トラップって強いよねぇ?

TURE 8

文字の大きさ
31 / 51
2章

31話 ソードストライク

しおりを挟む
 順調に進んでいく俺たちだが、中間に差し掛かったところでエマが何かに気づいた。

「みんな止まって!」

 俺とケンジは登る手を止める。

「どうしたんだ?」

「何か聞こえる。こっちに向かってくるわ!」

 エマがそう言うが俺とケンジさんには何も聞こえない。ただ、風の吹く音が聞こえるだけだ。だが、エマがそう言うならば何かあるだろうと俺は当たりを見渡す。

 辺りは空の青がまるで海のように広がっており、少し下には雲海が見えた。いつのまにか雲海を超えて随分と崖を登っていたんだと認識させられたて背中がぞくりとしたが、特に異常はない。鳥が優雅に飛んでいるだけだ。

「鳥?」

 ただ飛んでいるように見えた鳥だが、何やらどんどんと大きくなっていくように……見えた。

「カジ、危ない!」

 エマの声で反射的に下にいたエマを見てしまう。すると、自身の顔の横から石が削れるような大きな音が響いた。

「え?」

 俺はふと、横を見るとそこには顔を崖の岩石にめり込ませた鳥がこちらを覗かせていた。

「うわ⁉︎」

 驚いたのも束の間、その鳥は岩から鋭く尖った紅色のくちばしを引き抜き、俺に向かって突き刺そうとしてくる。瞬間的に片手を掴んでいた岩から離し、刺そうとしてきたくちばしを掴んだ。

「グゥグウウグゥグゥゥ!?」

 くちばしを掴むと鳥は体をバタバタとせわしなく動きもがく。俺は鳥を下に思いっきり投げつけた。鳥は離された後、パニックを起こしたのか空中でももがきながら雲海に飲まれた。


 どうやら今のは鳥の魔物がこっちに向かって高速で突っ込んできたようで、だから鳥が大きく見えたのだ。

 いきなりの出来事だったが、とっさに対処できたことに安堵の息を吐いた。だが、まだ緊急事態は終わっていなかったことを理解してしまった。青一色の空から無数の鳥の群れが現れたからだ。

「やばいな」

上からケンジさんの焦る声が聞こえた。

「『鑑定』」

『ソードストライク
種族 ソードストライク
レベル1

 能力値
HP 4
MP 3
力 7
防御 2
器用さ 1
速さ 16
魔力 2

スキル
ストライクアタック

アーツ
スピードブースト(MP-3)』

 鑑定で魔物のステータスを見ていた途端、ケンジさんが叫ぶ。

「みんな、全速力で上へ登れ!」

 するとソードストライクたちが一斉にこちらへ向かって高速で突っ込んでくる。俺たちは無我夢中で崖を登り始める。

「うわっ⁉︎」

 とてつもない数のソードストライクが登る最中に岩石に突き刺さり、崖がぶるりと揺れていく。俺は落ちそうになるが、踏ん張って耐える。幸いなことにソードストライクに突き刺さったものはいなさそうだ。鑑定で分かった器用さの値の低さが原因かもと悠長に考えていると、第二陣が高速で向かってきた。

「ぐうっ、きっつい、なぁ!」

 俺たちは今3人が縦一列で同じロープが結ばれており、一蓮托生だ。そんな中、俺は他の2人と比べてクライミングの経験はないため、必然として3人が俺のペースに合わせて進むしかなかった。

「すいません!俺の登るのが遅くて」

「いや、大丈夫だ。エマちゃん、俺らが先導するぞ!」

「分かったわ!」

 ケンジさんとエマがそう言うと下にいたエマが瞬時に俺の上まで登ってくる。そしてケンジさんとエマで俺の体を掴みながら器用に登っていき、先ほどの倍以上のスピードで崖を登っていく。平地を走るかののように素早い動きであっという間に登っていく。

「はあ、はあ、はあ」

 さすがに1人を掴んだまま昇るというものは無理があるのだろう。2人は息が絶え絶えとなってくる。俺は息を切らしながら高速で動く2人におんぶにだっこだった。

 ソードストライクの群れは度々襲ってきたが、2人の速さについていくのが精一杯のようだ。

 かれこれ数十分間は休まずに登っていくとようやく、頂上まであと5mという所まで、たどり着いていた。

「よし、終わりが、見えたぞ」

「そ、うね」

 二人の限界が近いのだろう。まともに会話することも難しいぐらいには消耗している。結果として昇るスピードは落ちていき、ソードストライクの群れに追い付かれてしまう。

「ぐっ⁉︎」

 ひと際早いソードストライクがこちらに向かって突き刺さっていき、割れた小さな岩がこちらに降りかかってくる。ゴールはもうすぐなのにそう思った瞬間、一匹のソードストライクが2人と俺の体の小さな隙間に突き刺さった。

「カジ!」

 俺たちに当たらなかったものの、ソードストライクは一蓮托生の証であるロープを両断した。

 一瞬の浮遊感ののち、俺の体は宙に投げ出された。訳が分からないまま無意識で手を出し、岩肌を掴むことには成功した。

 ゲームの中ではあるが、少しチクリと手が痛む感触と全身の冷や汗を俺は感じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略

神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。 そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。 これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...