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2章
30話 試練の崖
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その崖はまるで子鬼の森の木々たちの繁殖を防ぐように、横一列に垂直に並べられているようで首を上に向けてもその頂きは雲のベールに隠されて見えない。現実では見られないようなこのゲームの自然を見て恐怖心とも感動ともとれるような感情が沸いた。
なんで、これ子鬼の森から見えなかったんだろう……。まあ、子鬼の森の木々たちもクソでかかったからなぁ。
「これ、昇れるのか?」
ケンジさんの呟きに、何やら手帳を見ていたエマが反応した。
「この崖の出っ張りから登れるよ……。ここを登ったら島の中央部にもっと近づけるらしいけど、何らかの試練が待ち構えているみたい」
すらすらとこの崖について話すエマを見て、圧倒的な光景に呆けていた俺は心を取り戻し、質問した。
「なんかエマ、ここに詳しいな。知っているのか?」
「ええ。ちょっとね」
エマはそう言いながら、手帳を閉じた。
「?」
……
「……」
ケンジが崖の岩を触っていた。
「確かに登れそうだ。よし、クライミングしてみるか」
「え!?クライミングですか」
俺は驚愕するが、ケンジは腕まくりして自身の筋肉を見せつけた。
「俺は現実でもクライミングをしてた時期がある。それに今はこの体だからいけるさ。もちろん手助けする」
「クライミング?」
聞きなじみのない言葉にエマは困惑したが、崖上りのことだとわかると私も得意よ!と意気揚々と言った。
「カジはできる?」
「……いやぁ、俺はねぇ……」
中々ノリノリの二人なのだが、悲しいことに俺にはクライミングの経験なんて一切ない。引きこもりの自分にそんな希有な経験なんてあるはずがなかった。
「大丈夫さ、カジ君」
ケンジさんが俺の肩をポンとたたく。
「これもいい経験さ。大丈夫だ」
それにと言いながら小さい声で言った。
「現実で死ぬわけじゃないからアトラクション気分だ」
「……ありがとうございます」
ケンジさんの励ましは俺を大きく押してくれた。兄貴分のようなその言葉にほっとしたと同時に俺の弟のことが頭に浮かんだ。ケンジさんみたいになれていたら……、そんな心を俺は押し込めた。
「やってみます」
「そうこなくっちゃね」
腕を大きく回し体を温めてワクワクしてるエマを見やり、苦笑いをした。
この後、俺たちは一本のロープでつなぎ合わせ、もし一人が落ちても残り二人が支えられるようにし、三人縦一列の編成を決めた。トップがケンジさん、セカンドが俺、サードがエマ。色々不安が残るが俺たちはさっそく上ることにした。
「ふぅ、意外と、いける、な」
崖を上り始めて気づいたことは案外この崖が上りやすいということだ。するするとまるで体が知っているように上ることが出来る。ゲーム的なアシストがあるのだろう。現実ならこうはいかないだろう。
「おお、ずいぶん登りやすい。久々で気分が良い。どうだ、カジ君も気持ちが良いだろう」
「気持ちいい?」
ケンジさんの言葉が上から聞こえ、俺はそうなのか?と驚いた。今、登れてはいるが気持ちいいというより安堵しているという面が強かった。
「そうよ、カジ。クライミング、気持ちいいでしょ?」
「え、あ、うん」
エマも同じようなことを言い出した。やっぱり慣れている人はそう思うのかなと感じた。
「その声の感じからして分かってないわね~」
「いや、まあ、うん。わかんないかな」
「この石を掴んだときのひんやり感、登るときの風の清涼感。今を生きてるって私は感じるわ!」
嬉しそうなエマの声が下から聞こえた。
そんなことを話しながら手と足を動かしていつのまにか試練の崖の中間までたどり着いた。
なんで、これ子鬼の森から見えなかったんだろう……。まあ、子鬼の森の木々たちもクソでかかったからなぁ。
「これ、昇れるのか?」
ケンジさんの呟きに、何やら手帳を見ていたエマが反応した。
「この崖の出っ張りから登れるよ……。ここを登ったら島の中央部にもっと近づけるらしいけど、何らかの試練が待ち構えているみたい」
すらすらとこの崖について話すエマを見て、圧倒的な光景に呆けていた俺は心を取り戻し、質問した。
「なんかエマ、ここに詳しいな。知っているのか?」
「ええ。ちょっとね」
エマはそう言いながら、手帳を閉じた。
「?」
……
「……」
ケンジが崖の岩を触っていた。
「確かに登れそうだ。よし、クライミングしてみるか」
「え!?クライミングですか」
俺は驚愕するが、ケンジは腕まくりして自身の筋肉を見せつけた。
「俺は現実でもクライミングをしてた時期がある。それに今はこの体だからいけるさ。もちろん手助けする」
「クライミング?」
聞きなじみのない言葉にエマは困惑したが、崖上りのことだとわかると私も得意よ!と意気揚々と言った。
「カジはできる?」
「……いやぁ、俺はねぇ……」
中々ノリノリの二人なのだが、悲しいことに俺にはクライミングの経験なんて一切ない。引きこもりの自分にそんな希有な経験なんてあるはずがなかった。
「大丈夫さ、カジ君」
ケンジさんが俺の肩をポンとたたく。
「これもいい経験さ。大丈夫だ」
それにと言いながら小さい声で言った。
「現実で死ぬわけじゃないからアトラクション気分だ」
「……ありがとうございます」
ケンジさんの励ましは俺を大きく押してくれた。兄貴分のようなその言葉にほっとしたと同時に俺の弟のことが頭に浮かんだ。ケンジさんみたいになれていたら……、そんな心を俺は押し込めた。
「やってみます」
「そうこなくっちゃね」
腕を大きく回し体を温めてワクワクしてるエマを見やり、苦笑いをした。
この後、俺たちは一本のロープでつなぎ合わせ、もし一人が落ちても残り二人が支えられるようにし、三人縦一列の編成を決めた。トップがケンジさん、セカンドが俺、サードがエマ。色々不安が残るが俺たちはさっそく上ることにした。
「ふぅ、意外と、いける、な」
崖を上り始めて気づいたことは案外この崖が上りやすいということだ。するするとまるで体が知っているように上ることが出来る。ゲーム的なアシストがあるのだろう。現実ならこうはいかないだろう。
「おお、ずいぶん登りやすい。久々で気分が良い。どうだ、カジ君も気持ちが良いだろう」
「気持ちいい?」
ケンジさんの言葉が上から聞こえ、俺はそうなのか?と驚いた。今、登れてはいるが気持ちいいというより安堵しているという面が強かった。
「そうよ、カジ。クライミング、気持ちいいでしょ?」
「え、あ、うん」
エマも同じようなことを言い出した。やっぱり慣れている人はそう思うのかなと感じた。
「その声の感じからして分かってないわね~」
「いや、まあ、うん。わかんないかな」
「この石を掴んだときのひんやり感、登るときの風の清涼感。今を生きてるって私は感じるわ!」
嬉しそうなエマの声が下から聞こえた。
そんなことを話しながら手と足を動かしていつのまにか試練の崖の中間までたどり着いた。
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