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第一話 ある老人の死
ミドウからの挑戦 その5
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休憩から戻り、四人とも無言で報告書などの書類作成をしていると、ようやくクロが戻ってきた。
「お疲れ様です。どうしたんです、ずいぶんと席を外していましたが」
メンバー代表でクロに話しかけるのは、だいたいカドマの役割である。
「ああ、ちょっとややこしいコトになってな。ちょうどお昼だ、皆んなでメシを食いながら話そうか」
「わかりました。皆んな行くぞ」
全員が手をとめて立ち上がり、クロのあとについて外出する。
※ ※ ※ ※ ※
行きつけの食堂でいつもの六人席に座る。クロの両隣にカドマとタマが座り、対面にマキとミツが座る。
(なんかベテラン三人に説教される若手みたいでやだなー)
さっきタマと揉めたばかりだから離れた場所に座りたかったが、ミツに取られてしまったので仕方なく近場に座る。
日替わりランチを人数分頼んだあと、水をひと口飲んでからクロが話しだす。
「さっき課長と一緒に署長に呼び出されたんだが、本部から監察がくるらしい」
三人がタマをいっせいに見る。
「まてまてまて、心当たりはないぞ、最近はやってないだろう、なぁカドマ」
慌てるタマにクロが違う違うと首をふる。
「タマだけじゃない、ウチの班全員だ」
「班全員?! なんかやりましたか」
「……ミドウだよ。ミドウ案件が本部で問題になったらしい」
ああ、と全員が納得する。
「ウチの監察は事情を知っているから問題視していないが、報告書しか見ていない本部ではそうはいかないらしい。元上司が第一発見者だったり関係者だったりする事件が目につけば、やはり元上司とつるんでマッチポンプして点数稼ぎしているんじゃないかと疑っているそうだ」
「どこからそのネタが」
「ここからは独り言をいうだけだから、あとで忘れろよ。署長が定年間近だろ、同期の監察から雑談というカタチで忠告してくれたんだ、それをさっき課長と一緒に教えてもらった」
定年間近の同期にミソをつけないよう配慮してもらったのかと、メンバー全員内心そう思った。
「監察がたとえ同期でもそんなこと漏らすはずがないから、向こうもあまり重要視してなくて、確認くらいのレベルだろうけど、万が一があるから気をつけろということだ」
クロがそこまで話したところで日替わりランチがやってきた。
今日は生姜焼き定食で、ご飯、味噌汁、漬物それにキャベツの千切りと甘辛い味付けの豚肩ロースの薄切りの生姜焼きが乗っている。
「先に食べてしまおうか。話はまたあとにしよう」
それを合図に全員が箸をとる。
※ ※ ※ ※ ※
食べ終わり、下膳してもらってお茶を飲みながらクロは話の続きをする。
「さて、続きだ。本部監察対策として、とりあえずミドウ案件をピックアップして、ミツ、まとめておいてくれ」
「はい!」
先生に褒められた小学生みたいに元気な返事をするミツ。
(玉ノ井さんにもそう接してよ)
と、マキは呆れる。
「まあ訊かれるのは俺だろうから大丈夫だと思うが、カドマとタマも心していてくれ」
「分かりました」
「ういっす」
「それでだ、マキくんには重要な任務がある」
「は、はい」
「ミドウに張りついてほしい」
「はい……って、えーーーー!!」
思わず大声を出してしまい、慌てて口をつぐんだ。
「は、班長、どういう意味ですかそれ」
「いくら俺たちが気をつけても監察中にミドウが何かやらかしたらムダになる。だから見張っててくれということだ」
「それは分かりましたが、どうしてわたしなんです」
「理由はふたつ、ひとつはこの中でミドウと面識がないのがマキくんだけだからだ。他のメンバーだと繋がりを疑われるかもしれんからな」
これは納得するしかなかった。たしかに赴任したばかりで、ミドウと仕事をしたことが無いのは自分だけだと。
「もうひとつは何だが……、マキくんとミドウは縁があるからというカンだな」
「いやいやいや班長、それは無いですよ。一昨日会ったばかりのヒトに縁もなにも無いでしょう」
かなり慌てふためいているのか、マキはぞんざいな言い方になっているのに気づいてない。
メンバーたちは、おいおいと思ったが、クロは気にせず話を続ける。
「まあ俺のカンだけどな。昨日だけで三回も会ってるじゃないか、俺はマキくんのおかげで昨夜やっと会えただけだぞ」
「たまたまです、偶然です、気のせいです」
「あると思うけどなぁ、皆んなはどう思う」
クロの問いにまずはタマがこたえる。
「有るか無いか知りませんが、居なくても問題は無いですね」
素っ気なく言うタマにマキはキッと睨みつける。
次にミツがこたえる。
「その役目、僕がやります」
「聞いてなかったのかミツ、面識のあるヤツはダメなんだよ、ましてやお前じゃミドウさんに転がされるのが目に見えてるだろが」
タマに一喝されて、しゅんとしたあと、マキを羨ましそうに見る。
そして最後にカドマがこたえる。
「縁が有る無しはともかく、客観的にみればたしかにマキくんしかいないですね。重要な役割だ、頼むよマキくん」
「そんなぁ~」
