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現実世界に戻って
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「おい!!大丈夫か?!」
大きな声で呼びかけられる。
救急車のサイレンの音で辺りは騒然としているようだ。
体のあちこちが痛い。
「おい!!」
「ん、、、痛っ、、、」
「意識確認!早く救急車へ!!」
なんだろう?
あたしはやっとの事で目が覚める。
何かが燃えたような匂いとガスの匂いが入り混じっている。
虚ろな目で周りを見回すとガソリンスタンドが燃えていた。
警察やら消防士らが忙しなく動き回っていて、規制線が張られ、周りには大勢の人だかり。
あたしは起き上がることが出来ず、救急隊員の人たちによってストレッチャーに乗せられた。
体が痛い。
(そうだ!ガソリンスタンドが爆発したんだ、、、。)
そう気づいた時にはあたしは救急車の中だった。
*
「ずいぶん衰弱している様子ですが、命には別状ありません。」
病院に着き、お母さんとお父さんが駆けつけて看護師さんと話している。
どうやらやけどもたいしたことはないらしい。
ガソリンスタンドが爆発した時に近くにいたのはあたしだけみたいだった。
(そういえば周りには人はいなかったな。)
でも何故だろう。
涙が止まらない。
何故?
いきなりのことで不安定になったんだろうという医師の判断だった。
でも。
お母さんがなだめても、お父さんが安心しろと言っても涙は止まらない。
いきなりの爆発で恐怖も考える暇なく起きたことだ。
何故泣くのか?
あたしはお母さんとお父さんを困らせた。
体もだるい。
(爆発に巻き込まれたんだから仕方ないのかな?)
でも吹き飛ばされただけなのにこの脱力感はなんだろう?
そのせいか退院は思ったより長引いた。
*
「お姉ちゃん、なんで泣いてるの?」
入院した病院で5歳くらいの男の子が不思議そうに聞く。
「なんでだろうね。」
あたしは答えに困って聞き返した。
「悲しいことがあったの?」
「うん。分からないけど思い当たることもないけど悲しいんだと思う。」
男の子は考え込んでしまう。
「ごめんね。きっと悲しい夢でも見たのかもしれないわ。心配してくれてありがとう。」
あたしは精一杯の笑顔を作った。
「お姉ちゃんは何歳?」
「10歳よ。」
「5歳くらいの違いなんだ!僕が守ってあげる。今は年の差なんて関係ないよ!」
年の差、、、?
胸にズキンときた。
そしてまたとめどなく涙があふれる。
「お姉ちゃん!泣かないで!」
5歳の子を困らせるあたし。
「ごめ、ん。大丈夫よ。ただ今は1人になりたいかな?」
「ダメだよ!僕に甘えていいから。僕お姉ちゃんをお嫁さんにしてあげる。」
どこから来るのか分からない涙。
その男の子は5歳にしてはしっかりしてる。
「僕?名前は?」
「アキラ」
「アキラ君、ありがとうね。」
そしてまたあたしは涙を流すのだった。
*
「え?」
「アキラ君は亡くなりましたよ。」
あたしは言葉を失った。
昨日話して慰めてくれて。
(そのアキラ君が死んだ?)
あたしは自分のことばかり考えていてアキラ君のこと全然知らなかったんだ。
健康なくせに毎日意味もなく泣いて。
アキラ君がどんな気持ちでいたかなんて考えもしなかった。
あたしはもう泣かない。
だってあたしは生きているんだから。
泣く理由だって分かってないのに。
甘えている自分が情けなかった。
(アキラ君、あたし立ち直るから!)
それがせめてあたしがアキラ君にできる唯一のことだと思った。
大きな声で呼びかけられる。
救急車のサイレンの音で辺りは騒然としているようだ。
体のあちこちが痛い。
「おい!!」
「ん、、、痛っ、、、」
「意識確認!早く救急車へ!!」
なんだろう?
あたしはやっとの事で目が覚める。
何かが燃えたような匂いとガスの匂いが入り混じっている。
虚ろな目で周りを見回すとガソリンスタンドが燃えていた。
警察やら消防士らが忙しなく動き回っていて、規制線が張られ、周りには大勢の人だかり。
あたしは起き上がることが出来ず、救急隊員の人たちによってストレッチャーに乗せられた。
体が痛い。
(そうだ!ガソリンスタンドが爆発したんだ、、、。)
そう気づいた時にはあたしは救急車の中だった。
*
「ずいぶん衰弱している様子ですが、命には別状ありません。」
病院に着き、お母さんとお父さんが駆けつけて看護師さんと話している。
どうやらやけどもたいしたことはないらしい。
ガソリンスタンドが爆発した時に近くにいたのはあたしだけみたいだった。
(そういえば周りには人はいなかったな。)
でも何故だろう。
涙が止まらない。
何故?
いきなりのことで不安定になったんだろうという医師の判断だった。
でも。
お母さんがなだめても、お父さんが安心しろと言っても涙は止まらない。
いきなりの爆発で恐怖も考える暇なく起きたことだ。
何故泣くのか?
あたしはお母さんとお父さんを困らせた。
体もだるい。
(爆発に巻き込まれたんだから仕方ないのかな?)
でも吹き飛ばされただけなのにこの脱力感はなんだろう?
そのせいか退院は思ったより長引いた。
*
「お姉ちゃん、なんで泣いてるの?」
入院した病院で5歳くらいの男の子が不思議そうに聞く。
「なんでだろうね。」
あたしは答えに困って聞き返した。
「悲しいことがあったの?」
「うん。分からないけど思い当たることもないけど悲しいんだと思う。」
男の子は考え込んでしまう。
「ごめんね。きっと悲しい夢でも見たのかもしれないわ。心配してくれてありがとう。」
あたしは精一杯の笑顔を作った。
「お姉ちゃんは何歳?」
「10歳よ。」
「5歳くらいの違いなんだ!僕が守ってあげる。今は年の差なんて関係ないよ!」
年の差、、、?
胸にズキンときた。
そしてまたとめどなく涙があふれる。
「お姉ちゃん!泣かないで!」
5歳の子を困らせるあたし。
「ごめ、ん。大丈夫よ。ただ今は1人になりたいかな?」
「ダメだよ!僕に甘えていいから。僕お姉ちゃんをお嫁さんにしてあげる。」
どこから来るのか分からない涙。
その男の子は5歳にしてはしっかりしてる。
「僕?名前は?」
「アキラ」
「アキラ君、ありがとうね。」
そしてまたあたしは涙を流すのだった。
*
「え?」
「アキラ君は亡くなりましたよ。」
あたしは言葉を失った。
昨日話して慰めてくれて。
(そのアキラ君が死んだ?)
あたしは自分のことばかり考えていてアキラ君のこと全然知らなかったんだ。
健康なくせに毎日意味もなく泣いて。
アキラ君がどんな気持ちでいたかなんて考えもしなかった。
あたしはもう泣かない。
だってあたしは生きているんだから。
泣く理由だって分かってないのに。
甘えている自分が情けなかった。
(アキラ君、あたし立ち直るから!)
それがせめてあたしがアキラ君にできる唯一のことだと思った。
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