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声
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何から取ってくるか決める際に、高園の提案で砂から確保する事になった。
校内で襲われたのならば、今はグラウンドが安全だろう、という事なのだが……。
「本当に校舎を安全に抜けられるとは思わなかったなぁ。」
「ええ、そこが不安だったのだけど無事に抜け出せて良かったわ。」
一番の問題と考えていた、校舎の脱出が想定以上に上手くいった。
高園も危険を感じ取れなかったようで、あっちこっちと回らずに、普通に正面玄関から出ることが出来た。
「ここまでとんとん拍子だと逆に不安ね。」
「正面玄関側にいなかったって事は体育館の方だと思うから、油断は出来ないな。」
「グラウンドからは結構離れてるけど、次はそっちかもしれないしね。」
声を潜めながら歩き、無事にグラウンドに辿り着く。
スコップなどの道具は無いため、砂が柔らかく山盛りになっている場所まで行かざるを得ないものの、幸いにも見通しが良い場所では無い。
「この袋に半分程度あれば十分なんだよな?」
「ええ、足りるわ。」
手に持っているのはどこにでもあるキッチン用ポリ袋だ。
この袋に半分程度ならば、あまり時間も掛からないだろう。
「それじゃあよろしくね。」
「……まあ良いけどさ。」
素手で砂を掬い上げて袋に入れる作業を何度か繰り返して、無事に袋に入れ終わる。
手が茶色になってしまったが、後で洗えば良いだろう。
「ありがとう、でもちょっと多いわね?」
「少しくらい余裕があった方が良いだろ。」
何かあっても溢れないように口をしっかりと閉める。
持ち運びやすくなるし、一石二鳥だ。
「砂はこれで大丈夫ね。一旦、これを置いてから次の物を取りに行きましょう。」
「校舎内でバッタリと会うのだけは勘弁して欲しいな。」
「本当にね。」
グラウンドから校舎への帰り道は大きな一本道であり、回り道は出来ない。
どこかの窓から外を見られるだけで見つかる超の付くほどの危険ゾーン。
「走るか?」
「いざという時の為に体力は残したいわ。早歩きにしましょう。」
簡単な打ち合わせを終えて、タイミングを合わせて飛び出そうとする。
丁度その時、どこかで微かな音が聞こえた気がした。
風の音というにはノイズが混じっていたような気がするが、気のせいだろうか。
「なあ高園、さっきなんか変な音が……高園!?」
「後ろよ!」
突然忙しなく周囲を見渡して、顔を青ざめさせたかと思うと、いきなり手を引かれて校舎に向けて走り出す。
警戒するかのように発せられた短い言葉に、あいつが迫っている事を悟った。
「……コセ。……コセ。」
「はあっ…!はあっ…!な、なんか言ってる、ぞ!」
「ふっ…!ふっ…!亡霊の言葉を聞いてはダメよ。ふっ…!意味、なんてない、から!」
「……コセ!……コセ!」
全力で走っているため、身体は熱いはずなのだが、首筋に感じる冷たいモノが汗を引かせる。
声からしてまだ十分に距離は離れている筈なのに、まるで真後ろに張り付かれているかのような存在感が休む隙を与えてくれない。
高園が目線だけでついてこいと訴えかけてくるままに校舎に雪崩れ込み、やや遠回りをしながら理科準備室へ飛び込んだ。
「はぁ、はぁ!」
「ふぅ!ふぅ!」
お互い無言のまま座り込み、激しく呼吸する音のみが響く。
ようやく、忘れ物とばかりに滝のような汗が出始め、制服に染みていく。
暑くて暑くて仕方がないが、この暑さがようやくおぞましい気配から逃げ切った代償だとすれば安いものだ。
「助かった、のか?」
「近くには来てなさそうね。」
「校舎にいる筈だったのに、いつの間にグラウンド側に来てたんだろうな。」
あいつが現れたのはグラウンドの奥にある倉庫や部室練の方向で、俺たちよりも後にグラウンドに来ていたら間違いなく遭遇していた筈だ。
だとすれば、俺たちよりも前にグラウンドの奥にいた事になるが……。
「とにかく、今度は間違いなく校舎側に来ているわね。体育館と美術室の、正面玄関からは遠い方に行きましょう。」
「だったら体育館だな。大縄をここまで持って来れるか少し心配だけどな。」
「場所はわかっているのよね?」
いざとなれば高園が一人でも何とかなるようにという願いを込めつつ、体育館と美術室の場所を説明する。
幸いにも複雑な場所にあるわけでは無いので、簡単に覚えられるだろう。
「それよりも問題は体育館の倉庫だな。ピッキング、本当に大丈夫か?」
「落ち着いて作業出来る時間さえ貰えれば問題ないわ。」
窓も無く、唯一の出入り口が重たい扉の体育館の倉庫はぶち破って中に入る事は不可能だ。
鍵が手に入らなかった以上、彼女の腕次第で命運が決まると言っても過言ではない。
「なあ、今ならもう一回職員室へ鍵を取りに行っても良いんじゃないか?」
「却下よ。あいつだって鍵を狙ってる事くらいわかっている筈だわ。私達を見失った今、職員室で待ち伏せなんてされてたら今度こそ終わりよ。」
彼女の言葉に納得する。
待ち伏せなんて賢い行動が出来るかはさておき、自ら危ない橋を渡ることもないだろう。
「私がピッキング出来ないような扉だったら、その時は改めて職員室の攻略をしましょう?」
「わかった、無事に開けられるのを期待してるよ。」
