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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

──メグミックスとなる

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「後かたづけ終わったよー」

 階段を上がり二階の居住空間にくると、先輩はパソコンと格闘していた。

「お疲れ様、ちゃんとやったか」

「マニュアルどおりにね。火の元と戸締まりは三回確認したよ」

「うん、それならよし。明日もこき使うから早く休めよ」

「先輩は?」

「仕入れのメール送ったから、思いついたイベントの企画を忘れないうちにまとめとく。仕事はどうだ、やれそうか」

「うん、接客業はわりと得意というか好きだからね。でもスゴイですねぇ、しばらく会わないうちにお店持っているなんて」

「たまたまだよ。卒業してから映像業界に就職してさ、将来の夢があるってあちこちで話してたら、融資するからお店やってくれって人に出会えたんだよ」

 アタシが先輩の朝日さんに連絡したとき、大須商店街の一角にあるコスプレ喫茶店[レディ・クイーン]を経営しているから働きに来いと言われて、ラッキーだと思った。
 昨日は来てすぐに働かされたけど、モンスターボックスモンボでバイトしていたのが役に立ち、そのまま採用となった。

「しかしまあ相変わらず行き当りばったりの人生だなぁ。起先輩が心配するのもわかるよ」

「いーじゃない、それも人生よ。それにアタシがこうなったのは先輩のせいでもあるでしょー」

「まあな……、本当にあの時はどうしようかと思ったよ」

「どの時?」

「起先輩がサークルに乗り込んできたときさ。お前のせいで就職がふいになったってな」

「知らなーい」

「お前が出ていった日に就職先の、群春物産だっけ? そこの人事の人が来て内定を取り消してくれと言われたんだと」

「なんでさ」

「お前のお客さん、救急車で運ばれたろ。それが原因で接待費を会社からちょろまかしていたのがバレたんだと。起先輩はなんにも知らなかったけど、接待されたことと、そのことを知っている起先輩を入社させられないことを暗に言われたんだそうだ」

「アタシのせいじゃないもん、たーさんだって会社の社長だって言ってたしぃ」

「オレのせいでもねーよ。だけど気の毒だしサークルの後輩の不始末だしモンボあそこ紹介したのもオレだしな。だから人脈をフル活用して就職先を紹介したのさ」

「ありがとーゴザイマス」

「もっと心を込めて言え。とにかくお前はオレに借りが山程あるんだから、少なくともかき入れ時の年末年始はちゃんとんと働けよ」

「はいはーい」
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