(無理だ。あの人と組むなんて、考えただけで胃が痛い)
だが、ほぼ満場一致でマキがミドウ番になることが決まる事となった。
「お疲れ様です。どうしたんです、ずいぶんと席を外していましたが」
メンバー代表でクロに話しかけるのは、だいたいカドマの役割である。
「ああ、ちょっとややこしいコトになってな。ちょうどお昼だ、皆んなでメシを食いながら話そうか」
「わかりました。皆んな行くぞ」
全員が手をとめて立ち上がり、クロのあとについて外出する。
※ ※ ※ ※ ※
行きつけの食堂でいつもの六人席に座る。クロの両隣にカドマとタマが座り、対面にマキとミツが座る。
(なんかベテラン三人に説教される若手みたいでやだなー)
さっきタマと揉めたばかりだから離れた場所に座りたかったが、ミツに取られてしまったので仕方なく近場に座る。
日替わりランチを人数分頼んだあと、水をひと口飲んでからクロが話しだす。
「さっき課長と一緒に署長に呼び出されたんだが、本部から監察がくるらしい」
三人がタマをいっせいに見る。
「まてまてまて、心当たりはないぞ、最近はやってないだろう、なぁカドマ」
慌てるタマにクロが違う違うと首をふる。
「タマだけじゃない、ウチの班全員だ」
「班全員?! なんかやりましたか」
「……ミドウだよ。ミドウ案件が本部で問題になったらしい」
ああ、と全員が納得する。
「ウチの監察は事情を知っているから問題視していないが、報告書しか見ていない本部ではそうはいかないらしい。元上司が第一発見者だったり関係者だったりする事件が目につけば、やはり元上司とつるんでマッチポンプして点数稼ぎしているんじゃないかと疑っているそうだ」
「どこからそのネタが」
「ここからは独り言をいうだけだから、あとで忘れろよ。署長が定年間近だろ、同期の監察から雑談というカタチで忠告してくれたんだ、それをさっき課長と一緒に教えてもらった」
定年間近の同期にミソをつけないよう配慮してもらったのかと、メンバー全員内心そう思った。
「監察がたとえ同期でもそんなこと漏らすはずがないから、向こうもあまり重要視してなくて、確認くらいのレベルだろうけど、万が一があるから気をつけろということだ」
クロがそこまで話したところで日替わりランチがやってきた。
今日は生姜焼き定食で、ご飯、味噌汁、漬物それにキャベツの千切りと甘辛い味付けの豚肩ロースの薄切りの生姜焼きが乗っている。
「先に食べてしまおうか。話はまたあとにしよう」
それを合図に全員が箸をとる。
※ ※ ※ ※ ※
食べ終わり、下膳してもらってお茶を飲みながらクロは話の続きをする。
「さて、続きだ。本部監察対策として、とりあえずミドウ案件をピックアップして、ミツ、まとめておいてくれ」
「はい!」
先生に褒められた小学生みたいに元気な返事をするミツ。
(玉ノ井さんにもそう接してよ)
と、マキは呆れる。
「まあ訊かれるのは俺だろうから大丈夫だと思うが、カドマとタマも心していてくれ」
「分かりました」
「ういっす」
「それでだ、マキくんには重要な任務がある」
「は、はい」
「ミドウに張りついてほしい」
「はい……って、えーーーー!!」
思わず大声を出してしまい、慌てて口をつぐんだ。
「は、班長、どういう意味ですかそれ」
「いくら俺たちが気をつけても監察中にミドウが何かやらかしたらムダになる。だから見張っててくれということだ」
「それは分かりましたが、どうしてわたしなんです」
「理由はふたつ、ひとつはこの中でミドウと面識がないのがマキくんだけだからだ。他のメンバーだと繋がりを疑われるかもしれんからな」
これは納得するしかなかった。たしかに赴任したばかりで、ミドウと仕事をしたことが無いのは自分だけだと。
「もうひとつは何だが……、マキくんとミドウは縁があるからというカンだな」
「いやいやいや班長、それは無いですよ。一昨日会ったばかりのヒトに縁もなにも無いでしょう」
かなり慌てふためいているのか、マキはぞんざいな言い方になっているのに気づいてない。
メンバーたちは、おいおいと思ったが、クロは気にせず話を続ける。
「まあ俺のカンだけどな。昨日だけで三回も会ってるじゃないか、俺はマキくんのおかげで昨夜やっと会えただけだぞ」
「たまたまです、偶然です、気のせいです」
「あると思うけどなぁ、皆んなはどう思う」
クロの問いにまずはタマがこたえる。
「有るか無いか知りませんが、居なくても問題は無いですね」
素っ気なく言うタマにマキはキッと睨みつける。
次にミツがこたえる。
「その役目、僕がやります」
「聞いてなかったのかミツ、面識のあるヤツはダメなんだよ、ましてやお前じゃミドウさんに転がされるのが目に見えてるだろが」
タマに一喝されて、しゅんとしたあと、マキを羨ましそうに見る。
そして最後にカドマがこたえる。
「縁が有る無しはともかく、客観的にみればたしかにマキくんしかいないですね。重要な役割だ、頼むよマキくん」
「そんなぁ~」
(無理だ。あの人と組むなんて、考えただけで胃が痛い)
だが、ほぼ満場一致でマキがミドウ番になることが決まる事となった。
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