上 下
29 / 69
変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

その8

しおりを挟む
 美恵を抱き寄せ耳元でお礼を言う。

「ありがとう美恵、なんだかわだかまりがひとつ消えた気分だよ」

「そう、よかった」

「君はすごいな。よくそこまで考えられるよ、僕では考えもつかなかった」

「うーん、たぶんねレイヤーさんの気持ちを考えるクセのせいじゃないかな。衣装を作るときにキャラの性格とか考えるようにしてるから」

 なるほど、キャラの深堀がすごいんだろうな。これが思い込みの激しさとなるのか。

「あとね、圭一郎さんのこといつも考えてるからかなー」

 含み笑いしながら空いた僕の手を取り掌を弄り始める。

「どうして」

「今日ね、昨日の夜のこと反省してたんだけど、圭一郎さんがメグミちゃんに対する態度がなんかおかしかったの。いつもやさしい人がなんかつっけんどんな感じがしてたなーって」

「そうかな」

「あたしもお兄ちゃんがいるけど、兄妹と兄弟って接し方が違うのかなーってだけ思ってた」

 ──気がつかなかったけど、思い当たることはある。女装した弟を見るたびに少し苛ついていたのだろう。男がそんな格好をするなと。

「だけど今話しを聞いてね、ああそれだけじゃない、もしくはそれじゃないかもって考えて話してみたんどけど……」

「そうだね、僕自身もそこまで考えたことなかったよ。会話って大事だな、独りよがりの考えじゃなくなる。美恵のおかげだ」

「よかった」

 感謝の気持を込めて抱き締める。耳元で美恵の嬉しそうに鼻を鳴らすのを聞き、今晩も全力愛情表現をしたくなる。

「する?」

「しよ」

 絡みつく腕の重さを首に感じながら抱き上げて立ち上がると、ベッドルームへと向かう。
 美恵をベッドに下ろしたあと、リビングに戻って消灯。真っ暗の中でそろそろとベッドに向かう。

「はやく~、圭一郎さんのだ~いすきなおっぱいはココにあるよ~♪」

いま行きま~す♪




 明日も仕事があるので、軽めのエクササイズクラスで愛情表現を致すと、眠りにつく。


 今度恵二郎に会ったらちゃんと話をしてみよう、あいつ今頃どうしているかな……。





 
しおりを挟む

処理中です...