佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

文字の大きさ
86 / 322
第1部

その2

しおりを挟む
「嫌いじゃないけど、あんまり興味ないわね」

「興味のあるヲタクの偏執狂パラノイアぶりは想像できますか」

「それは想像できる」

なにしろ身近にそういうのがいるから。

「財団側の3人のうち2人がAAのファンなのを、資料から知りました。その2人はどのくらいディープなのかを調べてました」

金曜日、一色君の端末にヲタらしいサイトが出てたのはそういう意味かと千秋は思い返した。

「そういうの分かるの?  というか、そのダブルエーって何なのかから説明してくれる」

「あ、そうですね。AAは通称で、[青木川アリス]の事です」

「青木川アリス?  」

「メジャーデビューはしていませんが、とある小説投稿サイトの有名作家です。ファン数はかなりのもので、しかも大半が熱狂的な人達ばかりなんです。その人のグッズを付けます」

そう言われても、千秋にはピンとこない。知り合いの熱狂的というか偏執的なのは、部屋や持ち物にグッズをところ狭しと置いてあるが、それ以外は普通である。
とてもプレゼンを左右するほどの付加価値とは思えないのであった。

「一色君、悪いけど、それって億単位のコンペを左右するほどの付加価値に思えないわ」

千秋の不安げな言葉に、一色は平然と答える。

「なりますよ。間違いなくね」

なんだろう、この奇妙な自信は。千秋は急に不安が大きくなってきた。

一色君はそつなく仕事が出来るのは間違いないが、その仕事ぶりは社内での事だけかもしれない。
対外的な仕事はしたことないんではなかろうか、それでピントがずれているかもしれない。

とはいえ、もう時間も無いし、人手も無い。彼に任せるしかないのだ。

「一色君、その付加価値は出すタイミングを間違えないでね。まずは正当にプレゼンをして、それからよ」

このくらいのアドバイスしか出来なかった。

一色は、はい、というとても爽やかな返事をした。



  8時半になった。
今回は千秋の方が先に喫茶店を出て、会社に向かった。
社内に入り、エレベーターで企画部があるフロアではなく、重役室のあるフロアで降りる。

フロア内を進み護邸常務の部屋に来ると、秘書に声をかける。

「おはようございます。常務はおみえでしょうか」

「おはようございます、佐野主任。常務は9時にお越しになると連絡がありましたので、まだいません」

待たせてもらうことにして、フロアロビーにあるソファで座っていると、秘書がコーヒーを淹れて持ってきてくれた。

今日2杯目のコーヒーであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい

葉方萌生
ライト文芸
淡路島で暮らす28歳の城島朝香は、友人からの情報で元恋人で俳優の天ヶ瀬翔が島に戻ってきたことを知る。 絶妙にすれ違いながら、再び近づいていく二人だったが、翔はとある秘密を抱えていた。 過去の後悔を拭いたい。 誰しもが抱える悩みにそっと寄り添える恋愛ファンタジーです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。 狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか! 四社の狐に天狐が大集結。 第七弾始動! ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...