任せておけ、とばかりに高園の小さな拳が肩に当てられる。
本当に頼もしい相棒だ。
校内で襲われたのならば、今はグラウンドが安全だろう、という事なのだが……。
「本当に校舎を安全に抜けられるとは思わなかったなぁ。」
「ええ、そこが不安だったのだけど無事に抜け出せて良かったわ。」
一番の問題と考えていた、校舎の脱出が想定以上に上手くいった。
高園も危険を感じ取れなかったようで、あっちこっちと回らずに、普通に正面玄関から出ることが出来た。
「ここまでとんとん拍子だと逆に不安ね。」
「正面玄関側にいなかったって事は体育館の方だと思うから、油断は出来ないな。」
「グラウンドからは結構離れてるけど、次はそっちかもしれないしね。」
声を潜めながら歩き、無事にグラウンドに辿り着く。
スコップなどの道具は無いため、砂が柔らかく山盛りになっている場所まで行かざるを得ないものの、幸いにも見通しが良い場所では無い。
「この袋に半分程度あれば十分なんだよな?」
「ええ、足りるわ。」
手に持っているのはどこにでもあるキッチン用ポリ袋だ。
この袋に半分程度ならば、あまり時間も掛からないだろう。
「それじゃあよろしくね。」
「……まあ良いけどさ。」
素手で砂を掬い上げて袋に入れる作業を何度か繰り返して、無事に袋に入れ終わる。
手が茶色になってしまったが、後で洗えば良いだろう。
「ありがとう、でもちょっと多いわね?」
「少しくらい余裕があった方が良いだろ。」
何かあっても溢れないように口をしっかりと閉める。
持ち運びやすくなるし、一石二鳥だ。
「砂はこれで大丈夫ね。一旦、これを置いてから次の物を取りに行きましょう。」
「校舎内でバッタリと会うのだけは勘弁して欲しいな。」
「本当にね。」
グラウンドから校舎への帰り道は大きな一本道であり、回り道は出来ない。
どこかの窓から外を見られるだけで見つかる超の付くほどの危険ゾーン。
「走るか?」
「いざという時の為に体力は残したいわ。早歩きにしましょう。」
簡単な打ち合わせを終えて、タイミングを合わせて飛び出そうとする。
丁度その時、どこかで微かな音が聞こえた気がした。
風の音というにはノイズが混じっていたような気がするが、気のせいだろうか。
「なあ高園、さっきなんか変な音が……高園!?」
「後ろよ!」
突然忙しなく周囲を見渡して、顔を青ざめさせたかと思うと、いきなり手を引かれて校舎に向けて走り出す。
警戒するかのように発せられた短い言葉に、あいつが迫っている事を悟った。
「……コセ。……コセ。」
「はあっ…!はあっ…!な、なんか言ってる、ぞ!」
「ふっ…!ふっ…!亡霊の言葉を聞いてはダメよ。ふっ…!意味、なんてない、から!」
「……コセ!……コセ!」
全力で走っているため、身体は熱いはずなのだが、首筋に感じる冷たいモノが汗を引かせる。
声からしてまだ十分に距離は離れている筈なのに、まるで真後ろに張り付かれているかのような存在感が休む隙を与えてくれない。
高園が目線だけでついてこいと訴えかけてくるままに校舎に雪崩れ込み、やや遠回りをしながら理科準備室へ飛び込んだ。
「はぁ、はぁ!」
「ふぅ!ふぅ!」
お互い無言のまま座り込み、激しく呼吸する音のみが響く。
ようやく、忘れ物とばかりに滝のような汗が出始め、制服に染みていく。
暑くて暑くて仕方がないが、この暑さがようやくおぞましい気配から逃げ切った代償だとすれば安いものだ。
「助かった、のか?」
「近くには来てなさそうね。」
「校舎にいる筈だったのに、いつの間にグラウンド側に来てたんだろうな。」
あいつが現れたのはグラウンドの奥にある倉庫や部室練の方向で、俺たちよりも後にグラウンドに来ていたら間違いなく遭遇していた筈だ。
だとすれば、俺たちよりも前にグラウンドの奥にいた事になるが……。
「とにかく、今度は間違いなく校舎側に来ているわね。体育館と美術室の、正面玄関からは遠い方に行きましょう。」
「だったら体育館だな。大縄をここまで持って来れるか少し心配だけどな。」
「場所はわかっているのよね?」
いざとなれば高園が一人でも何とかなるようにという願いを込めつつ、体育館と美術室の場所を説明する。
幸いにも複雑な場所にあるわけでは無いので、簡単に覚えられるだろう。
「それよりも問題は体育館の倉庫だな。ピッキング、本当に大丈夫か?」
「落ち着いて作業出来る時間さえ貰えれば問題ないわ。」
窓も無く、唯一の出入り口が重たい扉の体育館の倉庫はぶち破って中に入る事は不可能だ。
鍵が手に入らなかった以上、彼女の腕次第で命運が決まると言っても過言ではない。
「なあ、今ならもう一回職員室へ鍵を取りに行っても良いんじゃないか?」
「却下よ。あいつだって鍵を狙ってる事くらいわかっている筈だわ。私達を見失った今、職員室で待ち伏せなんてされてたら今度こそ終わりよ。」
彼女の言葉に納得する。
待ち伏せなんて賢い行動が出来るかはさておき、自ら危ない橋を渡ることもないだろう。
「私がピッキング出来ないような扉だったら、その時は改めて職員室の攻略をしましょう?」
「わかった、無事に開けられるのを期待してるよ。」
任せておけ、とばかりに高園の小さな拳が肩に当てられる。
本当に頼もしい相棒だ。
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