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第1部

その2

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控室には、先程のマスカレードの女が待っていた。

「助かったわ、ありがとう」

マスカレードの女は無言のまま頷くと、きびすを返し後ろ手に手を振りながら去っていった。

颯爽としているというか芝居がかっているというか、バーガンディのロングチャイナドレスに合わせて少し茶色がかったロングのカーリーヘア、それにくすんだ金色のマスカレード。

艶やかというか妖しいというか、とにかくミステリアスなひとだなと千秋は思った。
我にかえり、ポーチからスマホを取り出すと通話とメールの着信がたくさん入っている。あちゃあと思いながら、まずは蛍と連絡をとる。

「なにやっているのよ、大丈夫?  何かあったの」

心配半分怒り半分の声が聞こえてきた。

「ゴメン、予定外の事があって連絡遅れちゃった」

「何があったの、まさか」

「あー、話すと長くなるから事が終わったら話すわ。とりあえず今のところコッチは大丈夫よ。そっちはどう」

「予定どおり進んでいるわ。ハジメもスタンバイ中」

「そう」

「ねえ、何があったの。本当に大丈夫なの」

「違うのよ、実はね……」

千秋はさっきあった事を手短に話す。蛍は呆れながらも冷静に分析をして、その考えを話す。

「あのさ千秋、たぶん会場の外にキジマかその仲間がいるよ、中に入って確かめたいけど自分達ではできないから、課長を使ったんだと思う」

千秋は、あっと思う。蛍は続ける。

「それからバイヤーに会いたがっているのと、本来のルートに挨拶しにいったのと合わせて考えると、おそらくキジマ達に、そのルートの確保をいわれているんだと思うわ」

その言葉で千秋も気づいた。

「2割引きの仕組み、わかったわ。コンペに勝った後、私が確保した品が宙に浮くから、それを安く叩いて買取り、それで利益を出すつもりだったのね」

「おそらくね、綱渡りもいいとこだけど勝てば何とかなると思っているんだわ」

「ほほう、なめた真似してくれるわねぇ。おかげて躊躇する気持ちがなくなったわ。ケイ、予定通り今から出るわ」

「オーケー、ほぼ時間通りね。待っているわ」

千秋は通話を切ると他の着信を確認する。

ノブからは、メールで[姐さん、うまくいってます]と来ていた。[がんばってね♥️]と返信する。

一色からも、メールで[こちらは順調です。無理しないで下さいね、成功を祈ってます]と来ていた。
[ありがとう、そちらもがんばってね♥️]と返信する。

スマホをポーチに仕舞うと、立ち上がり会場へと向かった。
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