トラップって強いよねぇ?

TURE 8

文字の大きさ
32 / 51
2章

32話 勇気の証明

しおりを挟む
「大丈夫か!鳥たちの注意を引くから登れ!」

 上を見上げると2人はもう崖を登り終えており、こちらに向かって叫んでいた。大丈夫ですと言おうとしたが、またもソードストライクの群れに妨害される。

「助けるわ!」

「『ファイアショット』!」

 ケンジが火魔法のアーツを使用する。掌から炎が走り、ソードストライクの群れを燃やしていく。黒ずみとなった死骸が雲海へボトボトと落ちていく。

 エマは巨大な弓を展開し弓矢を放ち、ソードストライクの群れを壊滅させていく。

 2人がソードストライクの群れを相手取るのに精一杯のようだ。ここからは自分のみで崖を登るしかない。

 今、自分がいるのは頂上からおよそ10メートル下の場所だ。しっかりと掴んで少しずつ進んでいく。先ほどまでと違って一緒に登ってくれた仲間はおらず、孤立無縁である。クライミングのアシストが入っているはずなのに、体が震えてうまく登れない。

「あっ!」

 掴んだ岩肌が脆く、すぐに崩れて危うく落下しかける。どうにか踏ん張っていくが、もう上へ上るルートが残されていない。ゴールはもう3メートル上であり、近くにあるようで遠すぎる距離に俺はもう立ち往生するしかなかった。

 ああ、自分はなんて情けないんだ。

 内側の声が自分を叱咤する。

 何もできない自分のふがいなさが腹立たしく、悔しかった。

 ソードストライクも立ち往生する俺に気が付いたのかこちらに大勢向かってきており、二人の攻撃でもさばききれない。

 もういっそゲームだから自分から落ちてしまおうかと考えた瞬間、二人の声が聞こえた。

 声の方を振り向くと、二人が崖から身を乗り出しながら俺に手を伸ばしていた。

「飛べ!」

「飛んで!」

 その時、なぜだろうか、その言葉を聞いた途端に飛びたい、飛ばなければという思いが俺の中で生まれた。そして、気が付いたときには俺は空中に浮いていた。

「うああああああああ!?」

 先ほどまで乗っていたわずかな足場をけり崩し、自ら宙に浮いていた。視界が走馬灯のようにスローモーションとなり、手がゆっくりと断崖絶壁の崖の際を掴もうと伸びていく。後60センチ、後50センチ。

 伸ばした手は届かず、空を掴んだ。

 だが、俺は落ちることはなかった。俺の伸ばした手は2人によってつながれていたからだ。すぐさま崖のほうまで引っ張られ、地面に横たわる。

 これがチームなのか。

「はぁぁぁー」

 安堵の息を吐いていると、ケンジさんが俺に手を差し伸ばす。

「ナイスファイト、でも油断してる暇はなさそうだぞ」

 伸ばされた手を取り、構えている二人に加勢し、剣を抜くが鳥たちの様子がおかしい。ざわざわと鳴き出し、集団があっという間に分散され、散り散りに逃げていく。

「さっすが私たち!あいつら恐れをなして逃げ帰ったわね」

 エマが誇らしげに言うが、何か様子がおかしい。先ほどまで執拗に攻撃を加えていたソードストライクが俺が上に登り切っただけで、ああも動揺して逃げるだろうか?

 ケンジさんに聞いてみようかと話しかけようとすると、後ろから大きな風切り音が聞こえた。

 後ろを振り返るとバサバサと巨大な羽を広げたワシ頭の鳥が地上に降り立とうとしたところだった。

「っ!?」

 なぜ気が付かなかったのだろうか?先ほどのソードストライクが通常のカラスほどの大きさであったが、今、存在感を醸し出すこの鳥は人を丸呑みできそうなほど大きい。

 そいつは、まるで最初からそこにいたかのように堂々と俺たちの前に立ち、それぞれの顔を見つめていた。

 これは逃げ帰るわけだと、さっきのソードストライクの行動を理解できた。

「これは勝てるのか……」

 ケンジさんが緑色の巨大な斧を前に構え、臨戦態勢をとる。俺もより剣を深く構える。

 だが、そんな俺たちとは正反対にエマは自分の弓を下げ、その鳥に向かって近づいていく。

「危ないぞ!エマちゃん!」

「大丈夫、この鳥はブレイブバードよ。勇気を認めた者に現れる鳥」

 そういいながらエマはブレイブバードにそっと近づいていく。そしてエマが触れようとした瞬間、首を軽く振って手を払いのけた。

「私……じゃないみたい。カジ、近づいてみて」

「危険……じゃないのか?」

「いえ、ブレイブバードは急に襲ったりしないわ。お父さんの手帳にも書かれていたの」

 俺はその言葉を聞き、とにかく勇気を振り絞って徐々に近づいてみようとする。近づいてみるとこのブレイブバードの巨大さがありありと伝わってくる。

 怖いという感情もあるが、不思議と体は先へ先へ進み、もうくちばしと手が触れ合う寸前まで近づいていた。

 エマと同じように払われると思ったが、そうはならず、くちばしに手がちゃんと触れた。

 ひんやりとして滑らかな感触が伝わり、気持ちがいい手触りだと感動した。

「気持ちいい……ケンジさんも挑戦してみません?」

「ああ、どれいっちょ」

 ケンジさんも無事に触ることができ、手でくちばしをやさしく触りながら確かに気持ちがいいなとつぶやいた。

「どうやら二人の勇気が認められたようね」

「うわっ!」

 ブレイブバードが俺の顔を舌でぺろりとなめてきた。どうやら本当に敵対はしないようだ。

「いいなぁ、二人ばっかり」

 エマは憎らしそうに俺たちをじっと見ていた。

「ガァ」

 ブレイブバードは突然鳴きだし、すたすたと歩きだしていく。

 なんだなんだとついていくと、そこには

「……すごい」

 絶景が広がっていた。

 地平線まで広がった青い空の下に巨大な湖があり、そこでは何やら大小さまざまな水の球が浮いていた。それらが光を反射してきらきらと辺りを輝かせ、現実では見られない風景を作り出していた。

「これは水の妖精が大気中の水を集めて作っている水の揺りかごね。太陽の光の熱だけ吸収して光は反射しているからこんなきれいな光景が出来上がるってことね」

 美しい光景に瞬きを忘れていたが、我に返りエマに尋ねる。

「この場所について詳しいね、エマ」

「……ええ、第一陣の冒険者だったお父さんが残してくれてたの」

 悲しい顔を見せながら彼女は手帳を見せてくれた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活

シン
ファンタジー
 世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。  大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。  GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。  ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。  そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。  探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。  そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。  たまに有り得ない方向に話が飛びます。    一話短めです。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

おっさん冒険者のおいしいダンジョン攻略

神崎あら
ファンタジー
冒険者歴20年以上のおっさんは、若い冒険者達のように地位や権威を得るためにダンジョンには行かない。 そう、おっさんは生活のためにダンジョンに行く。 これはそんなおっさんの冒険者ライフを描いた生活記である。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...