に鳥肌が立つ。
ヤバイ。この人、悪魔だ。
ゲームでは、基本腹黒だけど一度懐に入ると、とことん頼りになるイイ人っていう設定だったけど、私がゲームと違うように殿下もゲームとは違うのでしょう。それはこの先がゲームのようにいかないという暗示でもあります。
そしてこの悪魔の前では私の逃げ宣言は、単なる目立つ悪手だったことも悟りました。
◇◆◇◆◇◆
よく聞くけどよくわからないビジネス用語
CFO;財務管理最高責任者。経営戦略や財務戦略の立案・執行する責任者。会社の資金調達からCEOから社員・パートまで年間給与額とか決める会社の何でも屋さん。
デフォルト;金融ビジネス的には債務不履行。借金がいっぱいで返せなくなる状況を指す。他にプログラミング言語の規定値(初期設定値)を指す。電卓でクリアを押すと0(ゼロ)で表示されるのは初期設定値だから。日本語的には、普通とか仕様とか生態を指す。
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