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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編
その3
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今年が終わるまであと一時間を切ろうとしていた。
紅白歌合戦と笑ってはいけない番組をザッピングしながら観たあと、僕たちは出かけた。
コンコースを抜けて信号を渡り、ロータリーから本町商店街に入るとそのまま真清田神社へと向かう。
「ここ昔は参道だったんだって。神社の門前市が商店街の始まりらしいよ」
「へえ、そうなんだ。それより寒くないかい」
「大丈夫よ、着物って意外とあったかいんだからぁ」
振袖姿の美恵の横に並んで、少し後ろをガードする感じで歩く。
お昼に特上えび天ののった豪華な年越し蕎麦と、残りのえび天をひとつ半づつのせた卵とじ天丼を食べたあと、美恵は作業部屋にまた籠もった。
何をしているのか訊きたかったが、あとでね楽しみにしててねと言われてたので、ふたたびテレビを観ながら待つことにした。
そして知らぬ間に寝てしまい、起きたらすでに紅白歌合戦の半分が終わっていた。
「あ、圭一郎さん起きた」
美恵の声にソファから起き上がりそちらを見ると着物、それも振袖姿の美恵がいた。
すぐに警戒信号が頭に響いた。
「み、美恵だよな」
「そうよ、寝ぼけているの」
──どうやら美恵本人らしい、ホッとした。
「なんで着物なの」
「着られるうちに着ておこうと思って」
そう言ってはにかむ。意味が分からなかった。
「着物なんていつでも着られるだろ」
「そうじゃなくて……、振袖って未婚の人しか着られないんだよ」
照れながら言う美恵を見て、ようやく理解した。
来年の今頃は着られないから、つまり既婚者だから、つまり……。
「二年参りはこれで行くね」
「ああ、そうだね」
そして今、本殿前の人混みの混雑のなか、届けとばかりにかなり離れたところからお賽銭を二人して投げ、除夜の鐘を聴きながらお参りをした。
「今年もよろしく」
「こちらこそ」
大変な年末だったが、なんとか丸くおさまった。
日付が代わり、新しい人間関係で新しい年が始まる。
本殿東にある服部神社になんとかやってくると、ふたたび参拝。
服飾の神様であり、恋愛のご利益もあるらしい。僕たちはそれぞれに拝む必要がある神様なので、おそらく互いに本殿より力強く拝んだと思う。
そのまま東門から出て、少し遠回りになるが市役所前の道を通って帰途についてるその時にスマホが震えた。メグミからだった。
──けいちゃん、明けましておめでとうー。
ハイテンションな声ににぎやかなBGMが漏れ聴こえる。
「おめでとう、仕事中なのか」
──うん、年越しライブやってるー。頑張ってるよー。
ああ頑張れよと言って切ろうとしたら美恵に代わって欲しいと言うのでスマホを渡す。
「もしもしメグミちゃん、明けましておめでとう。今年も、というかこれからもよろしくね」
そのあと二三回会話を交わしたあと、美恵が返答に困って、スマホをスピーカーに変える。
──もしもしけいちゃん聴こえる?
「ああ、どうした」
──あのね、今度こそ頑張って稼いでおっぱいつけるからさ、けいちゃん好みのおっぱいにするね。
「好きにしろよ」
なに美恵に話してるんだよ。
──だからまたおねえさんのおっぱい見せてね。
「見せるか!!」
全然懲りてない妹に新年早々叱りつけた。
紅白歌合戦と笑ってはいけない番組をザッピングしながら観たあと、僕たちは出かけた。
コンコースを抜けて信号を渡り、ロータリーから本町商店街に入るとそのまま真清田神社へと向かう。
「ここ昔は参道だったんだって。神社の門前市が商店街の始まりらしいよ」
「へえ、そうなんだ。それより寒くないかい」
「大丈夫よ、着物って意外とあったかいんだからぁ」
振袖姿の美恵の横に並んで、少し後ろをガードする感じで歩く。
お昼に特上えび天ののった豪華な年越し蕎麦と、残りのえび天をひとつ半づつのせた卵とじ天丼を食べたあと、美恵は作業部屋にまた籠もった。
何をしているのか訊きたかったが、あとでね楽しみにしててねと言われてたので、ふたたびテレビを観ながら待つことにした。
そして知らぬ間に寝てしまい、起きたらすでに紅白歌合戦の半分が終わっていた。
「あ、圭一郎さん起きた」
美恵の声にソファから起き上がりそちらを見ると着物、それも振袖姿の美恵がいた。
すぐに警戒信号が頭に響いた。
「み、美恵だよな」
「そうよ、寝ぼけているの」
──どうやら美恵本人らしい、ホッとした。
「なんで着物なの」
「着られるうちに着ておこうと思って」
そう言ってはにかむ。意味が分からなかった。
「着物なんていつでも着られるだろ」
「そうじゃなくて……、振袖って未婚の人しか着られないんだよ」
照れながら言う美恵を見て、ようやく理解した。
来年の今頃は着られないから、つまり既婚者だから、つまり……。
「二年参りはこれで行くね」
「ああ、そうだね」
そして今、本殿前の人混みの混雑のなか、届けとばかりにかなり離れたところからお賽銭を二人して投げ、除夜の鐘を聴きながらお参りをした。
「今年もよろしく」
「こちらこそ」
大変な年末だったが、なんとか丸くおさまった。
日付が代わり、新しい人間関係で新しい年が始まる。
本殿東にある服部神社になんとかやってくると、ふたたび参拝。
服飾の神様であり、恋愛のご利益もあるらしい。僕たちはそれぞれに拝む必要がある神様なので、おそらく互いに本殿より力強く拝んだと思う。
そのまま東門から出て、少し遠回りになるが市役所前の道を通って帰途についてるその時にスマホが震えた。メグミからだった。
──けいちゃん、明けましておめでとうー。
ハイテンションな声ににぎやかなBGMが漏れ聴こえる。
「おめでとう、仕事中なのか」
──うん、年越しライブやってるー。頑張ってるよー。
ああ頑張れよと言って切ろうとしたら美恵に代わって欲しいと言うのでスマホを渡す。
「もしもしメグミちゃん、明けましておめでとう。今年も、というかこれからもよろしくね」
そのあと二三回会話を交わしたあと、美恵が返答に困って、スマホをスピーカーに変える。
──もしもしけいちゃん聴こえる?
「ああ、どうした」
──あのね、今度こそ頑張って稼いでおっぱいつけるからさ、けいちゃん好みのおっぱいにするね。
「好きにしろよ」
なに美恵に話してるんだよ。
──だからまたおねえさんのおっぱい見せてね。
「見せるか!!」
全然懲りてない妹に新年早々叱りつけた。
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